最近(2024年2月現在)、X方面を中心に、昔の赤十字のある一つの報告書画像がかなりの量、拡散されています。私が最初に見たのは、2023年頃から目につくようになった活発にホロコースト否定を行うアカウントが現れ、そのアカウントが投稿したポストです。多分すでに何回もポストしてるようです。
この文書は見たことがありませんでした。国際赤十字を悪用したホロコースト否定論についてはいくつか記事を、Holocaust Controversiesブログサイトなどから翻訳して紹介したり、自分で記事を起こしたりしてきてはいるのですが、
上のものは知りませんでした。どうやら2023年11月頃に公開された文書のようで、アウシュヴィッツ博物館がこの文書について、facebookやX上で述べているので以下翻訳引用します。
赤十字のモーリス・ロッセル代表が司令官室以外のアウシュヴィッツの収容所の中には入れなかったことについては、すでに示したリンク以外でも、以下などでもすでに紹介済みです。
従って、収容所内に入ってないのですから、そこでユダヤ人絶滅が行われているかどうかなんてロッセル代表にわかるわけないので、こんな文書、ユダヤ人絶滅がなかった証拠にもなりようがありません。取り急ぎ、まずは当該文書を翻訳紹介します。よくわからない部分は省きますね。
で、次に国際赤十字による上のfacebookの投稿中にある文書を以下で翻訳紹介します。この文書はフランス語で書かれており、印字の掠れや不明瞭な箇所もあるので、うまくテキストを取得できない部分もあるのですが、翻訳はそのままDeepLで出力されたものを示します。
というわけで、この当時の報告書を読んでも、ロッセル代表が司令官室以外の収容所敷地に入った、という風には全然読めません。戦後のインタビューで明らかなように、たった30−45分程度の訪問であり、火葬場(但しロッセル代表の訪問時には主収容所の火葬場のガス室は防空壕に改修されていたし、火葬炉も解体されていた)も見てません。当然ビルケナウなんて行ってもいません。
興味を引くのは、この報告書の最後には「シャワー室でのガス処刑の噂」について書かれていることであり、少々曖昧な表現ではあるものの、ロッセル自身は少なくともガス処刑がなかったとは思っていない様子であることです。ただ、彼の関心事は赤十字が収容所に送付していた小包の方だったようです。
さて今回の記事の主題にしているその赤十字の報告書ですが、どうも、ホロコースト否定派よりもむしろ、ネット上では2024年2月現在付近の世界での関心事であるイスラエルによるガザ地区侵攻に絡めて語られているケースの方が多いようです。イスラエルに賛同する側が、赤十字がガザ地区の病院でハマスの武器などを発見しなかったと報告したのと一緒だと。赤十字はホロコーストの時代から伝統的におかしいのではないか?というニュアンスです。
現在のイスラエルに肯定的な人たち≒ホロコースト肯定派と見なすと、肯定派も否定派も、当該文書を互いに政治的に利用しようとする態度が一緒なのが興味深いところでもあります。
今回はそんなところですかね。