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虚実綯交ぜ骨折り日記②~受診から即入、怒涛の展開篇

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今回は、病棟へ上がるまでの流れを記載しました。

2 「撮影したら骨がずれていた」

病院の玄関前にタクシーが止まった。
正直、タクシーを降りるのも辛い状況の中、受付までの短くも長い距離をゆっくりと進む。
自動ドアを抜けると自動体温測定装置があり、熱を測るように記載されている。
体温は36.6℃、平熱だ。体温測定のモニターに映る自分の表情が痛々しかった。

痛みを少しでも感じなくするために、人生で一番痛かった10年近く前の尿管結石の痛みを思い出しながら歩いていたが、それはそれとして今回も痛い。

外来は昼休みだったが、受付には数人のスタッフが働いており、受付前まで行くと一人のスタッフがすぐに来てくれた。
辛そうにしているのが前面に出過ぎていたため、後ろの椅子に座るように促してくれる。
保険証も近くまで受け取りに来てくれ、「名前が呼ばれても歩けなさそうなら座ったままで居てくれれば車イスを持ってきます」と声もかけてくれる。ありがたい。
13時30分から昼の外来が始まるが、今の時刻は12時30分。受付番号は堂々の1番だった。

そこからの1時間が長かった。座って体重をかけないでいると多少マシではあるのだが、足の違和感やちょっとした時に感じる痛みは拭いきれない。
待ち時間用に図書館で借りた本を一冊持っていったが、なかなか集中できず、少し読んでは待ち合いの室のモニターに流れる美しい自然の映像を見る。また少し読んでは、頭を空っぽにしようと視点を空に彷徨わせる。

そんなこんなで13時30分を数分過ぎた頃。外来の看護師より、レントゲン撮影に行くことを告げられ、車イスに乗りレントゲン室へ運ばれた。

レントゲン室では、台に上がるだけで一苦労。台のサイズが身長と合っていなく、少しずつ身体をずらして調整したのだが、この身体ズリズリ移動でも足に響く感じになっていた。

一度撮影が終わり外来待ち合いまで戻ったが、すぐにレントゲン室へ呼び戻される。
写真を見た外来担当の先生が、もう少し詳しい撮影をしながら、その場で骨の位置を少し直すことになった。

左足首に局所麻酔を行い、エイヤッ!とばかりに先生が力づくで骨の位置を調整する。
最初、骨の位置を直すと聞いた時は恐れ戦いたが、さすがの麻酔効果で痛みは感じず。
これにより、ずれた骨の位置はかなり元の位置まで戻ってきた。

当然、こんな状態で家に帰れる訳もなく、その場で入院して手術を行うことが決定。
歩ける状態じゃないため、当然ダメだと知りながら「一度家に荷物を取りに帰ることはできますか……」と尋ねるも、「難しいね」と予想通り返答だった。

外来の処置室でバイタルサイン測定を行ったり、コロナ検査(鼻の奥をグリグリされるのも初体験!)を行う。
その後、入院のしおりを受け取った後は、迎えが来るまでしばし待機となった。

待機中に考えたことは、もちろん転んだ前後の状況への後悔もあるが、それ以上に2週間後に初出勤を控えているのに、入院して大丈夫なのかという焦りの方が大きかった。
入社前の人間が「転んで骨折したので、どうやら予定どおりには行けません」ってヤバイでしょ!

頭では、骨折して手術が必要な人間が2週間で帰れるわけはないと分かっている。
しかし、気持ちとしては、
(来週頭に手術して、すぐに装具を作って、松葉杖の練習をして、退院したい!)
と、現実性皆無の希望が浮かんでしまった。

麻酔の効果が残っているのか、動かさずに安静にしていれば痛みもさほど気にならないため、思考が活発に回り始める。
少し気分転換をしようと本を開くが、そうすると(本の返却、どうしたらいいんだ……)と考え、ページを繰る手が進まない。
まあ、読み始めたばかりの本なので、本の世界に入っていなかったのもあるかもだけど。

その後は、処置室内で交わされるスタッフ同士の会話に耳を傾けたり、室内をボーッと観察しながら過ごしていると、遂に病棟からの迎えがやってきた。

車イスを押してもらい、入院病棟のある上階へとエレベーターで上がる。
数時間前には予想もしていなかった、人生初の入院生活が始まったのだ。

――続く

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