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《海の上のカムデン》シリーズ4『ピーナッツバター殺人事件』(1993)紹介と感想

コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希・訳『ピーナッバター殺人事件 The Peanut Butter Murders』東京創元社, 2005


あらすじ

材木問屋で秘書をしているカルメラが、車が故障したため線路を歩いている時に、列車に轢かれて轢死したバラバラ死体を見つけたことから物語は始まる。
死んだのはライトフットという男性で、〈海の上のカムデン〉の比較的新しい入居者・エドナの婚約者だった。
更にカルメラが働いていてる材木問屋の経営者はキャレドニアの友人であったことから、キャレドニアとアンジェラは事件に関わる事となる。
町で起こった轢死事件以外にも、スワンソンとコンチータの喧嘩、ロビーで鳴いているインコと様々な刺激で溢れかえっている〈海の上のカムデン〉。
アンジェラとキャレドニアは、ブライトン翁の協力も得ながら、事件の真相を探っていく。


紹介と感想(犯人は明かしてませんが内容への記述はあります)

今作はカムデン内で起こった事件ではありません。
しかし、事件の話がアンジェラの耳に入り、関係者がカムデンにいるとなっては、誰も彼女を止めることは出来ないのでした。

今回のアンジェラは、キャレドニアが制止する声も聞かずに過去作以上に危ない行動を行ったり、人の地雷を踏みぬいたりしてしまいますが、自身の行為に対して因果応報な仕打ちを受ける事になりました。
しかし、痛い目に遭っても止められないのがアンジェラの性分なのです。

今回はブライトン翁を仲間に引き入れ、不法侵入も行います。
しかし、この不法侵入はブライトン翁にとっては良い刺激になりました。
今回の事件を経て、ブライトン翁はある大きな決断を2つもします。

そして、今回も保護者にしか見えないマーティネス警部補の心労が伺えます。結構本気でアンジェラに怒る場面もありますが、その後にはしっかりご機嫌をとることができ、相変わらずスマートな人物でした。

ミステリーとしては、些細な違和感に気づくことで犯人にも気づくことができるように伏線がしっかり描かれていました。
犯人自体は描かれ方が分かりやすいのと事件の内容からの消去法で簡単に当てられると思いますが、アンジェラとキャレドニアがどのように犯人を特定したのかを考えながら読むと面白いと思いました。

また、どこから読んでも大きな問題がある訳ではないシリーズですが、登場人物の変化も色々と出てきており、レギュラーの関係性が分かった方が楽しめるやり取りも多いため、1~3作目のどれか1冊でも読んでからの方が楽しめると思います。

登場人物たちの楽しいやり取りや変化を主菜として楽しみながら、軽めのミステリーも副菜として味わえる。今回も良いコージーミステリーでした。

自分たちの人生の幕が閉じかけていることを認めない皆が、ダグラス亡きいま、アンジェラの家族であった。生き生きした心と心が互いの命を輝かせる。皆、歳を重ねていることは認めていたが、それはほかの表現よりもましだからだ。自分たちは歳を重ねている――だが、年寄りにはならない。

コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希・訳『ピーナッバター殺人事件』東京創元社, 2005, p.62

シリーズ一覧

01.老人たちの生活と推理 The J. Alfred Prufrck Murders(1988)
02.氷の女王が死んだ Murder in Gray and White(1989)
03.フクロウは夜ふかしをする Murder by Owl Light(1992)
04.ピーナッツバター殺人事件 The Peanut Butter Murders(1993)
05.殺しはノンカロリー Murder Has No Calories(1994)
06.メリー殺しマス Ho - Ho Homicide(1995)
07.年寄り工場の秘密 The Geezer Factory Murders(1996)
08.旅のお供に殺人を Murder Olé!(1997)
09.Bed, Breakfast and Bodies(1999)

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