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オッサンたち

 ラーメン屋で夕食を摂った後の帰り道。青い作業服を着たオッサンが傘を水平に持ちながら道を歩いていた。仕事の現場では安全確保に注意しているはずなのに仕事帰りになると、まるで抜けているなぁ、と呆れた。

 平らな道を歩いているから、さほどではないけれどもオッサンの後を歩く人間にとっては危険でしかたない。もしも、これが駅の上り階段だったら危険この上ない話である。自分がそういう目にあったことは、ほとんどないが、実際に駅でそういう傘の持ち方をする輩はいる。

 そうかと思うと、大通りの交差点の青信号が点滅しているのに駆け足で横断歩道を渡るオッサンもいた。自分は信号が変わるのを待っていたが、後ろで「おっす」とか言う声が聞こえる。続けて聞こえたので、まさか顔見知りではあるまいな、と心当たりはないものの気になって振り返った。

 こちらも見知らぬオッサンだった。どうやら当方に声をかけたわけでもなかった。単なる独り言というか、オッサン自身に対する掛け声だったようだ。紛らわしい。思わず舌打ちしたくなったけれども喧嘩のもとになるといけないので飲み込んだ。

 それからオッサンは、掛け声を独りごちしながら自転車を漕いで横断歩道を渡って行った。その後は車道ではなく歩道を自転車で走って行った。交通法規もへちまもない。もっとも自転車の勝手な運行はオッサンには限らない。老若男女を問わずいいかげんである。

 作業服を着ていたオッサンは明らかに仕事帰りだけれど、横断歩道を走り抜けたオッサンと変な掛け声を出していた自転車のオッサンも仕事帰りのような雰囲気であった。特に自転車のオッサンはよほどくたびれていたので、掛け声を発していたのかも知れない。

 いずれのオッサンも還暦はとっくに過ぎているように見えた。あのくたびれた様子を見ると歳は取ったけれど仕方なく働いて稼ぎを得ている感じに見えた。まあ、それはそれでご苦労なことだと同情したのだけれど、ああいう風にくたびれたくはないな、と思った。

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