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140字小説の書き方

なんとなく、140字小説を書いたときの思考の流れをアウトプットして、手順に落としてみる。なお、140字に限らず、400字くらいの超短編もだいたいこんな書き方をしている気がする。

1.ざっくりテーマを考える

書きたいジャンルをざっくり考える。このときは「サスペンス」が書きたいなと思う。

2.テーマに沿う題材を考える

物語に「サスペンス」がうまれる題材を考える。なんとなく「身代金」が思い浮かぶ。

3.主題に組み合わせる言葉を考える

「身代金」と何を組み合わせたら面白そうかを考える。このあたりは、まだひねったりせずに「身代金に何を要求したら面白いだろうか」と素直に考える。

「息子を返してほしかったら、XXを用意しろ」

という冒頭を書いてみて、XXにはめる言葉をブレストで挙げていく。あまり時間はかけずに、数分くらいで、以下のような単語を思いつくままに書き連ねる。 

ハンカチ、メガネ、アイスコーヒー、セーラー服、パソコン、女子大生、折り畳み傘、イヤホン、天井、概念、やさしさ、思いやり、笑顔、スマイル、第二ボタン、自転車のサドル、プライド、反骨精神、黒澤明、侍

4.単語をピックアップする

思い付いた単語のうち、面白くなりそうなものをピックアップする。このときは「セーラー服、思いやり、黒澤明」が目についたので、それぞれ、どういう話になりそうかをざっくり考える。

(1)「息子を返してほしかったら、セーラー服を用意しろ」
変態な犯人。誘拐した男の子にセーラー服を着させて楽しむ感じか。女子高生には興味ない。男を女装させるのが好き。オチは、特殊な性癖でした、か。そのまんまだな。

(2)「息子を返してほしかったら、思いやりを用意しろ」
かわいそうな犯人、かまってちゃん。「もっと俺にやさしくしろ」とか言わせるか。オチは「息子にかわってくれ」からの「すぐに、迎えに行くからな。それまで……、おじさんの話を聞いてあげなさい」みたいな感じか。でも、140字でまとめるのきつそうだな。

(3)「息子を返してほしかったら、黒澤明を用意しろ」
黒澤明みたいな映画を作れ、という流れか。主人公は映画監督で、ファンからの叱咤激励、と思わせるか。んで、ジョークと思いきや、実際に息子誘拐されてるんだけど……、クレイジーすぎだろ俺のファン、で落とすか。

5.書いてみる

ざっくり考えた物語のうちから、ひとつを選んで書いてみる。「思いやり」がハートフルで良さそうだが、140字小説だとつらそうなので、このときは「黒澤明」をチョイスした。書きながら、文字数内に収まるように、適宜、軌道修正する。

「息子を返してほしかったら、黒澤明を用意しろ」
「は?」
「黒澤みたいな名作を撮れと言ってるんだ。お前なら、できる」
プツンと電話が切られる。いまはスランプが続いている、映画監督の俺にむけた激励のようだ。ファンのジョークに嬉しくなるが不安にもなる。午後七時。息子はまだ帰ってこない。


最後に、できあがった小説を読み返してみて、大して面白くないからこういう書き方はやめた方がいいんだなと思う。

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