見出し画像

オンライン授業の本当の要とは

はじめに。この記事は、どちらかと言うと、管理職向けかもしれません。

さて、オークランドは、少なくともあと1週間のロックダウンLevel4の延長が決まりました・・・デルタはなかなか手ごわいですね。

ニュージーランドのロックダウンってどんな感じ?と思う方は、こちらの記事をご覧ください。

4週目のロックダウンに入り、今、僕たちにできることを皆模索しながら、やっと手ごたえを感じているところ。そんな中で、オンライン授業の一番大事なところってやっぱりここだったなぁ、と振り返って思うので、それについてここで報告しようと思います。

まず、去年の学校のやり方が優れていたので、その話を前置きとしてしておくと、後半の要の部分の話がすんなり入ると思うので、させてください。

僕は、去年までは、ニュージーランドでもトップレベルの大規模校で働いていたのですが、そこでの管理職のロックダウンでの対応の仕方が本当に優れていてびっくりしました。

200人以上いる先生に、校長先生から出されたメッセージが

「less is more」でした。

量的に少ないことが求められている、という解釈でいいと思います。

去年のロックダウンでのオンライン授業では、僕たちはできることが限られていた。そこで心配なのは、どの国でも先生になる人たちはまじめな人が多い。これでもかこれでもかと働きすぎると、消耗しすぎてしまう。

少ない量で質を高めよう、というメッセージとともに出されたのが、授業の時間割。授業時間は55分授業から30分に短縮されたものでした。学活はなし。結局、オンラインで集中させられる時間は短く、先生もまた消耗してしまうだろうという考慮から。また、生徒の家庭環境も配慮しようとしきりに訴えていました。

出席率が悪い生徒には、教科担任が家に連絡するのではなく、学年主任がひとつにまとめ、生徒の家庭への連絡することにしました。これには二つの狙いがあります。

NZでは、学年主任の授業数は少ない代わりに、学年主任が問題行動を起こす生徒への指導の責任を負っています。つまり、ロックダウン中は、授業がたくさん入っている教科担任の先生の負担を、授業数が少ない学年主任に全部集結させるのは理にかなっている。そして、すべての教科の先生が個別に生徒に対応するより、教科担任の先生方が、出席をまとめ課題提出の結果とかもまとめて、できてない生徒の情報を表にまとめて主任に送れば、それを主任がまとめて家庭に連絡できる。このシステムさえ構築できていれば、相当な数の先生の手間と時間が省けるんです。

そして、これは保護者からの視点からも利点があります。各教科の先生方が生徒の親にメッセージを直接送ってしまうと、親はメールボックスがいっぱいになってしまい、どれを注意して読めばいいかわかりにくくなってしまします。なので、学年主任から整理されて送られる一回のメールの方が保護者の視点からしてもありがたく、教育効果もこちらの方が高いでしょう。

ここでも「less is more」なんですよね。

こういった管理職からのクリアなメッセージを受けて、僕たち教師はかなり動きやすかったです。この管理職の工夫がなかったら、進学校だったので、生徒も先生もストレスで崩れていっていたと思います。

ここで、この記事のトップの写真にある大根なのですが、嫁さんのご両親が僕たちが大根が好きだからと作ってくれたもの。慣れない野菜を育てているので、要領がわからず曲がっていますが、めちゃくちゃおいしかったんです。

ここで大事なのは、心とおいしさや栄養分であり、不細工かどうかではないんです。

最初から完璧を求めず、まず何が一番大事かどうかに目を付けていたから、ご両親はおいしい大根を育てることができた。

オンライン授業でも同じだと思うんです。

僕たちはオンライン授業を始めてしょせん1年そこそこ。

不細工な感じになって当たり前なんですよね。

大事なのは、スマートにやり切ることではなく、そこで働く人間と、そこで学ぶ人間を守ることなんですよね。そのためのロックダウンですし、そのためのオンライン授業ですから。

さて、ここで、オンラインに切り替わった学校運営で心得たい要が以下の4点。

1つ目は「何を一番大切にするべきか」です。

もちろん、生徒の安全と成長。

受験合格や勤務時間などは、正直優先順位でははるか下の方です。まずは、生徒の安全が確保された状態で、生徒が最大限成長するにはどうしたらいいか、を主軸に置くべきです。

あれこれやろうとせず、しっかり狙いを絞り集中。まさに「less is more」ですね。

2つ目は基準。オンラインではない学校の教育とオンラインを同じ物差しで測ろうとしない事。

オンラインの授業とオフラインの授業を同じ基準でやろうとすることは、道路を走っていた車で海に突っ込むようなものです。海には船なんです。つまり、学校のシステムは、オフライン用に適したシステムで、オンライン用に適したシステムではないんです。

例えば、オンライン授業では、朝の会や学活、帰りの会などは、やる意味はほとんどない。そこでできることは、学年主任からメールで連絡事項を送ればいいし、教科主任からグーグルクラスルームで確認事項をコメント欄に記述すればいい。百歩譲って朝の会をしても、それは「この時間に起きましょうね」という知らせぐらいでいいので、1時間目の授業の10分前に行い、出席を取ったらそれで終わっていい。

結局ここでも「less is more」なんです。これを無視すると、生徒にも先生にも無駄にストレスが蓄積します。先生の労働時間も短くていい。今まで日本国民は、学校の先生方に鬼のような残業を押し付けてきたんです。オンラインの時に、就業時間より1時間2時間勤務時間が短くとも、文句を言うべきではありませんし、そもそも、一番重要なのは先生の労働時間ではなく、生徒の成長なのだから。思考停止したまま「いつも帰りの会やってるから、オンラインでもやるんだ!」って推し進める大人の姿を見る生徒がかわいそうです。生徒の成長を考えると、やはり、そこはズバッと切り捨てて徹底的に無駄を省く采配を見せる先生方から学びたいですよね。

授業も35分ぐらいが適切じゃないかと思います。指示や説明をそこに凝縮させ、後は放課後の時間に出された課題の残ったところを済ませてもらえばいい。

生徒の精神的な安定や成長を第一と考えれば、徹底的にオンライン用にプランを組みなおした方が絶対に得策です。

3つ目は、余裕です。

先生方に余裕ができると、怠けるほうに時間を使うよりも、その短い時間でオンライン授業の質の向上に勤め始めます。先ほどにも述べましたが、先生になる人たちは、根が真面目な人が本当に多いんです。自由にできる時間ができたら、授業研究に時間を注ぐようになります。それがすごくアナログなものであったとしても、それがとても優れた技術を駆使したものでも、なんでもいいんです。各々で指導力向上の研修をし始めます。

Googleが労働時間の20%を労働者の好きな仕事に充てていいというルールを設けた20-80のルールがあり、その20%が実はメインの収益を生み出すような価値の高い時間になっているんです。

研究熱心な日本人が、そういった余裕を手に入れたら、あっという間に色々なオンライン指導における技術が飛躍的に向上します。「less is more」の効果がこんなところにも表れます。いや、あの校長本当にすごいなって今でも思います。

最後の4つ目は「知識・技術の共有」です。

オンライン授業で使える技術などは、徹底的にシェアすべきです。僕ら一人一人の能力はたかが知れていますが、色んな先生のいろんなアイデアや技術、知識をお互いに共有し合うことで、質の高い授業を作り上げることができます。

徹底的に無駄を省けと言っている僕ですが、これにおいては、週1回1時間程度のオンラインの研修を職員会議と合わせて行ってもいいと思っています。

結局、僕がnoteでオンライン授業の事を発信しているのも、情報を共有して少し手でもいいと思ったところを皆さんに使ってもらえればと思っているからなんです。

インターネットって、本当に共有できるスピードが速いですよね。なので、この利点を生かして、オンラインでの教育の質をガンガン向上していけばいい、と願い、今回の記事は終わりにしようと思います。

もし、これを読んでおられる教育関係者で、僕と相談したいという方がいましたら、コメント欄にメッセージください。

自分がお役に立てるようであれば、喜んで相談にのります。

では。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?