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第5章<成長する>性格~阻害要因を管理し、促進要因を最大限に活用する

1.失敗を避けるよう積極的に対処する

前にも述べたように、性格に良いも悪いもない。大事なのは行動である。性格は状況やそのときの事情と作用し合って行動の効果に影響を及ぼす。例えば、もともと社交的なリーダーが新しい職務でパートナーのネットワークを築く場合、特性は促進要因となる。彼は多くの人と交流し、さまざまな人を集めたグループをすぐに作るだろう。しかし、同じリーダーでも、分析業務を主とするような時間をかけないと関係構築ができない(やり取りの頻度が少ない)環境の中では、苦労することになるかもしれない。その場合、彼の社交的な特性は阻害要因となる。彼の派手なやり方は組織文化に合わず、彼は深い分析を避ける、あるいはできないと見なされ、信用を失うだろう。また、環境が自分のやり方と合わないためにモチベーションも下がってしまう。

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なかには、さまざまな行動の仕方を受け入れられる中庸な性格を持つリーダーもいる。彼らは、状況に応じて行動を変えるよう能力開発することができる。だが、いかなるリーダーシップ状況においても効率性を阻む強力な阻害要因を持つリーダーもいる。ハイポテンシャル・リーダーに阻害的傾向が見られるときは、重要な任務での失敗を避けるよう積極的に対処しなければならない。

2.阻害要因を予測して管理する

どんなに優秀なリーダーで、成功に必要なスキルや経験、知識を身につけていても、強力な阻害要因が原因で失敗することがある。そのような危険が生じるのは、阻害要因が、これまでの成功の際には促進要因だったからである。不確実性と、より多くの露出を伴う幹部のポジションに昇進して、それまでの促進要因が逆効果になってしまったのだ。こうしたことは、多くのリーダーにとって予想外で、悪影響が表面化するまでは気づかない。優秀な営業担当者がリーダーに昇進して苦心するケースを考えてみよう。彼女が今苦労している要因は、営業担当だったときに成功した要因と同じものかもしれない。自信は尊大さに、情熱は感情の変動のしやすさに、対人関係のうまさは人を操ることのうまさになり得るのである。

だがすべての阻害要因が強みと結びついているわけではない。ある階層では見過ごされていた傾向が、昇進するにつれ大きな問題になる場合もある。完全主義のリーダーを例に考えてみよう。求める水準が高すぎて、他者を支配し、何かうまくいかないことがあると過度に批判的になる。より大きな責任と重圧が自分の意思決定にかかるようになると、彼は人に権限委譲することができず、仕事を抱え込みすぎ、結果的に後進の能力開発に失敗することになるだろう。

阻害要因は、新しい課題や職務に移行しているときのような、仕事が多すぎてストレスにさらされているときに、最も表に出やすい。反対に、リスクだと分かっている分野で慢心し、注意を払わなくなったときにも出やすい。また阻害要因は必ずしも目に見えるわけではない。自分のキャリアや、ひどいときには周囲の人のキャリアにも大きなダメージを与えるまで気づかないこともある。CEOとしての在任期間に、阻害要因によって失敗してしまったリーダーは大勢いる。エンロンのケネス・レイ、ワールドコムのバーナード・エバース、コカ・コーラのダグラス・アイベスター、ホーム・デポのロバート・ナーデリ、サンビームのアルバート・ダンラップなどがそうだ。彼らにとって最も問題だったのは、知識やスキルの欠如ではない。尊大、無謀、無神経、衝動的といった性格が、彼らの成功を阻害したのだ。

阻害要因が実際に失敗につながるか否かには、状況とタイミングの両方が大きな役割を果たす。好ましい状況であれば、深刻な阻害要因を持つリーダーでも大きなことを成し遂げられるが、悪い状況であれば、同じリーダーでも失敗する。スティーブ・ジョブズの伝記の多くに、尊大、論争的、感情的といった、彼のキャリアと影響力を脅かした阻害要因が記されている。どこから見ても成功者であるジョブズだが、キャリアの中で何度か挫折も経験した。最も有名なのは、自身が設立したアップル社から解雇された時だ。

学習者が挫折を避けるために身につけるべき4つの戦術がある。これらは、個人の目標と学習ニーズに合わせてカスタマイズされると、最も物果が高くなる。

・自身の阻害要因とそれを避ける必要性を理解し、受け入れる。
・阻害となるような行動が引き起こされそうなときを予測する。
・阻害となる行動が起きたときの代替の行動を練習する。
・新しい行動を続けることに焦点を置く。

自身の阻害要因とそれを避ける必要性を理解し、受け入れる。個人が阻害要因に関連するリスクとそれが持つ意味を認めない限り、阻害要因を避けることはできない。

ではどのように自分に、さらには他者に悪影響を及ぼすのか?例を挙げよう。注目されるのが好きな人は、たいてい社交的で群れになるのを好み、注目の的になる。そのおかげで、魅力的で人を引きつけるように見えるだろう。だがリーダーとしては、自分を売り込むのがうまくて、自分が擁護するべき人々を差し置いて自分が認められたい、信頼されたいという欲が強く、自分が能力開発や支援すべきパートナー、部下からエネルギーと注目を奪うので、「すべてを独り占めする」と評されることもある。わざとではないが、目立ちたがりというその性格が、自分が気にかけるべき人々を傷つけてしまうのだ。目立ちたがりの人のほとんどが、人間関係や他人とのやりとりを心から楽しむ。その多くは、自分が外向的すぎることを認識しており、それが阻害要因となることを冗談にするほどだ。しかし、こういう人々は基本的に他者の気持ちに関心があるので、自分の阻害要因に関わるリスクの管理方法を深く理解しようとする。

性格と行動のアセスメント(アセスメント・センターなど)は、新しいハイポテンシャル・リーダーが持っているかもしれない阻害要因を見つけ出すのに役立つ(第4章)。阻害要因に関するフィードバックは、本人の気持ちを傷つけたり本人から抵抗を受けたりするかもしれない。その阻害要因がまだキャリアに明確に害をもたらしていない場合は特にそうだ。その場合、阻害要因を持っている可能性があることを当人に納得させるには、証拠を見せてうまく説得する必要がある。普通なら好ましいとされるものが、実は阻害要因となることも少なくない。長年うまくやってきたことが悪い結果につながるかもしれないと考えるのは、非常に難しいことだろう。よく見られる反応としては下記のようなものがある。

・はぐらかす。行動を変えるつもりだと言いながら、意味のある行動や一貫した行動を取らない。

・正当化する。問題だと認めるが、阻害要因に代わる行動を探さない。心の中では、目の前の状況を扱うには阻害要因となる行動が適切だと思っている。

・否定する。以前のキャリアでの成功を持ち出して、問題があると認めることを拒否する。

・先延ばしにする。該当する阻害要因が、現在より高い階層で問題になることを理解しながら、そこに昇進したときに対処すれば良いと考える。

・受け入れる。改善する必要を認め、阻害要因を避けるための行動を始める

一人ひとりが、同僚からのフィードバックや洞察(適切な360度フィードバックが有効である)を集めて阻害要因の証拠を求めるよう、奨励されるべきだ。友人や親戚も信頼できるソースとなる。われわれは、多くのリーダーが同僚や配偶者、その他、観察から阻害要因を証言してくれる人々の反応について報告するのを聞いてきた。その反応には、ときにはいらだちが込められていることもある(例:「あなたのことをとても尊敬しているから我慢するが、そこは嫌いだ」など)。コーチが、“鏡をかざす”役割を担うことが多い。才能ある経営幹部は、それによって阻害要因が示すことを認識し、悪影響を避けるための行動を取ることができる。

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3.おすすめ人材アセスメントソリューション

4.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

5.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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