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足軽仁義 【三河雑兵心得~(1)~】

この本との出会い

【三河雑兵心得シリーズ】の第一巻です。
たまたま本屋で見かけて以来、発売前から予約して購入しています。
歴史関連の書籍は大好きなので良く読んでいたのですが、ここ数年、松賢堂講義の原稿作成等でプライベートの時間が圧迫されているため、小説関連の読書量が激減しています。
反面、歴史系統の学術書や資料を読む時間は激増しています・・・
そんな私ですが、憩いの小説として、この【三河雑兵心得シリーズ】は、さらっと読めるので、ありがたく思っています。

あらすじ

 時は、三河一向一揆(1563年頃)のお話になります。
主人公の茂兵衛もへえは、農民でしたが、妙に正義感が強いというか頑固な男でした。
そのため、村では鼻つまみ者という感じで、浮いた存在だったのです。
ある日、弟がいじめられたことの仕返しをして喧嘩になり、相手を死なせてしまうことになります。
村にいられなくなった茂兵衛は、母親を後妻に迎えたいという人物の紹介で、夏目次郎左衛門の配下として、足軽になります。
が、夏目は主君家康に弓を引く一揆衆に加担。
人生初めての戦いが、籠城戦という厳しい環境からスタートすることになります。
腕っぷしは強いが、武術の心得がない茂兵衛。
彼を待ち受ける運命やいかに?

感想

グイグイ引き込まれる面白さがありました。
著者は、当時の甲冑や武器を描写するのが好きらしく、槍の違いや甲冑の着用等々、細かいところまで描写してくれています。
こういうところ、歴史マニアにとっては楽しいです。
また、私自身、若い頃は主人公の茂兵衛と同様に向こうっ気の強さもありましたし、正義感から他人と衝突することも多かったので、茂兵衛の境遇に対する親近感があり、すんなりと物語の中に入り込めたというのもあるかと思います。
(いくら親近感がわくとはいえ、茂兵衛のような事件は起こしたことはないですが・・・)
さて、茂兵衛は足軽奉公を続けるうちに、少しずつ心境の変化を遂げていきます。
彼自身は気づいていないのですが、一冊の間だけでも、随分と考え方が丸みを帯びていきます。
戦場の過酷さ、武士の厳しさが、そうさせたのかもしれませんね。
その中で、改めて人を殺す職業であることの業の深さを痛感させられます。
こういう主人公の精神的成長も、面白かったです。
最終的には、家康が勝利し、夏目次郎左衛門は降伏することになります。
その際、恩義ある足軽頭から茂兵衛は忠告を受けます。

戦国乱世を生き抜くには「狡さ」も必要だと。

この言葉、私も若いうちに教え諭されたかったなあ、と思いました。
ただ、重要なのは、真面目で義理堅さがあるという本線を維持することです。
そのうえで、少しの世渡りの上手さ(狡さ)を加える。
なかなか含蓄があるなあと思った次第です。

そして、主人公・茂兵衛が、今後、家康の家来としてどのように成長していくのか?
楽しみに感じました。

今後も、この作品は追いかけていきたいですね。
ということで、今回、初めての読書感想文に挑戦してみました。
ちょっとネタバレが入ってしまいましたかねえ・・・

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