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【ドイツ語】「トリスタンとイゾルデ」第1幕から気になる言葉を抜き出して語るだけの記事

この記事に辿り着くのは誰だろう?!

あなたはワーグナーのオペラなんて全然知らないドイツ語学習者?それならぜひワーグナーの世界に足を踏み入れてみてはどうだろうか?ドイツ語を少しでも知っているなら、あなたには大きなアドバンテージがある。中世とかゲルマン神話とか哲学とか宗教とか愛とか死とか名誉とか、素人が挫折してしまうかもしれない長々しいストーリーでも、ドイツ語学習の一環と考えれば、きっと楽しく研究していけるはず。え!研究ですって?はい、研究です。オペラの世界は。

あるいは、あなたはドイツ語なんて勉強したくてもなかなか手がでないけどワーグナー作品を愛するワーグナーファン?それならぜひドイツ語の世界に足を踏み入れてみてはどうだろうか?英語より激しく活用しまくる文法に身が震えます(涙、本当に・・・)。でも大丈夫。オペラのためにドイツ語を知りたいなら、それほど身構える必要はない。単語の意味と音を知っているだけでワーグナーの世界にもっと没頭できる。さあ、ドイツ語の世界にいらっしゃい!

最初に断っておくが、私はドイツ語の学習者であり、先生ではない。この記事の内容には誤りが含まれているかもしれない。先に謝っておきます。申し訳ございません。どうかご理解ください。

当記事はドイツ語の学習教材ではありません。私がドイツ語学習者かつワーグナーファンとして、気になった言葉やフレーズを抜き出して、それについてテキトーに語るだけの記事です(笑)

ドイツ語が好きな人やワーグナーが好きな人と少しだけ想いを共有したい。それだけです!

早速はじめましょう。

Befehlen liess
dem Eigenholde
Furcht der Herrin
ich, Isolde!

ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」より

アイルランドのお姫様イゾルデは超ご機嫌斜め。自分を気遣ってくれない男トリスタンに命令する。さすが、威厳ある強気の女王サマ的な態度。嫌味たっぷり。

M Suzuki

ちなみにEigenholdeという単語だが、Google検索してみたところ、「トリスタンとイゾルデ」のページばかり検索結果に表示されるので、一般的に使われるドイツ語ではないようだ。うっかり使わないようにしましょう!自分に甘いヤツという意味で使いたくなるのだが、我慢しましょう!(は?と変な顔されるでしょう。ドイツ人とは言ってもワーグナー作品に親しんでいるのはオペラファンだけです。)

ich, Isolde! をどう解釈するか、まだまだドイツ語力の足りない脳で考えたのだが、Herrin(女主人)を言い換えていると理解した。ich は「私は」なので英語の I である。しかし、英語の "me too" に当たるドイツ語は "ich auch" なので、ここでも英語に置き換えるなら I ではなく me なのではと思う。

では、トリスタンに対する命令を侍女ブランゲーネに伝えるイゾルデ様の歌声を聴いてみましょう。



Der »Tantris«

ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」より
M Suzuki

「タントリス」はトリスタンの偽名である。名前を前後にひっくり返しただけ。思いつきで名乗った名前のようにしか見えない。印象としては全然かっこ良くない(笑)

今は英雄として名高いトリスタンだが、以前は死にかけていた。傷の治療のために、わざわざ敵国であるアイルランドのお姫様イゾルデを頼ってきた。敵国というだけではない。トリスタンはイゾルデの婚約者を殺したのだった。その相手から受けた傷のために死にかけていた。不思議な力を持つ一族のイゾルデなら治せるはずだと。イゾルデはトリスタンが婚約者の命を奪った人であることに気づいたが、傷を治してあげた。色々後ろめたかったトリスタンは本名を名乗らず「タントリス」という偽名を使った。

ところで、このタントリスの前に冠詞のderが付いている。言うまでもないが人の名前に冠詞は普通はつけない。敢えてderを付けたので「あのタントリスとかいう」といった感じのニュアンスになるのだろう。助けてやったのに、感謝するって言ったのに・・・とイゾルデ姫は怒りまくる。

歌の方だが、derはあまり強調されていないので聴き取りにくいかもしれない。船上の人々は、政略結婚で敵国の王様に嫁ぐアイルランドのお姫様イゾルデ(とイゾルデの婚約者だったが殺されたモロルト)を小バカにし、王様の部下である英雄トリスタンを崇めて陽気に歌う。イゾルデはイラついて「タントリスの歌」を歌う(ただし船内の自分の部屋で)。


Ungeminnt

ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」より

愛されないなんて耐えられないとイゾルデは訴えます。
侍女ブランゲーネは、そんなはずないからと慰めます。あなたのような素敵な人を、王様が愛さないはずないでしょと。

でも、多分イゾルデは王様のことを言っているのではない。王の部下で甥のトリスタンのことを言っているのだろう。命を助けてあげたとき、見つめ合ったトリスタン。感謝すると言ったはずのトリスタン。何かを期待するイゾルデ。それが、なぜ年老いた王のために彼がイゾルデを迎えに来るとは。彼は王の側近として常にイゾルデの近くにいることになるのだろう。近くにいるのに愛してもらえない苦悩を想像して恨めしそうにイゾルデは歌う。

M Suzuki

UngeminntについてもGoogle検索してみたのだが、「トリスタンとイゾルデ」のページばかり出てくるので、一般的には使用されないドイツ語だと思われる。うっかり使わないように気をつけよう!


Für Weh und Wunden
gab sie Balsam,
für böse Gifte
Gegengift.
Für tiefstes Weh,
für höchstes Leid
gab sie den Todestrank.
Der Tod nun sag ihr Dank!

ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」より

イゾルデの一族は魔術使いなのだ。政略結婚で敵国に嫁ぐ娘イゾルデのために母は役に立つお薬を用意してくれた。痛みや傷にはバルサム、悪い毒には解毒剤、そして苦しみが頂点に達する場合は死のお薬・・・

Tod(死)とTrank(飲物)が合わさった単語だが、飲み物は普通のドイツ語ではGetränkと言う。Trankも飲むと言う動詞Trinkenから派生した名詞なので飲み物という意味で良いのだが、コーヒーやジュースやビールというよりは、薬(液体)というイメージなのだと思う。

M Suzuki

それにしても、ギフトがプレゼントではなく毒という意味だなんて、ドイツ語は面白いね!!


O Wonne voller Tücke!
O truggeweihtes Glücke!

ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」より

イゾルデはトリスタンと死のお薬を飲んで死のうと思ったのだが、侍女ブランゲーネは怖くなって死のお薬の代わりに愛のお薬を用意した。こうしてトリスタンとイゾルデは猛烈に愛し合うことになった。

めでたしめでたし・・・?

ではない!

イゾルデはトリスタンの叔父である王様に嫁ぐのだったはず・・・

愛が生まれた瞬間は幸せなのだろうか?トリスタンとイゾルデはそうではなかった。

薬をすり換えたブランゲーネは「即死の代わりに、永遠の苦痛」と言った。
ew'ge Not
für kurzen Tod!

イゾルデは「わたし、生きなきゃいけないの?」と言った。
Muss ich leben?

トリスタンは以下の言葉を放った。

M Suzuki

これが第1幕を締めくくるトリスタンの叫びである。
さあ、聴いてみよう。



第2幕に続く(かも)

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