読書記: 東京市ーー七つのテーマで巨大都市を読み解く」(源川真希 著、 ちくま新書)(2023.5.10 発行)
自分自身が東京で職得て居住するようになって38年が経過した。そういった観点から本書を読み進むと自身が見聞きしてきた「東京」の背景が改めて浮き彫りになった。仕事柄、国内外の様々な場所を訪れる機会が多かったが、東京都内でも自身が様々な場所に行き、関わっていたのだなということが思い起こされた次第である。
一方、これとは逆のアプローチもありうると思う。本書で「東京史」を確認しつつ、現在の東京を見つめるというアプローチである。
本書は、震災・戦災による東京の破壊と復活、世界最大級の都市のインフラ、そこに住む人々(民衆)、首都という位置づけの都市の自治機能、工業化社会としての発展プロセス、都市の背景に存在する文化・歴史、都市機能の中の「棲み分け」とも言える山の手・下町の社会的意味合い、といった七つの視点で「東京史」を紐解いている。
政治思想史の専門家である著者が、政治思想的分析にはあえてとらわれない客観的な論考が読みやすさにつながっていると感じた(政治史的な視点はエビローグにまとめたスタイルがさらにわかりやすい)。
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