連作短歌「失恋日和」

真っ白に輝く陶器の左手が私に伸びていく蜘蛛の糸だ

カーテンの隙間から降るやかましいネオンが照らす埃のダンス

不動の二番にしてね? いつだって電話が鳴ればそこは楽園

好きだとか愛してるとか言う前にもんじゃ焼いてよ わかっているから

コンビニのついで買いと同じくらい「今夜空いてる?」は気楽にお願い

中央のベッドはスポットライト付き 裸体の点検作業に最適

指先を裂いた紙切れに残る惰性さえも砂利と化した

チャーシューじゃなくて喉を食いちぎり愛欲引き摺り出せよ犬歯

はじまりがなければ全部フィクションでおわりもなければiもないよね

普通すら望めないまま夜が来る モーゼは渋谷で何を思うか

許したい、許してほしい、許せない。判決を待つ砂場の淵で


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この短歌は小説「あなたは砂場でマルボロを」を基に作られた連作です。
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