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東京ラーメン

 noteにかつて二郎系ラーメンと横浜家系ラーメンについて書いたことがある。二郎系は東京都港区が、家系は神奈川県横浜市が発祥の地で、どちらも東京で人気があるラーメンの二大ジャンルといっても過言ではない。
 ただ、noteでは斜に構えて思うところを述べたのだった。二郎系については流行りだしたのはバブル景気が終わって不景気になってからだということを書いた。家系については、名店の一つの倒産に絡めて少々複雑なお家事情について書いた。
 それぞれのジャンルのファンの方にしてみれば、ひねくれた文章のように思われたかも知れないが、自分でもそう思う。というのも、二郎系も家系もそれぞれ個性的でインパクトが強いのだが、自分が子どもの頃に食べた東京のラーメンとは違うからである。
 いわば、昔からの東京ラーメンへの郷愁がベースにある上で二郎系や家系について書いたわけである。では、東京ラーメンとはどんなものなのかと言うと、スープには鶏ガラからダシをとり、あっさりとした醤油味。麺は細くて縮れたもので、叉焼、ナルト、メンマに店によっては海苔をのせて香りを引き立てていた。
 その頃は、今のようにラーメンの専門店という業態は少なくて、いわゆる町中華の店でラーメンを食べることがほとんどだったと思う。上記のような特徴は共通していたけれど、平凡な味の店もあれば、ラーメンが美味いと評判の店もあった。ラーメンの他には、焼餃子や炒飯、八宝菜(中華丼)に蟹玉(天津飯)といった料理が出されていたと思う。
 淋しいのは、この頃、昔ながらの東京ラーメンを身近なところで見かけることがめっきりなくなってしまったことである。日高屋で提供している醤油ラーメンの見た目は昔ながらの東京ラーメンっぽいのだが、がっかりしたら嫌なので食べたことがない。
 ところが、最近、国立市の町中華でチャーシュー麺をいただいたら、これが東京ラーメンのスタイルで美味しくて嬉しくなってしまった。あっさり醤油味の鶏ガラスープにはおそらく鰹節のダシも合わせられている。麺は細めで、これも昔風。一口目に懐かしい味だなぁ、と感じた。あっさりしているのに、ついつい箸とレンゲが止まらなくなった。
 これだよ、これ!と思ったのだけれど、何も最近になって昔の味を懐古的に復元したものではない。この地で50年以上営業している町中華の店で、厨房には初代のお父さんと息子さんと二人で入っている。11時に店が開くと、あっという間に地元の常連さんで満員御礼になる。愛されている店である。
 初代のお父さんは、荻窪の中華屋さんで働いて、そこから暖簾分けをしてもらったらしい。なんでも、【丸長のれん会】というラーメンののれん会があり、この国立市の中華屋さんも加盟している。魚介系のダシを合わせていることと、つけそばのメニューがあることが特徴らしい。丸長・丸信・栄龍軒・大勝軒・丸和といった屋号の店が加盟しているらしい。
 とはいえ、初代のお父さんが引退したら、今のペースでお客さんをさばけなくなるだろうなぁ。店には三代目はいらっしゃらないようだし・・・。でも、まだまだ長く続けていただきたいお店である。

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