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【新作映画レビュー】『KAPPEI カッペイ』 「大マジメなバカ映画」の美学に満ちた爽快&豪快ラブコメ

©2022 映画『KAPPEI』製作委員会        
©若杉公徳/白泉社(ヤングアニマルコミックス)

若杉公徳のギャグマンガを実写映画化した『KAPPEI カッペイ』(3月18日公開)。世界の終末に備えて戦士としての修行を積んできた男が、平和な社会に放たれて体験するカルチャーショックとムチャな恋愛模様を描いた、おかしくも熱い異色ラブコメ。伊藤英明ら豪華キャストが大マジメにやればやるほど捧腹絶倒のこの映画のあらすじと見どころをご紹介しよう!

『KAPPEI カッペイ』あらすじ(ネタバレなし)

「1999年7の月、人類は滅亡する」というノストラダムスの予言を信じた殺人拳「無戒殺風拳」師範(古田新太)は、孤島に少年たちを集め、世界に終末が訪れた際に人類を救う救世主として育て上げるべく、長年にわたって厳しい訓練を施し続けていた。成長した勝平(伊藤)ら少年たちは、をれぞれが得意技を身に着けた「終末の戦士」になっていた。ところが、時はすでに2022年。世界が滅亡すると思われた年からすでに23年経ったが、その気配すら一向にない。師範は突如「解散」を宣言し、彼らに服と餞別を与えた。

幼少の頃から俗世間から隔離されて生きてきた勝平は、いきなり平和な世界に放り込まれて戸惑う。カツアゲされそうになっていた大学生の啓太(西畑大吾)を偶然助けた勝平は、啓太に連れられて彼らの仲間たちの花見に参加する。そこで彼は、啓太の同級生のハル(上白石萌歌)と出会い、一目ぼれしてしまう。しかし、彼女は高校時代からの先輩である堀田(岡崎体育)に片思いを続けていた。堀田にはカノジョがいるのでハルとは付き合っていないと知った勝平はますます彼女への想いを募らせていくが、そんな彼の前に守(大貫勇輔)や正義(山本耕史)ら勝平の仲間の「終末の戦士」たちが次々に現れる。彼らはこの平和な社会に馴染めず、それぞれに苦悩を抱えていた。しかも彼らの話では、無戒殺風拳最強の戦士である英雄(小澤征悦)が、来なかった終末を自ら引き起こそうと企んでいるらしいという…。

©2022 映画『KAPPEI』製作委員会
©若杉公徳/白泉社(ヤングアニマルコミックス)

勝平の生き様そのものの「実直バカ映画」(←誉めてます)

ギャグマンガの世界を特殊メイクとVFXで実写映画化した作品は近年特に増えているが、成功するかどうかは、原作に対する監督の理解と愛着、そして出演者がどこまで成りきる&振りきることができるか?にかかっていると言えそうだ。監督が原作の世界観を理解しきれないまま的外れな実写版を製作して原作ファンの大ヒンシュクを買ったイタい事例も少なくない。そして特に重要なのが後者。それぞれの俳優の個性を上手く活かしてキャラを演じることが、実写化の最大の意義。これが出来なければ意味がない。アニメで映画化した方が少なくとも無難だ。

その点、この作品は実に潔い。伊藤たちが奇抜なメイクで大マジメに「終末の戦士」を演じている姿はもちろんそれ自体がギャグであるし、彼らがマジメに演じれば演じるほどおかしさが増してくる。だが、勝平が一途にハルを想い続けるという展開が進んでいくと、彼らの「真剣なバカ演技」と勝平の熱さが微妙にシンクロし、大笑いしながらも次第にこちらの胸も熱くなってくる。バカも真剣にやると感動的になるのだ。

そして、ハルに扮した上白石も適役。彼女の持つ柔らかな雰囲気が、屈託のない明るさで勝平たちを魅了するハルにピッタリなのだ。

啓太に扮した「なにわ男子」の西畑も好演で、ただ気が弱いだけでも人が良いだけでもないキャラに説得力を持たせている。クライマックスでは啓太自身の成長も見事に表現している。

その他の共演者も個性派揃いの豪華な顔触れで、古田新太と橋本じゅんの劇団☆新感線コンビ、EXILEの関口メンディー、意外な役で笑いを取る鈴木福など、脇に至るまで絶妙なキャスティング。


心から楽しめて、観終わった時も爽やかな気分になれる。こんな時代だからこそ必要な、まさに救世主のような快作コメディだ。

<『KAPPEI カッペイ』公式サイト>

<『KAPPEI カッペイ』予告編>


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