#24 福kin 使ってもらえるシステム作り
※福kin(福祉の現場のkintoneシステム)
※デイサービスで活用できるシステム作成のnoteです。
前回
前回は作ったシステムを現場で活用してもらうためのちょっとした工夫を紹介しました。
今回もその続きです。
現場にシステムを浸透させるうえで
使いやすいシステムを作り、現場に「はい、今日からこれ使ってね」ではシステムは根付きません。
システムは常に使う人とのコミュニケーションの上に築かれるのです。
そのコミュニケーションの中で私が心掛けていることがあります。それは
・怒らない
・あきれない
・見捨てない
の3ない活動です。
システムを使うのに不慣れな人に対して
「いい加減使い方覚えてください!!」
なんて怒ろうものなら、もう相手は委縮してしまい何も言えなくなってしまいます。
そして、
「またですか・・・何回同じこと言わせるんですか…はー(溜息)」
なんてあきれようものなら、相手のプライドは傷つきます。
また、
「(もうこの人がシステムを使うのは無理だな…何も言うまい)」
などと見捨てようものなら、相手は失望してしまいます。
結果、
誰も何も言えないシステムになる
⇒何も改善されないシステムになる
⇒使いづらいシステムのまま
⇒放置される
業務効率化…おしまい・・・
では意味がないので、活用してもらう工夫の続きを
テンキーだけど凄いやつ
バイタルシステムを導入して、最初の壁は
「看護師さんがキーボード打てない問題!」
でした。
そこで業務の棚卸。看護師さんが入力するのは、
・バイタル(数字)
・食事の量や薬の内服有り無し
・「料金受け取りました」「スタッフに伝えました」的な定型文
のみです。
そこで導入したのがこちら!
このテンキーは数字以外のボタンに役割を持たせることができるスペシャルなテンキーなのです。
使い方は、バイタルアプリのレコードですが「名前」まではあらかじめ入力されているので、看護師さんは計測したバイタル、「血圧(上)」を数字テンキーから入力します。
そうしましたら、テンキーの一番下にある「次」ボタンを押すと、横にある「血圧(下)」に入力のカーソルが移ります。
脈まで数字で入力して、次の薬項目ですが、ここでテンキーの一番右にある有ボタンを押すと、薬の有り、無しが切り替わります。
食事量も有ボタンで全量・半量・少量・食事なし、と切り替わっていきます。
入力を間違えたら消ボタンで入力されているデータを消すことができます。
備考欄に関しても、上の方にある紐・費・スのボタンを押すと定型文が入力されます。
ちなみに各ボタンにはこんな文言が割り当てられてます。
・お休みの件承知致しました。
・訪問理美容申し込み用紙お預かりしました。
・月分の利用料金お預かりしました。ありがとうございます。
・趣味活動申し込み用紙お預かり致しました。
・書類お預かり致しました。
・費お預かり致しました。
・組紐代金お預かり致しました。
・スタッフへのお心遣いありがとうございます。
・本日のリハビリは部分的に行いました。
これは何かというと、そうです!スタンプなんですよ。
今まで定型文をゴムスタンプでやっていたものを、このテンキーで実現したという訳です。
備考欄まで入力が終わったら、次ボタンを押せば、次の人の入力フィールドに移ることができます。
これでキーボードが打てない看護師さんも、キーボードはおろかマウスを持たなくてもデータを入力することができるようになりました。
※今はマウス使ってます。教えたわけではありません。自分で覚えてくれたのです。
キーボード打てないのは看護師だけでない
キーボードが苦手なのは、看護師だけではありませんでした。
日々の報告が必要な介護職の方にもキーボードが苦手な方、もちろんいます。いままで使う必要がなかったのですから居てあたりまえです。
そこで考えたのが、音声入力。
と言っても、kintoneに直接音声で入力するためには、なかなか高額な音声入力ソフトを購入しなければいけません。
しかし、そんな予算はありません。
なので、無料のgoogleドキュメントを利用します。
用意するのはこんな感じのマイク一本。
マイクをPCに繋げて、
googleドキュメントの空白のページを開いて、
「Shift」+「Ctrl」+「S」
で音声入力開始です。
結構驚きの精度で入力ができます。
後は出来上がった文章をコピペして報告アプリに貼り付けるという段取りです。
入力の訂正が必要な場合も出てきますが、そこは仲間同士の助け合いです。
言葉をあわせる、考える
みなさん、レコード一覧からレコード詳細に移動するとき、
また、レコード詳細からレコード編集画面に移動するときに何て伝えますか?
デイサービスでは最初、個別の画面に行ってください!入力モードにしてください!と言ってましたがいまいち伝わりません。
そこでふと考えました。皆が今まで使っていた道具はノートと鉛筆だったな・・・。
だったらそれにあわせてみようかな?と思い立ってから、
レコード詳細に行くこと → ノートを開いてください
レコード編集画面に行くこと → 鉛筆を持ってください
と言い換えたところ、はまりました!
特に編集画面に行くアイコンは鉛筆に見えますよね?
また奇跡的にレコード編集画面に行くショートカットが「E」キーだったので、鉛筆の「E」ですよ(^^ と伝えて、ショートカットまで皆が使いだす事に!(本当はeditの「E」だと思います)
あとは、ショートカットアイコンを作成するお話は前回伝えましたが、アイコンに愛称を付けるとイメージしやすくなります。
例えばこのショートカットアイコンは報告一覧アプリへのショートカットです。
このショートカットを使って欲しい時に、「報告一覧のショートカットから飛んでください」といってもなかなか伝わりずらいものです。
でも、「猫ちゃん押して~」で一発で伝わります。
言葉をあわせる、考える。
紙のマニュアルについて…え!いるの?
kintoneで核となるアプリや使う人が多いアプリについては、職員を集めて説明会を開催します。
そこで出てくるのが「紙のマニュアルがないんですか?」という問い。
初めて聞いた時、意外過ぎて一瞬言葉を失いました。
「え…いるんだ、紙のマニュアル」という感想です。
kintone内にマニュアルアプリではなく、あくまでも紙媒体のマニュアルが欲しいと。
曰く「マニュアルアプリを作られてもどこにあるか見失う」「操作がわからなくなった時に手元でマニュアルを見ながら操作したい」「新しいシステムには紙のマニュアルは付き物だと思う」等々。
正直、作成するか悩みました。結構な手間ですから。
しかし結局作成しました。使い方をきちんと覚えてもらうため…というよりは、安心してもらうためです。
操作に対する不安解消というより、いつでも読み返せる手触りのある紙のマニュアルが安定剤になるという側面が大きいと判断したからです。
現に一か月もすれば誰も見なくなりました。
今ではどこにあるのかもわかりません(;^^)
でも作成してよかったと思ってます。導入時の不安解消の材料になりましたし、きちんと不安に寄り添い対応してくれるという印象を持ってもらえたので。
今では新しいアプリを発表しても、紙のマニュアルを求める人は一人もいません。
メディカルケアステーションと連携
当法人ではコミュニケーションツールとしてメディカルケアステーションを活用しています。
メディカルケアステーションは所謂、医療に特化したチャットワーク・Lineとお考えください。
連携・・・といってもAPIとかそういう難しい話ではなくて、流れるメッセージにkintoneのURLを貼り付けるだけです。
例えば
・名刺管理アプリの名刺情報
・特定の報告情報
・集計のデータ
等々、kintoneを積極的に活用しない同じ法人の職員に伝えたい情報があります。
そんな時に、kintoneのスペース開いて、アプリを選択して、目的のレコードに辿り着いてくださいとは、流石に言えません。
そんな時はkintoneの見せたいページのURLを貼り付けてお終いです。
情報を見る方はメディカルケアステーションに流れているメッセージに入力してあるkintoneのリンクをクリックすれば見たい情報に辿り着けます。
イメージはラインのメッセージにkintoneのURLを貼り付ける感じです。
会議には出席しまくり
システムが定着するためには、みんなの困りごと、チームの課題を解決するのが一番です。
そのためにどうするか???
それは、システム担当者が会議に出席しまくることです。
会議は現在チームが抱えている課題を話し合う場ですよね。
そこで、システムで解決できそうなところは、チャレンジさせてもらう、またはこっそり開発して、次の会議でプレゼンしてみる。
空振りもありますが、この姿勢は有用だと思います。
私は、レク会議、ホール会議、役職者会議、機能訓練会議、リハ職員会議、営業会議、もうありとあらゆる会議に出席しました。
そこは業務改善のヒントの宝庫でした。
出席している皆は何がシステムで解決できるのかなんてわかりません。
そこに価値があるのです。
嬉しい誤算が
・怒らない
・あきれない
・見捨てない
の3ない活動のもと、いろいろな会議に出席し、改善案を出していくと、職員の方から、こうして欲しい、こんな感じの事できるの?なんて提案が出てくるようになりました。
また、当初音声入力やテンキーを利用していた職員が、なんとキーボード入力を練習して、打ち込めるようになってきたのです!
そこまでの事は私も望んでなかったので、一生懸命キータッチしている後ろ姿を見たときは込み上げるものがありました(ToT)/
・・・そんなの見たら・・・やる気でちゃいますよね。
人がシステムにあわせるのではなく、システムが人にあわせる。
それがシステム内製化です。
最後に
・怒らない
・あきれない
・見捨てない
いま伝えた3つの呪文、これは相手のパワーや能力を奪わないための行動です。
ただ、対象の相手だけに影響するものではありません。
ICTが少し苦手な方に対して、業務改善担当者が
怒っている、あきれている、見捨てている
そんな態度を周りの人は見ています。
どんな風に思うでしょう?
「自分も変な事言ったらあんな風にされるのか・・・」
こう思う人が出ても不思議じゃないですよね。
自由に意見が言えない業務改善は…独りよがりな業務改善になってしまいます。