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"good" を辞書で調べるという「もうひと手間」をかけられますか?

こんにちは。MSA齋藤直哉です。今回もお読みいただきありがとうございます。

「英文解釈重視」をモットーに指導しています。

長文読解において「大意をつかむこと」に重点を置く指導もあるようですが、これでは難関大学入試はもちろん、アカデミックな世界でもビジネスの世界でも通用しません。文章の8割、いや9割を理解できたとしても、残りの1割から出題されるのが難関大の入試ですし、ましてビジネスの世界で1割も曖昧な理解を残していては大変な損害を被ることになるかもしれません。

「英文解釈」の練習においては「正確な日本語に訳すこと」をとても重要なものと考えています。まずは母国語において、きちんと理解していることを示すために、どのように訳すかという練習を丁寧にやることが重要です。難関大入試に立ち向かうためには「英語を英語で理解する」を求めていても、歯が立たないのが現実です。もちろん、英語で理解することも大切ですし、取り組む必要がありますが、これは長い長い時間を要します。入試には間に合いません。

「英文和訳」の際に、どんな「訳語」をチョイスするかで理解度がよくわかります。例えば、以前クラスで扱った英文の中に「赤ん坊がミルクや離乳食を経て、スムーズに食事をするようになる過程においては、親や周りの人たちとの信頼関係が鍵を握る」という内容がありました。

この文脈の中に「new foods」「old foods」という表現が出てきます。

生徒提出の和訳をチェックすると、やはり、「新しい食べ物」「古い食べ物」という訳が多く見られました。

「新しい食べ物」はまだしも、「古い食べ物」が文脈に合わないのは明らかです。「古い食べ物」と耳にすれば、通常は「痛んで食べられない物」といった意味を想像するはずです。つまり、「その表現が何を指そうとしているのか」を考えずに、new = 新しい、old = 古い、と「訳して」いることになりますが、これは訳しているのではなく、置き換えただけですね。

こうした「new」や「old」のような、辞書を引かなくても誰もが当たり前に知っていそうな単語をどう訳すかによって、英語力が露骨にわかってしまうことがあります。「英文和訳」を問題として出題する国公立大など、一部の難関校では、一見すると「簡単な」単語が使われているが、文脈に合わせて適切に訳しているかが問われていることが非常に多くあります。

訳語として「新しい」「古い」だけでは不十分なのはもちろんですが、それ以外の和訳をたとえ知っていたとしても、その場で「文脈」に沿った訳語の選択ができるかどうかが試されています。

訳語は文脈が決めるのです。

「古い食べ物」と訳してしまっている人は、表面上の文字は読んでいますが、考えて読んでいないことは明らかです。「赤ん坊の食が移行する過程」を述べている文脈を考慮すれば、old foods は「馴染みのある食べ物」「これまで慣れ親しんだ食べ物」といった和訳が「必然的に」出てくるはずです。

ここまで来ると、単なる語彙不足というより「それはつまりどういうことか?」と文脈に合わせてもう一歩考えることができる人かどうかが重要だ、ということになります。

several good reasons を「いくつかの良い理由」と訳す人がいますが、「good = 良い」から抜け出さねばなりません。good は「十分な、妥当な」の意味ですね。これは訳語としての「知識」とも言えますが、good を辞書で引くことができるでしょうか。good は「知っている単語」として調べない人が圧倒的に多いです。

覚えた「語彙数」だけではない差がこうしたところから生まれます。そしてこれも英語力の大きな差になって現れるのです。

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