祖母と子ども

子どもを
私の祖母に会わせに行った。

祖母は認知症になってもう長い。
施設で暮らしている。

もっと手厚い施設に、近いうちに移ることになった。
次の施設に入ったら、コロナ禍ということもあって、もう会えないかもしれないらしい。

祖母と子どもが会うのは、
今日、最初で最後になるのかも。
できれば、そうならないでほしい。
そう思いながら行った。

私のこと、もう覚えてないだろうな。
前会った時より目に見えて状態が悪かったらどうしよう、受け入れられるかな。
そんなことも思った。


着いた。
コロナ禍だから、とドア越しの対面。

まず、祖母は私のことを覚えていた。
びっくり。嬉しい。


そして、
あまりよく見えていないだろう目で
ドア越しに
じーっと子どもを見つめ、
涙を浮かべ、そして涙を流した。

職員さんに促され、子どもの名前を呼ぶ声は
震えていた。


何度も
「おいで!」
と両手を出した。
コロナ禍だから、それができんのよ、ごめんね
と、私たちも職員さんもその度に伝えた。

コロナが憎い。
おばあちゃんに、私の子どもを抱っこしてもらいたかった。
納得のいかない表情をし、数分後には「おいで!」と両手を出す祖母を見て、胸が締め付けられた。


これが、おばあちゃんに会う最後かもしれない
そう思うと、なかなか切り上げられなかった。
祖母はずっと、子どもを見つめていた。


別れ際、
職員さんに促されながらではあるが
「また来てね」「元気でね」と言ってくれた。
少し遠くて、気軽には行けない距離。
施設を移ってもそれは変わらない。
でも、また来たい。また来るね。
おばあちゃんこそ、元気でね。

子どもの代弁を装って
「また来るね〜」「元気でね!」と伝えた。

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