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ホロコースト否認論を否認する-番外編03「ホロコーストとは何か」

私は別に学者先生でもなければ、もちろんユダヤ人でもないし、一介のド素人でホロコーストについてようやくまともに少しかじり始めたばかりのまだまだ無知な人でしかありません。

私より遥かに詳しい人がいるのは当然承知の上です。ですから、私の方が詳しい!素人が何抜かす!と思われる方はここで退散下さい。このシリーズをやっているのは、主として私自身の学習のためであり、今一つは日本にはホロコースト否認論に対抗するサイトがほとんどないという状態を知って危機感を感じたからです。一応目標はあります。

適切な用語は「ホロコースト」ではない。

さて、ホロコーストとは何か、皆さんはどれほど御存知でしょうか? 私がイメージする一般的な大多数の人の考え方を想像しますと、

・第2次世界大戦中にナチスドイツがヒトラーの命令で、ユダヤ人を徹底的に弾圧し大量虐殺したことである。

くらいに思ってらっしゃるんじゃないでしょうか? もしそうであれば、それは間違ってはいませんが、実はそれはほんの一面でしかないと、私は思います。「ホロコースト」をWikipediaで調べると、次のような文章が書いてあります。

英語圏では「ジェノサイド」などが用語として一般的であったが、1978年アメリカで放映されたテレビドラマ『ホロコースト』[注釈 5]によって流行語となり、「ユダヤ人大虐殺」を表す言葉として普及した。また、この作品がドイツを含む多くの国々で放送された結果、第二次世界大戦中のドイツによるユダヤ人迫害、特に民族絶滅政策の実行の過程を「ホロコースト」と呼ぶことが定着した。

ホロコーストのそもそもの意味も書いてありますが、それはここでは言いません。これ、書いてある通り結構後で付けられた言葉なのです。何度も述べる「南京事件」でもそうで、中国では「南京大屠殺」、日本では「南京大虐殺 or 南京事件」、あるいは「南京アトローシティ(暴虐事件)」と呼ぶべきだという人もいます。私も本音ではアトローシティと呼ぶべきだと思いますし、ホロコーストに至ってはそもそもホロコーストが例えショアであっても、それは実態を正確には言い表してはいないと思っています。

何故ならば、ナチスドイツが虐殺したのは、ユダヤ人だけでは決してないからです。虐殺する意図は、そもそもが優生思想に基づいたものだったのです。

この事件のあの死刑囚が、ヒトラーを正しいと言ったとか言わないとか、ご存じの方も多いと思います。ナチスドイツはゲルマン民族を第一に優先し、それ以外を劣等種族と決めつけ、生きるに値しない種族を絶滅させる、それこそをやろうとしたのであり、その対象はユダヤ人だけではないわけです。

・ユダヤ人、ロマ人/ジプシー、同性愛者、精神障害者、身体障害者、共産主義者、エホバの証人、反逆者、労働忌避者……etc

などに対する虐殺であり迫害だったのです。一番酷かったのは実は障害者だったのです。真っ先に目をつけられ、次に控えるユダヤ人などを絶滅させるための実験台に使われたのです。これをT4作戦と呼びます。これで引き続き行われた作戦などを含めてこの作戦の系列で、なんと15万人から20万人にも上る障害者など(他にもいますがここでは省略します)が虐殺されるのです。流石にT4作戦はドイツ人からも批判がなされ、ヒトラーは中止命令を出すのですが、実質的には続けられました。

つまり決してユダヤ人だけではないのです。ホロコーストやショアはユダヤの言葉であり、確かにユダヤ人は最も多く虐殺され迫害されましたが、それだけでは実態を言い表すことは出来ておらず、いい言葉がなかなか見当たりませんが、いわば優生虐殺みたいな実態だったのです。

最近は、ウイグル自治区のウイグル人弾圧がホロコーストであるとか、広島・長崎原爆がホロコーストであるとか、どうも安易に非難のためにホロコーストという言葉が使われているようで、私自身すごく抵抗を感じます。酷い行為であるとしてホロコーストという言葉を使うのは簡単でいいのかも知れませんが、それら個々の事象の実態を曖昧にしているようでどうも好きになれません。


大量虐殺の現場はアウシュビッツのガス室だった、という誤った認識。

単純にこれは違うわけです。確かに、最も大規模であるということは言えます。ざっと百万人以上も虐殺者が出たのは収容所ではここしかありません。どうしてそんな事になったのかについては理由があるのですが、それはともかく、収容所は他にもたくさんあります。各収容所についてデータを見てみましょう。

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ご覧の通り、主要な収容所だけでもこれだけあるのです。さらに、他にもまだたくさん収容所がありますし、戦前、ナチスドイツが政権を取って以降から無慈悲に殺されている人もたくさんいますし、収容所まで長い道のりを歩かされて死んだ人もたくさんいますし、収容所ではなくゲットーで亡くなった人もたくさんいますし、ソ連侵攻作戦の背後で特別行動部隊(アインザッツグルペン)によって現地で虐殺された人などは百万人を遥かに超える人数がいるとされていますし、もちろん前述したT4作戦などもありますし、要するに、ドイツ支配下の全域と言っていいくらいのところで虐殺されているのです。

殺され方も、ガス室だけでなく(そのガスも青酸だけでなく一酸化炭素もあれば、エンジンの排ガスの場合もある。ただここでディーゼルエンジンと書いてしまうと、否認論者が出てくる可能性がある(笑))、当然銃殺もあるし、薬の注射などもあれば、強制労働中に飢餓や過労、病気でなくなる場合もあれば、当然収容所内でも同様のこともあるし、寒さで死ぬこともあれば、人体実験で死ぬなんてことも。もちろんゲットーでも普通に射殺されて死ぬこともあるし、飢餓、過労、病気は当然あったわけで、死因にもほんとに色々なわけです。

忘れてはいけないのが、強制労働です。ソ連軍捕虜にせよユダヤ人にせよ、どんどん収容所に叩き込んでは、使えるやつは使うというわけで、ガンガン強制労働に使うわけです(休み時間は30分程度で連続11時間労働のところもありました)。あっちこっちの工場などに送り込んだり、収容所などの建設要員に使ったり、酷使するのです。当然大半は使い捨てです。使えなくなったら辞めさせるのではありません。そのまま過労や病気で死ぬか殺すわけです。なんと、ある工場には現場で死んだ囚人を始末する焼却炉まであったところもあるのです。

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もちろん、ガス室で大量に殺した後の死体処理を担当したユダヤ人、いわゆる特別作業班ゾンダーコマンドを忘れてはいけません。ガンガン処理しないと次々に死体が溜まってしまうので、一つのマッフル炉に三体も四体も放り込んでどんどん焼却処理させる必要があるわけです。普通は火葬なら一体ずつですが、ユダヤ人ごときにそんな甘っちょろいことしてられませんからね。遺体を入れれば入れるほど、遺体が燃料になって燃料節約にすらなる上に、一体あたりの焼却時間が短縮されるのです。

ナチス親衛隊はこの焼却効率でさえも厳しく管理していました。とにかく輸送指揮を取った親衛隊中佐アドルフ・アイヒマンが優秀だったのか次々に効率よく列車で大量に運ばれてくるので、そのユダヤ人を処理しないと次に進みません。

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少しホロコーストの概説から離れますが、よくいる否認論者はこのことを疑問視します。焼却炉の能力問題は別として「労働力を確保しなければならないはずで、そんなに殺す意味がわからない」というのです。はい、私もそう思います。これってやってること滅茶苦茶です。しかし、ナチスの党是なのだから仕方ありません。ユダヤ人は絶滅させるのがナチスの党是でありヒトラーの根本思想だから仕方ないのです。やるしか道はありません。この労働力確保問題は、頭の痛い問題でもあったのです。また何れ何処かで何か良い論文でも見つけたら労働力について述べてみたいと思いますが、今はほぼ知識がないのでこれ以上は言いません、でもヒムラーが労働力確保に関しうるさかったというのを承知の人はいると思います。

ともかく、様々なところで、様々な死因によって多くの人が、ナチスドイツが原因で殺された、その中でガス室は多いとは言っても全体から見れば一部に過ぎないのです。


というわけで非常にざっくりですが、少しでもホロコーストのイメージが掴めたら幸いです。

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