「なかなかのイケメンだが、話しじょうずだ」
こんにちは。MSA齋藤です。今回もお読みいただきありがとうございます。
MSAの大学受験コースでは授業前に、英語長文中の下線部和訳提出が必須です。予習段階の和訳をわたしがチェックして、文構造や内容の把握に関して不明な箇所を指摘して返却します。それを見てから授業に参加してもらいます。
英語から日本語に訳す際に、「曖昧さ」が残る原因の代表は?
「が」の使い方です。
「なかなかのイケメンだが、話しじょうずだ」
なにかおかしいでしょうか??
こうした文は日常的に使われており、特に違和感はないかも知れません。もちろん、用法として間違っているというわけではありませんが、これが和訳であれば曖昧さが残ります。
原因は「が」を「逆接」で使っていないところです。and のように前から後ろへ、かる〜くつなぐだけの役割になっています。「なかなかのイケメンだし、話しじょうずだ」「なかなかのイケメンで、話しじょうずだ」こんな感じです。
「今日は雨だが、試合は行われます」
「なかなかのイケメンだが、口が悪い」
これはわかりやすい使い方。
「今日は雨」なら、試合は通常行われないだろうにも関わらず、「試合を行う」というのですから、期待や予想に反しています。ひっくり返っているので「逆接」としての「が」が活きています。
「なかなかのイケメン」なら「口が良さそう」ですが、実際はそうではない。期待を裏切られるので「逆接」です。「なかなかのイケメンだが、話しじょうずだ」において、「イケメン」と言われたら「プラス」の感じを抱いた聞き手が、「が」を聞いて、ひっくり返ることを期待したら「話しじょうず」というさらなる「プラス」が来たので、一瞬「え?」となるのです。全体を読めばなんとなくわかりますが、かすかな曖昧さが残ります。
ここがまさに、曖昧さの源泉です。
世の中には「なかなかのイケメン」なら「口が悪い」ことは当然のことと捉える人がいてもまったく不思議ではありません。その人にとっては、「なかなかのイケメンだが、話しじょうずだ」は「なかなかのイケメン」にも関わらず(予想に反して)「話し上手だ」という「逆接」が成立していることになるのです。
「逆接」は、プラスからマイナスへ、マイナスからプラスへと展開するのが普通です。
採点されることが前提の入試問題の答案に、わざわざこの「が」を使いますか?答えは No ですね。相手(=採点者)がどう感じるかに委ねてしまってはあまりにも心もとない気がします。極力誤解の少ない表現を選択することは、「答案の表現者」として心がけておきたいことです。答案に関する弁明の機会などないのですから。
個別試験で「英作文」が出題される人はさらに注意が必要です。
順接の「が」を含む和文を取りあげて、「英訳しなさい」という出題例があります。「が」だけに即座に反応して、but や however を使って英語を書いても、英語の観点からするとちんぷんかんぷんになる恐れがあるのです。
英文を和訳する時は、出来上がった和訳を英語にさらに訳してみたらどうなるかなぁ?とほんの少しでも考えてみれば、間違いなく英語力の大幅アップに寄与します。
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