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読書記: 会社法は誰のためにあるのか: 人間復興の会社法理(上村達男 著、岩波書店)(2021.12.25発売)

ブラックロックなどの巨大ファンドの分析では、SDGsやESG対応しない企業は成長が持続しないという分析をしていて(あくまで投資リターン率の話。社会的便益向上とは直接関係しない)、バンガード、ステートストリートなども同じ傾向。この3ファンドだけで1,500兆円以上運用しているので、その流れになるのは必然。

SDGsは社会的便益向上を見せつつ、投資リターンは上がるのでその傾向になるわけであるが、投資家である以上、投資家へのリターンが増えないと困る。そこでマルチステークホルダーへの分配率のバランスを考えるわけでだが、このあたりの舵取りが難しい。
SDGsに注力することで、「社会」へのリターンを増やしつつ、投資家へのリターンも増やす、こういったことはアクテビィストからは求められる。

そうなると草刈り場になりがちな研究開発投資(添付図[Strainerサイトより]参照)が減ってしまうわけだが、「社会」への投資というストーリーで研究開発も重視する、というのが最近求められる「大人の対応」か。

本書にて、株式会社は「人間の意思を中心とした団体ないし事業活動に充満する『人間の匂い』が消えていく可能性を秘めた仕組を有し」、昨今明らかにされつつある現代の資本主義の限界は、根幹制度である株式会社制度に「人間復興の課題が集中している」と理解することができる。
本来、株式会社とは、「市民」が投資して、「市民」が働いて、「市民」が消費する、という前提から株式会社は作られたものであり、会社法もその前提で立法されたものであるから、現在のような「人間の匂い」がしないお金の集合体とも言える投資機関(投資銀行やファンド等)が株主として力を持つ形は本来の趣旨から逸脱しているが、会社法の通説は異なった現状にあり、そこが日本な企業経営者の悩みが増す原因の一つとも考えられる。

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