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ホロコースト否認論の否認テスト-08 Twitter Denials 07

※写真はアインザッツグルッペンと呼ばれる現地虐殺部隊の実際の光景です。

今回も以下のリンク記事の紹介です。翻訳はDeepLを使用しつつ独自の解説を加えていきます。


31.ユダヤ人は嘘つきばっかなんだからホロコースト被害者の証言なんて信用できるわけないじゃん。

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ええっと、この項に私が付けたタイトルはちょっとツイートの文章とはズレています。でもその方がわかりやすいと思ったのでそうしています。添付画像のニュースが何のことはちょっとわかりかねるので。多分、ニュース画像内のユダヤ人の人が怒ってるんでしょう。それを皮肉ってるんです。

これはもう、被害者証言を人種などに結びつけて、その属性の人は信じないってやつですね。中国人は共産党の指示で動くから信じないとか、韓国人は反日だから信じないとか、そんな戯言がいっぱいあるわけですよね。ユダヤ人は特にこれを言われます。何かあると「ユダヤ人の陰謀」で済ませようとする馬鹿な人達が世界中にいっぱいいるわけです。

これがめんどくさい話でして、例えば『ゆうさんのページ』で分かる人は分かると思うんですけど、あのページ、ほとんど中国人証言や中国出の資料は使っていません。同様の文句を意識してのものだと思うんですよね。やむを得ない場合のみに限っていると思います。ほんと同じですねぇ……。

リンク先もこう言ってます。

追加コメント:ユダヤ人の生存者のすべて、あるいはほとんどが、ユダヤ人であるという性質上、単に嘘をついているという反ユダヤ主義的な仮定であることはさておき、これもまた、支離滅裂で無意味な主張です。ホロコーストの歴史性が、神話上のユダヤ人のモノリスが何を「言っているか」にかかっていると誰が言ったのでしょうか?それは、a)文書(ほとんどがドイツの戦時中の文書)、b)多数の民族(ドイツ人、ポーランド人、ウクライナ人、ロシア人など)に属し、加害者、傍観者、被害者であった人々の証言、c)人口統計学的証拠、d)物的証拠の累積的証拠によって証明されています。それがユダヤ人や「彼ら」を信じるか信じないか(また、あたかも彼らが一枚岩であるかのように)と何の関係があるのでしょうか?

話違いますけど、『南京!南京!』っていう南京事件の中国製作の映画があるのをご存知でしょうか。Amazonプライム会員なら確か今現在無料で見れたはずです。日本人の方がこれを見ると、ちょっと嫌な気分になる方が多いと思います。日本人を悪者に書いているからです。

ところが、この映画、大雑把ではあるのですけど①史実に沿っている上に中国人証言をおそらくあまり使わず外国人の日記や日本側の資料を使用している、②日本人役を主役級に据えている、③良心的な日本人が登場する、④中国人はほぼやられるだけで事態を解決してくれるようなヒーロー役は出てこない、というちょっと異質な南京事件を扱った映画なのです。あんまり知らないんですけど、多分こんな中国産南京事件映画はなかったんじゃないでしょうか。

偏見てやっぱりあると思うんですよ。その映画を見たときに印象で「ああ、日本人を悪く描いてあるから、こんな映画信用できない。やっぱり反日国家だ」だなんて思う人は多いと思うのです。でも、ちょっと史実を知っていると「必ずしもそうとは言えない」という面が見えてくるのです。私自身にも偏見はあって、その映画を見た時には嫌な気分にはなったのですけど、事実を知っておくというのは大事なことだと思うわけです。

32.被害者数数字ばらばらやないか。どうやって信用しろと

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これはもう、南京事件でもおなじみの話だけど、推計するしかないから、ですね。ナチスドイツが公式統計残しておいてくれたら問題なかったのですけど、そんなものはありませんしね。

一応これについては『ホロコースト』(芝健介、中公新書)からちょっと長いですけど引用します。

その一つは、統計監査官として親衛隊に配属されていたリヒャルト・コルヘアの報告である。この報告によれば、一九四三年三月末までに二五○万名以上のヨーロッパ・ユダヤ人が殺害されている。コルヘアは、「殺」に関する言葉を一切使わず「特別措置」と記しているが、「(対象となった)ユダヤ人の人口は、普通過小のもののみを採用した」としている。また行動部隊の報告書も残されている。「ソ連事件報告書」「東部占領地域報告書」「ソ連における保安警察・親衛隊保安部行動部隊活動・情況報告」の三種類である。「ソ連事件報告書」は保安警察・親衛隊保安部によって作成され、一九四一年六月二三日~四二年四月二四日の期間を記述している。一九四冊(一九五冊中)が現存している。「東部占領地域報告書」は五五冊が現存している。同じく保安警察・親衛隊保安部司令部によって作成され、一九四二年五月一日~四三年五月二一日の期間について記述されている。「ソ連における保安警察・親衛隊保安部行動部隊活動・情況報告」は一一冊あり、一九四一年六月~四三年五月の期間について総括的に記述されている。この三つの史料から、どんなに少なく見積もっても五三万五○○○名のユダヤ人殺害が明らかになっている。だが、ソ連国内でのユダヤ人の犠牲者数の総数は、はっきりしない。絶滅作戦、ポグロム、虐殺に関して利用できる史料などから、たしかにナチス侵攻後のソ連において、最初の数ヵ月だけで少なくとも七○万~七五万名のユダヤ人が殺害されたことも明らかである。しかし、戦争終結までの総数となると、現在なお確定されていない。とぼしい史料のなか、ホロコーストに携わった親衛隊高官の当時の会話などもベンツは重視する。たとえば、国家保安本部の強制移送責任者であったアイヒマンは、一九四四年八月、親衛隊中佐ヴィルヘルム・ヘトゥル(国家保安本部第四局西南欧課)に対し、絶滅収容所で四○○万名、さらに二○○万名がほかの手段――その多くがソ連で行動部隊によって射殺――で殺害されたと語っている。これは戦後開廷されたニュルンベルク国際軍事裁判でのヘトゥルの宣誓供述書にある。やはり第四局にいたディーター・ヴィスリーツェニーは、アイヒマンが少なくとも四○○万名という数字をよく挙げ、時には五○○万名ともいっていたと同裁判で証言している。こうした史料と証言に加え、第4章で挙げた絶滅収容所での大量殺戮の人数などからベンツは、少なく見積もっても五二九万名、最大で六○○万名を超えるとしている。

Kindle書籍からのコピペ上限限界ですって(笑)。

何が言いたいかと言うと、この引用だってざっくり書いてるだけなのです。実際に推計している人はあらゆる資料と取っ組み合って推計しているんです。

無学と言うか低レベルな人は、戦前ユダヤ人人口 − 戦後ユダヤ人人口で計算出来るとか思ってるんです。もちろん、そうしたデータもあります。ニューヨークユダヤ人問題研究所は戦前戦後人口から580万人、『ホロコースト大事典』という18,000円(税別)もする本ではもっと細かく、各国の調査データから5,596,000〜5,860,000人と推計しています。前述の芝健介氏は独自に「六百万人は下らない」と計算されています。

でもね、これも当たり前の話だと思うのですけど、虐殺を行う側が虐殺する人間の数なんか正確に数えて記録して発表しますか? スターリンの大粛清だって、あるいは毛沢東時代に死んだ人だって、ポルポト政権下だって、そんなの全部推定でしかありません。被害統計をはっきり出せる状況下、例えば大事故であるとか、大規模災害であるとか、そうした場合はいわば平和だから出せるわけです。極端に言えば死んだ人の数をしっかり数えられる状況にあるというだけの話。

もうね、そういう人達って思考回路が全く同じでして、悪く言いたい場合は、過剰どころか荒唐無稽な数字を言い、自らの側の加害になると酷い場合にはなかったとまで言う、こうした決まったやり方があるようです。ああいう連中は学術研究などコケにしているのです。しかし、そうした馬鹿げた数字がデマとしてばらまかれるわけです。

あ、そうだ、「悪く言いたい場合は、"過剰どころか荒唐無稽な数字を言い"って中国の南京大虐殺の事じゃないか!」とおっしゃりたい方、南京軍事法廷判決を調べて下さいね。杜撰だとは私も思いますけも、一応は積算推定値になってます。まったくのデタラメとまでは言えません。でもいくら何でもスターリンとか毛沢東とかあれはないでしょ、って話。あの荒唐無稽な数字の出どころは多分あの本だろう、くらいは私も察していますが。


33.ヒルバーグと有名な証人は、ツンデル裁判で嘘つき、詐欺師であることを示したのか?

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これは、ツンデル裁判でのラウル・ヒルバーグという有名なホロコースト研究では第一人者と言われる歴史学者と、その他の証言者が、その裁判で偽証したんじゃないかというクレームを付けてるようですね。その内容が読んでいてもちょっとわからないので、どんな偽証と言われるようなことがあったのかまではよく分かりません。多分ヒルバーグはその後に何か、細かな主張の変遷があったのかも知れませんが、知らないのでなんとも言えません。

でも、だから何だってんでしょうかね? 自分達リビジョニスト・ホロコースト否認派が悪く言われるから、その仕返しなんでしょうか。似たようなことは私も言いますよ。南京事件否定派の田中正明氏は資料を意図的に改竄した人だ、とか、稲田朋美代議士は南京事件の百人斬り裁判で弁護士をしていて敗訴した人だ、とか、東中野修道教授は裁判で判決で「学問研究の成果に値しない」とまで書かれた人だ、とかね。

でもそれと、事実がどうであるかは全く関係がありません。流石に、田中……、じゃなくてロイヒターのようにボロボロのズタボロの報告書を書いて、嘘つきで詐欺的なことまでやってる人には残念ながら信用性はありませんし、全く真面目な調査をしてもいないと断ぜざるを得ないIHRの主張などにだって信用性はありませんが、何れにしても、事実は事実、それらの人物評価とは別の話でしょう。

34.シンドラーのリストなんかただの映画だ

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これは、確か私も言われたことある気がします。うん、これも否定派がよく使う一つの技術(技術と言えるのか……)ですね。「だから?」で済む話だと、リンク先は言っていますが、必ずしもそうではありません。

要は、今まで否定論のパターンを見てきた通り、こうした人達は「否定」さえ出来ればそれで良いのです。どうにかして理屈をひねり出して、疑惑を付けてしまいさえすればそれでいい。疑惑を解消できない限りは証明されていない、だからそれらは事実・真実とは言えない、という一種のトリックを使っているのです。

例えば私が書いてきたこのnoteシリーズの第一回にガス室があったことを示す決定的資料というのを示しました。これも屁理屈で同様に否定可能です。

X:え? 決定的資料?
Y:うん、なんかあったみたい。やばいけどどうしよう?
X:えーっと……、なんだこれかよ。こんなの捏造じゃん。
Y:捏造? だってタイプのフォントも、用紙も、全部当時のものだって……
X:馬鹿だなぁ、ホロコーストなんて世紀の大犯罪の捏造だぜ? それくらいあっさり捏造できるさ。この世に捏造できないものなんてないんだって。
Y:そっか! それもそうだね。

なわけです。奴らは自身で証明なんか絶対にしませんからね。

それで、『シンドラーのリスト』ですけど、分かる人には分かりますが、スピルバーグってそもそもリアルに結構拘る人であることは有名です。『プライベートライアン』もわりとしっかり考証はされてるそうですね。もちろん、『シンドラーのリスト』はあくまでも映画であり、分類としてはフィクションになりますが、考証が入っているというのは当然でしょう。もう一つのホロコースト映画である『戦場のピアニスト』などは、監督のロマン・ポランスキー自身が体験者ですし、リアリティがあると考えて良いわけです。

ええかげんなことを言う一般否認論者よりは、映画の方が信用性はずっと高いと思います。でも、映画は一部しか再現してはいないという意味で、あまり過大に信頼できるものではないことは確かです。これを書きつつホロコーストを学んでいるうちに、ホロコーストに対して考えていたイメージがかなり変わってきました。

大きなテーマなのでこんなところではとても書ききれる内容ではないけれど、単純に、一般的には「ヒトラーが大悪人・元凶だった」と思われているように思います。でも、私の考えでは断じてそんな単純な話ではない、と思っています。またいずれ書きたいとは思いますが、それは全然違うと思っています。それだけの理由でホロコーストなど起きるはずがありません。

35.ブルーノ・バウムはアウシュビッツで偽のプロパガンダが作られたことを認めたのか

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ブルーノ・バウムって誰やねん! っていう……💦 日本語Wikipediaにすらいないってほどの人物。知ってる人います? 相当詳しくなきゃ知らんだろ。知ってた人は偉い。

日本語でこの人について読める唯一の記事がこれ。でも、この日本で唯一らしいホロコースト歴史修正主義者の学者先生であられるらしき文教大学の加藤一郎氏のこの化石みたいなホームページの翻訳資料集って、ありがたく利用はするけど読みにくくて、読む気になれません(笑)

でもまぁ多分こういう話だと思います。記事はあの歴史修正主義者のロイヒターの序文で笑ったゲルマール・ルドルフと学生さん? のインタビュー記事なので、あまり読む価値はなさそうだとここで読者の皆さんに私が直接印象操作をしておきます。

ブルーノ・バウムとはユダヤ人で、アウシュビッツなどの収容所囚人経験者です。そして戦後は東ドイツのドイツ共産党で中央委員会の訓練部門の政治職員などをしていたそうです。そして『アウシュヴィッツにおけるレジスタンス』なる著書を著した、と。この記述が否認論者に見つかって、彼らのネタにされたのですな。

要は、「アウシュビッツが酷いところであったという物語を世界中に広めたのは私達の宣伝活動によるものだ」みたいなことが書いてあったらしいのですけど、これもよくある話じゃなぁ。ほんとに南京事件そっくり。そっちのほうが話しやすいので、南京事件版で説明します。

歴史学者の北村稔氏という人が『「南京事件」の探究』という著書を出したのです。文春新書で2001年出版。これに書いてあった内容に否定派が飛びついた。この中で、最も否定派が飛びついたのが「国民党国際宣伝処の処長・曾虚白の自伝」の記述だったのです。以下を見ていただくのが一番早いです。

こちらの反論内容は、「否定派の言うような「南京事件は宣伝のために捏造されたもの」だとかそんな解釈はできない」ということですが、まぁ似たようなものです。

割りと昔から、プロパガンダによる捏造、という戯言はあったのですけど、そもそもそんな戯言は通らない。だって、他の証拠で十分実証できるからです。あるいは、ホロコーストで言うならばニュルンベルク裁判はではどうなるんだ? とかね。連合国の捏造だと言うわ、ユダヤの陰謀だと言うわ、ソ連共産党の捏造宣伝だと言うわ、結局は否認論者の言いたい放題をやっているだけです。しかし、そんなの関係ないのです。そもそも実証研究は、プロパガンダなど相手にしません。一資料として参考にする場合はあるとは思いますけど、それ以上でもそれ以下でもありません。


今回は以上です。でもだいたい、否定派って日本でも同じって分かってこられたのではないでしょうか? ほんとにやってることそっくり。やっぱ差別とか偏見持ったら駄目ですよね。人間てほんとに国や人種が違ってもその本質は変わらないと思います。どうしてこんな簡単なことがわからないのか、ほんとに人ってキリスト教でいう原罪を背負って生きているからなのかもしれませんね。

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