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プロダクトマネジメント調査報告書に対するダークパターンの懸念と、職業倫理

※株式会社フライル取締役COO 相羽輝様よりメッセージをいただきましたので、該当の文章の箇所にてご案内しました。2022/09/18 18:56追記

不況の足音が聞こえてきています。

プロダクトマネージャーにとっては戦々恐々かもしれませんが、プロダクトマネジメントの知識にとっては追い風になるでしょう。

好景気では何をやっても売上になりやすく、また資金も調達しやすいボーナスステージであり、質の良いものも悪いものも一緒くたになりやすいのです。知見は効果を見極める厳しい視線によって鍛えられます。

短期的には幻滅期に入り、様々なアイデアが淘汰されるでしょう。しかし、その過程で本当に役に立つ知識が生まれ、採用され、広がっていくことになると思います。

こういった状況下では、企業を超えた調査は非常に役に立ちます。私たちが何を課題として焦点を当てればよいのかが明らかになるからです。とくに手弁当の大規模調査は大変ありがたいです。頭が上がりません。効果的なプロダクトマネジメントの知見が集まることの追い風になるでしょう。

しかし、それは調査と開示が適切に行われる場合に限ってです。


flyle社によるプロダクトマネジメント調査

flyle社は2022年3月にプロダクトマネジメントのアンケート調査を行いました。その後、アンケート結果が6月に公開されます。flyle社はプロダクトマネジメントの支援サービスを提供している企業です。

ひとつ、杞憂かもしれない懸念があります。

調査結果のレポートには質問内容を含めておらず、結果のみを公開していることです。自社プロダクトへの利益誘導を図ったアンケート調査に見えかねない懸念がちょっぴりあるということです。

日本のプロダクトマネジメント動向調査 株式会社フライル

ダウンロードはこちらからできます。

プレスリリースはこちら

株式会社フライル取締役COO 相羽輝様よりメッセージをいただきましたので、そのままご案内します。2022/09/18 18:56追記

調査における質問内容は、コンテンツ内のQと言う部分とほぼ同じ(実際の質問の語尾の敬語部分がないのが違い)になっております。分かりづらい点だったかと思いますので、質問一覧として追加公開いたしました。 調査における質問一覧は、下記よりご確認くださいませ。 https://flyle.io/jp/resources/pm-insights-report-2022




調査を悪用した利益誘導の跋扈

さて、すこし話は変わります。調査を悪用した利益誘導の手口が跋扈しています。

近年、広告では「お客様調査でNO.1」を至るところで見ることができますが、これは簡単に実現できてしまいます。

1.質問票をアンケート調査する
2.自社が1位だった質問のみを残して再調査する
3.自社が1位になるまで繰り返す

「お客様調査でNO.1」というラベルを手にするだけなら、簡単に1位をとれてしまいます。このような操作が跋扈している状態です。実態としてのNO1ではなく、販促のために仮初めのNO1が欲しいのです。

このような顧客の意思決定を歪ませるような調査を『No.1調査』といいます。放っておいては、ルールを守る企業だけが損をするという不健全な市場になってしまいかねない問題です。公正取引委員会、JARO(日本広告審査機構)、消費者庁、各業界団体が注意喚起や啓蒙活動をしています。

(平成20年6月13日)No.1表示に関する実態調査について(概要)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/cyosa/cyosa-hyoji/h20/08061302.html

不当な「人気NO.1」にリサーチ協会が猛抗議 恣意的な調査にメス
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00807/

No.1広告 どうする どうなる
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2022/05/story/number1-2/


不公正な調査、公正な調査

これを調査報告に応用するとどうなるでしょうか
1.これからリリースする予定の機能に関係した質問を作る
2.質問内容は伏せて調査結果を開示する
3.予定していた支援サービスを提供する

つまり、調査の姿をした、自社プロダクトに有利な市場動向レポートです。

あとはイベントなどで著名人を呼んで、調査結果を基にパネルディスカッションなどを行えば、これから新サービスを導入しようとする会社にとって必要不可欠な空気感を醸成できてしまいます。

ほかにも歪ませる様々な方法があります。公開調査とうたいつつ、自社の顧客を中心にアンケートをお願いすれば、母集団を自社に有利な形で形成することが可能です。


プロダクトマネージャーに求められる職業倫理

もちろん、flyle社のレポートは、このような恣意的な利益誘導を図ったものではなく、資料としての分かりやすさや軽量さを重視した結果だと思います。資料は非常に見やすくまとめられていますし、経産省などの行政にはぜひ見習っていただきたいところです。だからこそ、つまらないところで懸念があるのはもったいないと思います。

プロダクトマネージャーは、プロダクト開発だけではなく、事業の売上や利益にも責任をもつでしょう。責任のプレッシャーによって、顧客に対して印象操作をしたくなってしまうこともあるかもしれません。

プロダクトマネージャーにはダークパターンに手を染める誘惑が常にあります。恣意的に誘導したり、操作したりです。これから幻滅期に入ったり、不況に入るならばなおさらです。

そのため、プロダクトマネージャーは高い職業倫理でもって自社と顧客と社会に向き合う必要があると思います。


これからのプロダクトマネジメントの調査に求められる、職業倫理としての見本と調査の質

これからも様々な企業や団体が動向調査をするでしょう。私としては恣意性の懸念を取り除くために、レポートには公正かつ客観性が欲しいところです。

・どのような質問による調査を行ったのか(調査方法、質問内容などの開示)
・どのように質問票を作ったのか(なぜこの質問群なのか)
・どの程度、結果は信用できるのか

プロダクトマネジメント支援プロダクトを提供したり、プロダクトマネジメントのイベントを開催するのであれば、これからのプロダクトマネージャーの見本となるような素晴らしい調査と結果の公開がされるように願います。適切な調査のためのワーキンググループを立ち上がったり、研究などが進めば嬉しく思います。

これからのプロダクトマネージャーが、市場を健全にするスキルを身に付け、顧客と社会に貢献するよう願っています。


プロダクトマネージャーカンファレンス(pmconf)にて大規模調査するようです

近年、日本で最もプロダクトマネジメントの啓蒙活動をされているプロダクトマネージャーカンファレンス(pmconf)にて大規模調査をするようです。

「さすがプロダクトマネジメントを長く啓蒙してきたプロフェッショナルだ。調査もぬかりがない」という調査を期待しています。


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