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『ヴォクス・マキナの伝説』おまけ:D&D5e用非公式データ・ファイターの類型「ガンスリンガー」

序文

『ヴォクス・マキナの伝説』解説のついでとして、原典『Critical Role』で「パーシー」ことパーシヴァル・デ・ロロのプレイヤー、Taliesin Jaffeが使用していたオリジナルサブクラス「ガンスリンガー」と銃器のデータを翻訳する。

『ヴォクス・マキナの伝説』、および作中オリジナルの銃器「バッド・ニュース」については解説記事を参照のこと(バッド・ニュースの紹介は#3にて)。

Critical Roleの面々が仲間内のTRPGセッションをネット配信に載せるにあたり、システムを『パスファインダー』第1版(以下PF1e)から『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第5版(以下D&D5e)に乗り換えることとなり、一部当時のD&D5eに類似したデータが存在していないクラスや呪文、武器に関してはGMのMatthew Mercer氏によってハウスルールとして独自のデータが用意された。

このファイター用サブクラス「ガンスリンガー」やオリジナルの銃器データはその一つで、後にスポンサーとなった公認(現在は公式化)データ管理サイト『D&D Beyond』にも掲載され、その後も更新されている。

銃器に関わるサブクラスとして、現在ではD&D5eの公式にも『エベロン冒険者ガイド 最終戦争を越えて』などにアーティフィサーのサブクラス「アーティラリスト」が登場しているが、魔導銃の職人ではなく、鍛錬を積み銃器の扱いを学んだファイターとして、また違った魅力があると思っている。

なお、ファンタジーにおける銃器の扱いは、『ドラゴンクエスト』のように全く存在しない場合から、主人公が現実の銃器の情報を持ち込んだ異世界転生ものまで、世界観によって大きく異なる。非公式かつCritical Roleの舞台・エクサンドリア用に作られたデータということもあるので、このサブクラスを使用できるかどうかはGMに確認する必要があるだろう。

何はともあれ、この出会いが、あなたのD&Dの世界を広げるきっかけとなれば幸いである。

元システム製作:Wizards of the Coast
製作:Matthew Mercer、Critical Roleチーム
出展:D&D Beyond
翻訳:マイケル・スタンフォード / MSLabo102

最新原文:2022年1月28日
最新翻訳:2023年2月28日
(内容は一部セッション当時のものと異なります)

2023/01/28更新:ウィザーズ版日本展開のメートル・グラム法に対応、誤記修正

ガンスリンガーの特徴(データ)

戦士や戦術家達の多くは伝統的な剣術、弓術、棒術といった戦術を学ぶのに何年もの年月を費やす。決闘か歩兵かに関わらず、軍用武器の形は一見して完成されており、真に腕が試されるのはその扱い方だ。

しかし、中にはクロスボウを発展させることをやめない者がいた。錬金術的要素と貴金属による実験が、爆発を制御する秘密を解明した。発明という名の試練に打ち勝った数少ない者達が、世界で初めて火器を手にし、巧みに操るのかもしれない。

この類型は強力にして危険な遠隔武器を設計、開発することに焦点を当てている。発明と精確な狙いで、君は遠距離から死を振りまく存在となるだろう。しかし、火器はまだ発展途上で、時折有効な攻撃手段を失ってしまう不確定要素をはらんでいる。それこそが世界の元素を統べる魔力に満ちた世界における、未熟な新技術の持つリスクである。

君がこの火薬と鋼の道を歩むのなら、機転、そしてファイターとしての信念と共にあってほしい。そして、君の技術が天運に愛され、弾丸が狙った相手を逃さないことを。

3レべル:火器習熟

3レベルでこの類型を選んだ時点で、君は火器の習熟を得る。つまり、君は火器による攻撃に習熟ボーナスを加えてもよい。

3レべル:銃匠

3レベルでこの類型を選んで以降、君はよろず修理屋道具に習熟する。君はこれを用いて、矢弾を通常の費用の半額で製作、火器を補修、はたまた新しい火器を設計して作ってもよい(DMが判断する)。一部の極めて実験的で複雑な火器は製作することでしか入手できない。

火器の特性

危険な新技術である火器は、独自の特性を備えた武器である。

特性によっては後に数字が書かれているが、これは特性内の要素を表す(以下に詳しい)。これらの特性は『Dungeon Master’s Guide』に記された選択ルールを置き換えるものである。火器は遠隔武器である。

再装填 (Reload):この武器は再装填値(訳注:後に続く数字)の回数まで発射できる。再装填するには片手が開いている状態で、1回の攻撃か1回のアクションを用いねばならない。

不発 (Misfire):君が火器で攻撃する時、(訳注:攻撃ロールの)ダイスの出目が不発値より低い場合、それは不発となる。攻撃は失敗となり、アクションを用いて修理しようとしないかぎりその武器は使用できない。

火器を修理するには、よろず修理屋道具の判定(難易度=8+不発値)に成功しなければならず、失敗したなら、その武器は故障し、戦闘外で修繕費用(価格の4分の1に等しい)を払って修繕しねばならない。

火器に習熟していないクリーチャーが使用するなら、不発値は1大きくなる。

爆発 (Explosive):ヒット時、目標の1.5メートル / 5フィートの範囲内のすべては敏捷力セーヴィング・スロー(難易度=8+君の習熟ボーナス+君の【敏捷力】修正値)を行わねばならず、失敗すれば1d8[火炎]ダメージを受ける。失敗したなら、矢弾は爆発に失敗するか、爆発する前に誰にも被害のない所へ跳弾してしまう。

矢弾について
どの火器も攻撃するために矢弾が必要である。そして火器の矢弾は希少なので、発見したり購入することはほぼ不可能かもしれない。しかし、もし素材を集められたなら、君はよろず修理屋道具を用いて、矢弾を(訳注:購入する)半分の価格で自作してもよい。火器はそれぞれ固有の矢弾を使用し、一般的に「矢弾」の欄に、価格の隣に(訳注:カッコ内に)書かれた数を一組として売買や製作される。

火器

パーム・ピストル(手のひらに収まるサイズの護身用銃)
価格:50gp | 矢弾:2gp (20) | ダメージ:1d8[刺突] | 重量:0.5キログラム / 1ポンド | 射程:(12/48)m / (40/160)ft | 特性:軽武器、再装填1、不発1

ピストル
価格:150gp | 矢弾:4gp (20) | ダメージ:1d10[刺突] | 重量:1.5キログラム / 3ポンド | 射程:(18/72)m | (60/240)ft | 特性:再装填4、不発1

マスケット
価格:300gp | 矢弾:5gp (20) | ダメージ:1d12[刺突] | 重量:5キログラム / 10ポンド | 射程:(36/144)m / (120/480)ft | 特性:両手、再装填4、不発1

ペッパーボックス(回転式弾倉と銃身が一体化した黎明期のリボルバー拳銃)
価格:250gp | 矢弾:4gp (20) | ダメージ:1d10[刺突] | 重量:2.5キログラム / 5ポンド | 射程:(24/96)m / (80/320)ft | 特性:再装填6、不発2

ブランダーバス(ラッパ銃)
価格:300gp | 矢弾:5gp (5) | ダメージ:2d8[刺突] | 重量:5キログラム / 10ポンド | 射程:(4.5/18)m / (15/60)ft | 特性:再装填1、不発2

バッド・ニュース(狙撃型マスケット銃、詳細はヴォクス・マキナの伝説解説#3にて)
価格:製作のみ | 矢弾:10gp (5) | ダメージ:2d12[刺突] | 重量:12.5キログラム / 25ポンド | 射程:(60/240)m / (200/800)ft | 特性:再装填6、不発2

ハンド・モーター(手持ち臼砲)
価格:製作のみ | 矢弾:10gp (1) | ダメージ:2d8[火炎] | 重量:5キログラム / 10ポンド | 射程:(9/18)m / (30/60)ft | 特性:再装填1、不発3、爆発

3レべル:凄腕の射手

3レベルでこの類型を選んだ時、君は火器を用いて、強力な変則射撃で敵を足止めしたり、攻撃したりできるようになる。

変則射撃:君は任意の2種類の変則射撃を得る。君の変則射撃の選択肢は後の『変則射撃』の項を参照。変則射撃の多くは何らかの形で攻撃を強化するものである。1回の攻撃には1種類の変則射撃しか使用できない。

君は7、10、15、18レベルの時点で新しい変則射撃を追加で習得する。この”新しく変則射撃を習得する”時期が来るたびに、君はこれに加えて習得済みの変則射撃を1つ、別の変則射撃と入れ替えてもよい。

気概:君は【判断力】修正値に等しい数の”気概点”を得る(最低1点)。君が火器による攻撃のd20ロールで20の出目を出したとき、または特別な脅威となるクリーチャーに火器でとどめを刺した(DMが判断する)とき、君は消費した気概点を1点回復する。消費された気概点は、君が小休憩または大休憩を終了した時点ですべて回復する。

セーヴィング・スロー:変則射撃の中には、目標が変則射撃の効果に抵抗するためにセーヴィング・スローを行わねばならないものがある。セーヴィング・スローの難易度は以下の通り。

変則射撃のセーヴ難易度=8+君の習熟ボーナス+君の【敏捷力】修正値

7レべル:早撃ち

7レベルに達した時点で、君は君自身のイニシアチブに習熟ボーナスを加えてもよい。また、君のターン中、(訳注:今手に持っている)火器をしまって他の火器を取り出す行動を、一回の”物体を扱う”動作として(訳注:アクションを使用せずに)行ってもよい。

10レべル:即時修復

10レベルの時点で、君は弾詰まりを起こした銃を素早く修復する方法を学ぶ。君は気概点を1点消費して、ボーナス・アクションとして、不発となった(故障していない)銃の修復を試みてもよい。

15レべル:神速装填

15レベル以降、君はボーナス・アクションとしてあらゆる火器を再装填してもよい。

18レべル:凶弾の決意

18レベルの時点で、君の火器による攻撃はダイスの目が19~20でクリティカル・ヒットになり、攻撃ロールのd20の目で19か20が出たときに気概点を1点回復するようになる。

18レべル:流血のクリティカル

18レベルから、君の火器による攻撃が、ダイスの目で19~20が出てクリティカル・ヒットとなったとき、ヒットした目標の次のターン、追加でヒット時の半分のダメージを被る。

変則射撃

以下に変則射撃を五十音順に挙げる。

ウィンギング・ショット/転倒射撃
君はクリーチャーに火器攻撃を行うさい、気概点を1点消費して、動く相手を転ばせようとすることができる。その攻撃がヒットしたなら、そのクリーチャーは通常通りダメージを受け、かつ目標は、【筋力】セーヴィング・スローを行なわねばならない。目標はセーヴに失敗したなら倒れて伏せ状態になる。

ディサーミング・ショット/武器落し射撃
君はクリーチャーに火器攻撃を行うさい、気概点を1点消費して、相手が手に持っているアイテムのうち1つを選択してこれを取り落とさせることができる。その攻撃がヒットしたなら、そのクリーチャーは通常通りダメージを受け、かつ目標は、【筋力】セーヴィング・スローを行なわねばならない。目標はセーヴに失敗したなら君の選択した物体を落とす。その物体は君から遠ざかる方向へ3メートル / 10フィートまで押しやられる。

デイジング・ショット/目くらまし射撃
君はクリーチャーに火器攻撃を行うさい、気概点を1点消費して、目くらましを行うことができる。その攻撃がヒットしたなら、そのクリーチャーは通常通りダメージを受け、【耐久力】セーヴィング・スローを行なわねばならない。失敗したなら、目標は次の自身のターンの終了時まで、攻撃ロールに常に不利を受ける。

デッドアイ・ショット/片目射撃
君はクリーチャーに火器攻撃を行うさい、気概点を1点消費して、その攻撃に有利を得ることができる。

バイオレント・ショット/暴れ射撃
君はクリーチャーに火器攻撃を行うさい、気概点を1点以上消費して、攻撃の危険性を高めることができる。その攻撃は、消費した気概点1点につき、使用する火器の不発点に+2を得た状態で行う(訳注:この攻撃のみ)。ヒットしたなら、この攻撃のダメージ・ロールに、消費した気概点1点につき1個の、”使用した武器と同じダメージ・ダイス”を追加する。

ピアシング・ショット/貫通射撃
君はクリーチャーに火器攻撃を行うさい、気概点を1点消費して、複数の相手を撃ちぬこうとすることができる。最初の攻撃は使用する火器の不発点に+1を得る。ヒットしたなら、そのクリーチャーは通常通りダメージを受け、君は”君から見た射程の1つ目の数字の範囲内にいて、目標のすぐ後ろの直線上にいるすべてのクリーチャー”に不利を受けた状態で攻撃ロールを行う。不発になるのは最初の攻撃だけである。

フォースフル・ショット/押し出し射撃
君はクリーチャーに火器攻撃を行うさい、気概点を1点消費して、相手の脚をもつれさせ、後退させようとすることができる。ヒットしたなら、そのクリーチャーは通常通りダメージを受け、かつ目標は、【筋力】セーヴィング・スローを行なわねばならない。失敗したなら、目標は君から遠ざかる方向へ4.5メートル / 15フィートまで押しやられる。

ブリーイング・ショット/威嚇射撃
君は火器の強烈な爆発ととどろく音でクリーチャー1体を動揺させることができる。君は【魅力】〈威圧〉判定を行うさい、気概点を1点消費して判定に有利を得てもよい。

あとがき

基礎となるファイターは無料の「ベーシック・ルール」にあるため、実質無料でこのサブクラスを遊べてしまう。しかし、それだけがパーシー・デ・ロロのすべてではない。
世界観、背景、プレイヤー、セッション内の経験、その他たくさんの物が揃って初めてパーシーはパーシーとして成立した。

この記事を読んだあなたはどのようなガンスリンガーを作るのだろうか?
ほんのわずかな要素が違うだけで、パーシーとは違う、あなただけのガンスリンガーが生まれるだろう。それがTRPGなのだから。

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