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秋の午後(短編映画)

 2016年の神保町映画祭で上映された11分のショートフィルム。監督は高橋秀綱、原案・脚本は渡賀來かっこと高橋秀綱。
 黒い喪服を着た美女が白いレジ袋を下げて日本文学専門の古書店を訪れる。祖父の法事に参加した帰りに、祖父が好きだったことを思い出して、秋刀魚を買ったのだが料理がからっきしで、どう料理したらよいのかわからない。
 だからといって、料理本を買うために古書店に飛び込んで来た時点で、この女性かなりの天然だが、30代半ばで親戚からはいつ嫁に行くのだとせっつかれているらしい。それもあって料理を勉強できる本を探したのだがお門違いというものである。
 この天然美女を演じているのは橘美里。やはり独身の古書店店主を演じているのが笠兼三で、天然美女より少し年長というところだろう。日本文学専門の古書店にビジュアルな料理のレシピ本があるわけもなく店主は彼女を店の裏手に連れていき七輪に火を付ける。
 天然美女は祖父から「オヅさんの料理したサンマが最高だって」聞いたといったのだが、店主は小津安二郎の映画「秋刀魚の味」のことだと察しがついて思い出し笑いする。そこから、ほのぼのとしたやりとりが二人の間で交わされて、いい感じになってきたところで映画が終わる。
 念の為、東京の千代田区神田神保町は古書店が集積している街であり、そういう町が主催した映画祭である。一見気難しそうな店主と天然美女の取り合わせはなかなかの妙である。現実にこんなに天然で気立てのよい美女がいたら胸キュンになるかもしれないが、どうして一人暮らしなのに、都合よく秋刀魚を2本買ったのだろうか(笑)。
 高校生っぽいストーリーのようにも思えるが、橘美里が天然ぶりを好演しているので、大人のファンタジーということにしておこう。


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