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お前の年収、俺の所得税じゃん。②

昨日の続きです。昨日のを読んでいない人は読んでから見てもらった方がいいかもしれないです。


志望動機は無くていい

「激務のヤバい会社」の選考は少し変わっていた。

前述したが、まずエントリーシートがない。そしてさらに志望動機もいらないというのだ。必要なのは会社の思想とマッチングしているかどうか、であり嘘で固めた志望動機など聞かない、とのことだった。

僕はひどく感動した。
そう、そうなのだ。世の就活はおかしいと思っていたのだ。第一志望が何十社もある学生と、平日休日お構いなしに選考活動をしていながらホワイトな職場を謳う人事のライアーゲーム。本当にくだらない、本質などどこにもないと思っていた。

そんな僕には「ヤバい会社」はとても魅力的に映った。
そしてさらに、この会社は年収が高いらしい。僕は特別お金が好きではないが、他人から「すげえ」と呼ばれるという点において年収が高いというのは素晴らしいと思った。

本質的な選考だし、激務だがそれに見合うお金がもらえる。いいじゃないか。一文にもならない仕事のやりがいを説いてきたり、ただ飲み会が多いだけの「アットホームな職場」を掲げる企業よりも実際的で実に良い。そうだ、仕事とは金を稼ぐ場所なのだ。人生とは金なのだ。

面接、そして内定

一次は健常者ならほぼ通過するいわゆるSPIみたいな試験で、実質二次試験からが面接だった。ややおぼろげだが二次・三次面接ともに、論理的思考をテストする、という風なやや変わった面接で、面接官はみな理知的で冷たい目をしていた印象がある。

まあ、面接対策みたいなものを書く気はあんまりないので端折るが、トントン拍子で最終面接だった。ヤバい噂も手伝って倍率も案外低いようだった。

最終面接は、人は良さそうだが肝臓は悪そうな顔をした人事部長に「決めてくれるならこの場で握手しよう」とドラマみたいなことを言われ、気付いたときには握手をしていた。まだ四半世紀ちょっとしか生きていないが、人生で最も早計な握手の1つだった。

こんな感じで、人生最初の会社を決めてしまった。


お前の年収、俺の所得税じゃん。

正直、「人生は金なのだ」と書いたものの、冷徹そうな面接官の面接を思い出しビビっていた。自分がやっていけるのだろうか、病まないだろうか、黙ってホワイト企業に就職した方が身の丈に合っていたのではないか、という思いはやはり常にあった。

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就活も一通り終わり、周りの友人たちもおおよそ次の春に入社する会社が決まっていた。そこで話に上がるのは会社の勤務地だったり年収だった。
そんなとき、弊社はまあ、年収がよかった。まだ働いてもいなかったが、天狗になった僕はうそぶいた。

「お前の年収、俺の所得税以下じゃん。」

このころから僕はだんだんお金持ち気分に染まり入社への不安が薄らいでいた。名の知れた会社に入社したいという見栄も満たせた。人生は金だし、幸せは金で買える。そう、世界はだいたい金なのだ。

そうして、僕は弊社に入社した。

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