水道水

1月18日、日が昇る前。休みの日に限って早く目が覚めてしまうのは子供の頃から変わらない。

隣で寝息をたてる娘と妻を起こさないよう、そーっとベッドから抜け出る。廊下の冷たさに思わず声を上げそうになるが、ぐっと我慢。

誰もいないリビング。外からも何も聞こえてこない。寂しい気分と心地よい気分が同居する。電気ケトルに水道水を注ぎ、スイッチを入れる。

冬だからだろうか、沸騰するまで時間がかかる。しゅうしゅうという音から始まり、最後は激しくぼこぼこと音を立てて水が湯に変わっていく。数分か、はたまた十分近くか、耳を傾けるにはちょうど良い曖昧な時間だ。

湯の温度が多少下がる頃を見計らってカップに移す。顔を近づけると、金属を彷彿とさせる香りが鼻を抜ける。決して良い匂いでは無いのだが、慣れてくると水道水の個性のように思えてきて、案外可愛く感じる。

白湯を口に含む、舌触りは粒感こそ感じないものの、溶けきるまでわずかなタイムラグがある。水の時よりも滑らかで、軽い口当たり。質感を感じるのは金属的な香りに引っ張られて錯覚しているのかもしれない。

休みの日だからなのか、普段より時間をかけてカップの中を空にした。さて、もう一眠り。

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