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Feedback運動制御について

以前はFeedforwardシステムについて解説をしました。
(詳しくは下のブログから)
https://yuto-atc.com

今回はFeedback運動制御について解説していきたいと思います。
Feedback運動制御とはどのようなものなのか説明できますか?

Feedbackというくらいなので、何か物事が起こった時に感覚神経からのフィードバックで動作を修正する。そんな感じでしょうか?
ではこれからどのような仕組みなのかを見ていきましょう。

Feedback運動制御とは?

人の中枢神経系は外的要因によってバランスを乱された時には2つの制御機能によってバランスを取り戻すシステムが備わっています。
1つがFeedforwardシステムです。もう1つがFeedbackシステムです。
簡単に言うと、
Feedforwardは主に内的外乱に対応し、予想される身体外乱に先行するシステムであり、
Feedbackは主に外的な外乱に対応し、予測できない身体外乱に先行するシステムです。

Feedbackシステムは各感覚器官によってフィードバックされた身体の位置情報や感覚情報などを基に実際の運動軌道と目標軌道との誤差に応じて、運動計画が更新されて、運動指令を修正することとされています。
そのため、Feedbackシステムは感覚入力に依存しており、身体状態や環境の変化などの感覚入力を基にリアルタイムで運動制御を行っています。
しかし、feedbackからの感覚情報から運動修正を行うまでにはラグがあり、
Feedbackのみでは円滑に運動を遂行することはできません。
そこで、重要になってくるのがFeedforwardシステムです。
Feedforwardシステムは感覚に依存しないため、感覚受容器からの情報に依存しません。
このシステムでは小脳に蓄積された過去の運動学習による記憶を基にして運動遂行前に運動出力を行います。1)
つまりは、
FeedbackとFeedforwardの両方のシステムが正しく噛み合って初めて円滑な運動が遂行されると言うことです。

フィードバック

フィードフォワード

脊髄小脳路

Feedback運動制御で最も重要な経路が脊髄小脳路になります。
簡単に言うと、末梢からの信号を脊髄へ、そして脊髄→小脳への経路のことです。(感覚入力)
脊髄小脳路は3種類あり、前脊髄小脳路・後脊髄小脳路・副楔状束小脳路があります。
それぞれの経路は体性感覚器から小脳への感覚入力の経路であり、それぞれ異なった感覚入力を得て、それぞれ異なった小脳の部分へと入力されます。
後脊髄小脳路と副楔状束小脳路は小脳の下小脳脚を経て小脳の古小脳(虫部・中間部)へ、
前脊髄小脳路は上小脳脚を経て小脳の原小脳(片葉小節部)へと繋がります。

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坂井建雄(監訳), 河田光博(監訳), プロメテウス解剖学アトラス頭部/神経解剖. 医学書院.から引用

小脳解剖

小脳からの出力

スクリーンショット 2022-03-06 15.49.25

Feedback運動制御に関係の深い虫部と中間部の詳細としては、
虫部→内側核→橋、延髄網様体→脊髄 (網様体脊髄路)
  →外側前庭神経核(ダイステル核)→脊髄 (前庭脊髄路)
(平衡や姿勢の維持に関わり、反射的要素の多い運動を調節する)

中間部→中位核→赤核→脊髄 (赤核脊髄路)
   →VA・VL核→一次運動野・前庭連合野
(大脳の運動性皮質と関連して、四肢の運動の細やかな調整を行う)

現場でのアプローチとして

Feedback運動制御においては体性感覚からの信号が重要になってきます。
そのため、まずは体性感覚の機能改善が必要であると考えられます。
筋緊張をなくし、筋紡錘やゴルジ腱器官を適切に機能させていくことであったり、骨格のアライメント修正が必要であると思います。
筋緊張をなくすためには、
1. 呼吸の改善 (自律神経系の改善、体幹部の安定化)
2. 視覚情報の改善(固定視の改善など)
3. 前庭機能の改善
4. 体性感覚の機能改善
5. 重心移動の適正化
6. 栄養状態の改善(血液データの分析から不足or 過剰栄養素の改善)

この辺りが大切になってくると思います。
また、さまざまな環境下での運動を取り入れ、
体性感覚のみではなく、様々な刺激を身体に与えてあげる必要があると思います。

まとめ

ここまでFeedback運動制御の神経学的観点から説明してきました。
一言にFeedbackといってもさまざまな器官が関連しあって初めて正しく働くことができます。
そして、最も問題が起きやすいのが体性感覚であり、がFeedbackにおいてとても重要になってくると言うことです。
前回の記事で体性感覚について書きましたが、
https://yuto-atc.com/体性感覚について/
体性感覚が適切に機能してこそのFeedbackシステムになります。
小さなこどもたちやお年寄りからプロアスリートまで全員同じシステムを持っています。
何か問題が発生した時に基本的な身体の仕組みから理解し、
それに対してアプローチしていくことがとても大切だと考えています。

参考文献

Wolpert DM, Diedrichsen J, Flanagan JR. : Principles of sensorimotor learning. Nat Rev Neurosci, 12 (12) : 739- 751, 2011.

Shumway-Cook, A., & Woollacott, M. H. (2007). Motor control: translating research into clinical practice. Lippincott Williams & Wilkins.

坂井建雄(監訳), 河田光博(監訳), プロメテウス解剖学アトラス頭部/神経解剖. 医学書院.

寺田昌史. (2018). 足関節捻挫に伴う神経的由来の心身機能低下と生活活動制限. 日本アスレティックトレーニング学会誌, 3(2), 107-116.

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