連作短歌「失恋日和」
真っ白に輝く陶器の左手が私に伸びていく蜘蛛の糸だ
カーテンの隙間から降るやかましいネオンが照らす埃のダンス
不動の二番にしてね? いつだって電話が鳴ればそこは楽園
好きだとか愛してるとか言う前にもんじゃ焼いてよ わかっているから
コンビニのついで買いと同じくらい「今夜空いてる?」は気楽にお願い
中央のベッドはスポットライト付き 裸体の点検作業に最適
指先を裂いた紙切れに残る惰性さえも砂利と化した
チャーシューじゃなくて喉を食いちぎり愛欲引き摺り出せよ犬歯
はじまりがなければ全部フィクションでおわりもなければiもないよね
普通すら望めないまま夜が来る モーゼは渋谷で何を思うか
許したい、許してほしい、許せない。判決を待つ砂場の淵で
-----------
この短歌は小説「あなたは砂場でマルボロを」を基に作られた連作です。
BCCKSをはじめ、各種電子書籍媒体で購入できます。
いただいたお金は、美味しいお酒と新しい本に使い、書くためのエネルギーにしたいと思います。