10歳が語る「中華系タイガーマム像」がおもしろすぎた話
「タイガー・マム(タイガー・マザー)」という言葉をご存じでしょうか。
中華系の母親を形容する言葉で、日本語でいう「教育ママ」のような意味ですが、もっともっと強烈にスパルタ。厳しさの度合いは、日本でいうと「中学受験期やお受験期の教育テンション」に近い感じ、といったらイメージがつきやすいでしょうか。それが日常なのです。
今日は、インターナショナルスクールや海外の学校にいくと必ず出会うであろう「タイガー・マム」についてお話します。
「タイガー・マム」ってどんなママ?
ひと言でいうと「(中華系の)教育熱心なママ」のことですが、私から見た印象としては、ときに「教育虐待」まで繋がるような「教育ママ」という言葉が持つネガティブな印象はあまりなく、タイガー・マムは子どもに厳しいけれど理性的で自覚的。周囲に踊らされたり、手段が目的化して盲目になっているような様子はなく、感情的になることもあまりありません。感情を込めて怒ることもありますが(体罰もあります)、一定の明確なルールが存在します。将来のゴールを見据えていて、明確な方針があります。
また、子どもも「そういうもの」とある程度は諦観し、受け入れている感があります。「理不尽だ」と思うよりは「自分たち中華系の伝統だ」と理解している感じとでもいいましょうか。(周りの中華系家庭もみんな同じですからね)
マレーシアでもカナダでも、出会った中華系のママたちはほとんどが「タイガー・マム」。とっても教育熱心です。勉強(特に、算数と英語と、自分たちの言語である中国語)と楽器(ピアノかバイオリンが多い)はデフォルト。かなりきっちりやらせています。そして、「タイガー・マム」であることは、子どもたちの間でも(ママたち本人にとっても)半ば「ネタ」となっています。
そうして、中華系の「stereotypically successful kids(「典型的な成功」をおさめる子ども)」が育てられていくのですね。
ちなみに、中華系の女性の先生もそんな感じです。
そして、タイガー(虎)は、中華系の人にとって、「尊敬と畏れをもって見られる、強さと力のシンボル」です。
当事者の子どもが語る「タイガー・マム」像
さて、10歳の娘の同級生(中華系)数人が口々に語った「タイガー・マムあるある」がおもしろすぎたのでご紹介したい、というのがこの記事の主旨ですので、さっそくご紹介していきましょう。
娘の学校では近々、学習発表会のようなイベントがあり、子どもたちが親を招いてプレゼンテーションをするのですが、イベントが迫ってきたある日、カナダ人の担任の先生が「みんな、緊張しなくていいからね」と優しく声をかけました。
カナダ人(白人)の子どもたちはにこやかに「はーい」と答える中、中華系の子どもたちが口々に言ったのがこちら。
一方、カナダの白人ママは、勉強に関して圧をかけない人が周囲では多いです。地域性などにもよるとは思いますが。好きなことはさせるけど無理強いはしない感じ。学校も圧をかけません。
カナダはスポーツが盛ん。各家庭でも、球技、ボート、ホッケー、体操、スキーなど、好きなことならかなり徹底してやる環境を用意している印象です(かなり遠くの遠征に毎週連れて行ったり、雪の季節は毎週末に車で片道3~4時間のスキー場に行ったり、学校に行く前にスポーツの早朝練習を入れたり、2つのチームにかけもちで所属させたり、家の中でトレーニングできる装置や部屋を作ったり)。
インド系ママは、男の子には算数重視(性別でなのか適正をみているのかはわかりませんが)、女の子には勉強以外のこと、例えばスポーツや歌やダンス、料理やリーダーシップなどの人格教育を重視しているように見えます。インド系の男の子は賢く礼儀正しく、女の子はおしゃれ好きで陽キャ(明るい性格)、って印象があります。もちろん家庭にも子どもにもよりますが。
韓国系ママはわりと「タイガー・マム」的。やらせている言語が中国語か韓国語かの違いで、あとはなんとなく似ています(インターナショナルスクールに通っていると、子どもの第一言語が英語になってしまうので、家庭学習で自分たちの母語を学びます)。
ベストセラーの「タイガー・マム」本によると
ところで、2011年にベストセラーになった「Battle Hymn of the Tiger Mother(邦題:タイガー・マザー)」という本があります。
これの冒頭を読んでみますと、これがまあ、上記の「リアル・タイガーマム」像にそっくりで! 当事者の子どもたちが笑い話として言っていた「あるあるネタ」は、「本当」だったのです。
例えば、冒頭に、「タイガー・マザー」当事者である著者、エイミー・チュウが「2人の娘に禁じていたこと」のリストがあるのですが、
著者、エイミー・チュウ(ちなみに弁護士でイェール大学法学部教授、しかも美人)の娘たちは「常にオールAの成績でなければならず、劇に出たり友達と遊んだりしてはいけなくて、勉強もピアノとバイオリンもやらねばならず、文句も言っちゃだめ」ということですが、娘のお友達のいう「タイガー・マム」像とそっくりでは。私が知る中華系ママたちも、お友達との遊びやスポーツ、演劇への出演を含めたリーダーシップも大事にしているものの、その他は似ているかも笑。
Amazonで冒頭の試し読みをすると、他にも「算数は他の子より2学年分進んでおくべし!」とか、「スポーツはメダルを取れるもののみ許可。但しメダルの色は金に限る!」など、「言いそう~!」なことが書かれています(北米の一般的な学校の算数教育は、アジアの算数よりだいたい2年遅れた内容をやるカリキュラムなので、算数については日本人ママもわりと共感ポイントかも)。
日本語版は、斉藤孝先生が翻訳をされているんですね。おもしろそうです。
中華系ママは世界中どこに行っても会いますから、「タイガー・マム」はインターナショナルスクールに興味があるなら、知っておいて損のないキーワードですよ。
でも、「タイガー・マム」は、厳しい厳しいと言いますけれど、彼女たちは愛情にあふれている人が多いです。とても辛抱強いです。子どもが思ったように動かなくてもけっしてキレたりしません。何度でも何度でも、横に座って、繰り返し、穏やかに言い続けます。子どもがキレてもキレ返したりしません。その姿勢には学ぶところ多しです。そして、仲良くなると私のような日本人ママのこともとても親身に助けてくれます。ママ同士でマウントを取ってくることもありません。
マレーシアのインターナショナルスクールで会うようなローカルの中華系ママはきっとこんな感じです。仲良くなったら、考え方や教育方針を聞いたり、子どもの将来の目標などを聞いてみたらおもしろいと思いますよ。
そんなタイガー・マムが育てている子どもたちがたくさんいるのですから(なにしろ人口が多いですからね)、将来、インターナショナルスクールを卒業した日本人の子どもたちが「欧米の名門大学のアジア人枠」に入るのって、競争率が高いんですよね。
甘くない世界です。
ではでは、また。
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