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ホロコーストを疑っている人のために

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かつてナチスドイツが行ったホロコーストを「なかった」という人たちがいます。それらの主張の代表的なものを、ある海外サイトを参考に論破する試みです。
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#ナチス

ホロコースト否定の教祖とされるポール・ラッシニエについて(2)

前回記事: 前回、どーしてもフランス語がうまく翻訳できず、意味が分かりにくかったり、意味不明な箇所がそこそこあって、せっかく記事にして紹介はしたものの、ちょっと読者の方には申し訳なかった感じもしています。 しかし、ラッシニエがかなりの嘘つきだという事実はお分かりいただけたのではないでしょうか? ラッシニエが自分自身を信頼させるような方向で嘘をついているので、翻訳記事の中でもそう呼ばれていたように、「詐欺師」と言っていいと思います。 今回は西岡が、マルコポーロ論文で以下の

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(21):ホロコーストとヒトラー(2)

前回: それでは2回目の翻訳です。 ▼翻訳開始▼ 6.ヒトラーと1937年末以降のユダヤ人迫害の急進化6.1 1937年末までに、拡大主義的な対外政策への移行と同時に、ユダヤ人迫害の新たな、より急進的な段階が始まった。ユダヤ人をドイツから追放するという目標が優先され、これは特に、さらなる差別、直接的暴力の行使、より大きな経済的圧力によって達成されることになった。 6.2 このより急進的な路線は、1937年の帝国党大会でヒトラーが行った強い反ユダヤ主義的演説によって実際

アインザッツグルッペンの証拠:作戦状況報告書ソ連の内容紹介(2)

追記:紹介している「作戦状況報告書ソ連」の内容は、示しているリンク先の英文テキストから日本語訳にしていますが、元々はイツァーク・アラドらによる『アインザッツグルッペン報告書』から必要部分を手作業で転記入力したもののようで、若干の入力ミス的な誤りを含んでいます。文章にはほぼ誤りはないようで、大意としては問題はないと思いますが、厳密な議論をする場合は、前回記事で紹介してあるアーロルゼン・アーカイブズのサイトなどにある元文書の画像からドイツ語をGoogleレンズなどで抜き出して、翻

『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(6)

『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(1) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(2) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(3) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(4) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(5) 第5章までやって、もうそれで終わりにしよっかなー、とか思ってました。何故って、この西岡本に反論し続けても、私自身何も得ることがないからです。これまで、海外の記事の翻訳を

『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(5)

『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(1) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(2) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(3) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(4) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(5) ある意味、今まで色々ホロコースト否定論について記事にしてきた中で、最もメンドクサイ作業をしているような気がしてならないシリーズの第5回目です。やり始めても終わらせられな

『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(2)

『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(1) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(2) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(3) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(4) 『アウシュヴィッツ「ガス室」の真実』に真実はあるのか?(5) 「第2章「ユダヤ人絶滅計画」は実在したか?」について「ドイツは何をしようとしたのか?」について 西岡はここで以下のようにホロコースト(ユダヤ人絶滅)の定説を定式化しま

WWⅡ直後の世界ユダヤ人人口統計について/American Jewish Year Book 1946-47年版に見る1946年のユダヤ人の世界人口

えー……、全翻訳する勢いで始めたはずの、W.ベンツによる『ジェノサイドの規模』の翻訳をちょっとやっただけで投げ出して随分経ちますが、諸々の理由で頓挫しています(理由を書くと言い訳にしかならないので書きません(⌒-⌒; ))。 さて、このホロコースト犠牲者数に関する議論の一つに、アルマナック・デマがあります。 簡単にこのデマの内容を述べると、 世界のユダヤ人人口を詳しく掲載している年鑑として有名なワールド・アルマナックにおいて、1933年には世界のユダヤ人人口が15,31

コードワード(カモフラージュ用語)の「特別処置」(Sonderbehandlung)とは「殺すこと」を意味する。

こちらのnoteの方の更新が滞っておりますが、実際には下書きのままの状態の記事がずいぶん溜まっております💦 はてなブログの方は『ホロコースト論争』動画の論破シリーズを続けるかどうか迷い中。でももうちょっと続けようかなと思ってはいます。 で、今回の翻訳は非常に短いものですが、サクッと検索で見つけられるようにしたいがための記事です。「特別処置(Sonderbehandlung)」なるカモフラージュ用の言葉は処刑(殺害)を意味することを、はっきり示している証拠文書です。ハイドリヒ

修正主義者が一時期喜んだという、アウシュヴィッツ主収容所第一火葬場の「捏造」について書いたエリック・コナンの記事全訳紹介。

西岡昌紀氏とツイッターで議論(?)をしていたのです。あの第一ガス室の捏造疑惑について。捏造疑惑については、 や で解説があるのでこれらを参照ください。この話、1980〜1990年代にかけて、ホロコースト否定論が欧米でそこそこ世間を賑わせていた頃に、散々欧米でも取り上げられていたようなのですが、いろんな人がいろんなことを言うので、ある意味収拾がつかない感じの部分もあったようです。私もこの話、細かい当時の議論の部分までは到底追いきれていません。ただし。上の参照記事中にあるHo

女性用強制収容所ラーフェンスブリュックにあった処刑用ガス室。

ナチスの殺人ガス室は、一般的にはアウシュヴィッツ収容所のものが取り上げられることがほとんどで、他の絶滅収容所と呼ばれているトレブリンカ・ソビボル・ベウジェツ・マイダネクや、他にはガス車が取り上げられることがたまにあるくらいなものであり、絶滅収容所ではない強制収容所のガス室が取り上げられることはあまりありません。私自身、アウシュヴィッツのガス室以外についての知識はほとんどありません。それは、否定論が対象としてきたのがほぼアウシュヴィッツのガス室に限られるからで、論争としてはアウ

殺人ガス車の存在を証明する当時のドイツの文書

ナチスドイツが用いたいわゆる「ガス車」は、「gas van」や「gas wagen」と表記されることが多く、これらを機械翻訳にかけると「ガス・バン」「ガス運搬車」「ガス車」「ガス・ワーゲン」などさまざまな訳語が登場します。どうやら、外国語でも統一された表記は存在しないらしく、いわゆる表記揺れがあっても仕方ないのかなと思いつつ、出来るだけ「ガス車」に統一したいと考えています。 ガス車は現物はもちろん、公式図面などは一切残っておらず、唯一ポーランドの調査委員会がヘウムノで用いら

ホロコーストの犠牲者数はどうして600万人なのか?(3):オーストリア

今回は特に私からの冒頭のコメントはありません。 以下、翻訳内容を確認しやすくするため、ページ区切りは入れてありますが、脚注番号は文章内に[]で示すのみとし、脚注内容は翻訳していません。 ▼翻訳開始▼ ジョニー・モーザー オーストリアオーストリアでは、1938年春の「アンシュルス(オーストリア併合)」によって、ユダヤ人の迫害と絶滅が始まった。これは、ドイツの経済生活からユダヤ人を完全に排除することに終始したドイツのユダヤ人政策の新局面と重なるものであった。ユダヤ人に対す

ホロコーストの犠牲者数はどうして600万人なのか?(2):ドイツ帝国

Dimension des Völkermords Die Zahl der jüdischen Opfer des Nationalsozialismus 今回の翻訳案件は、学術図書文献の翻訳なので、ドイツ語がほとんどわかっておらず、まともな歴史学の教育を受けていない、しかも不勉強な私のような無知が翻訳すべきでないことは確かです。機械翻訳は合計四種類ほど併用して訳していっていますが、英語なら多少理解しつつ適切な翻訳に近づけることができますけれど、ドイツ語の場合、出てきた翻

ホロコーストの犠牲者数はどうして600万人なのか?(1):はじめに。

Dimension des Völkermords Die Zahl der jüdischen Opfer des Nationalsozialismus 今回から何回かに分けて掲載予定の記事は、今までのnote記事とは異なって、非常に学術的な本の翻訳であり、否定論を対象としたものではありません。目的は、ホロコーストの規模に関する学術的資料の日本語訳の提供にあります。 以前から翻訳して読みたいとは思っていたのですが、相手は英語よりもさらにハードルの高いドイツ語。また対象