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(社)日本児童文芸家協会【編】『メルヘン・オムニバス』(2002)紹介と感想

(社)日本児童文芸家協会【編】『メルヘン・オムニバス』パロル舎, 2002


日本児童文芸家協会の会員の応募作品から選ばれた、全12作からなる創作童話集です。各話20ページ以内で完結する短い話が揃っています。

収録作品あらすじ

林 マサ子「幸せを呼ぶペンダント」

イタリアの港町でカメオ彫りをしているマルコ。彼の作るカメオは「幸せを呼ぶペンダント」と評判だった。
今日は、一か月に一度のペンダントのための皿貝を買いに行く日。マルコは島へ行くための船に乗った。

森木 林「オルゴールの森へ」

大切にしていたオルゴールが無いことに気づいたマリ。おばあちゃんから、秋の一か月の間、世界中のオルゴールが集まる『オルゴールの森』があると聞いたことを思い出し、探してみる事にした。

まえだ まさえ「@Piano」

一年前に右手を骨折してからピアノを辞めていたナナミ。そんなある日、メール友達のルーから小さな小さなグランドピアノが届いた。ピアノの音を聞くたびに少しずつ大きくなっていくピアノに合わせて、ナナミの胸の中でも、むくむくとへんな気持ちが大きくなっていった。

津島節子「白いマントの風の子」

白いマントにくるまった、小さな北風の子ども。寒いし怖いし疲れるし、空き缶に引きこもっているうちに、家族はみんな北の国へ飛び立ってしまった。そんな時、猫たちにみつかった風の子は、親分猫のギロンに促されて、自分の境遇を語り始めた。

上山智子「街角物語」

四十年以上現役のバスは、一日に五回、市内を循環している。最近、ポピンズ通りの古びたアパートまでくると胸が苦しくなるようになった。
アパートの一階には、歌が大好きで、窓をぴかぴかにして、綺麗な花を飾っているリサさんが住んでいた。
これは、そんな古びたアパートを中心に語られる物語。

伊藤実知子「迎え橋」

子供が一人で遊んでいると小鳥が迎えにくると言われている迎え橋。蛍は夏休みの宿題を『迎え橋の秘密』にすることにした。ママに聞いても真剣に答えてくれないので、おばあちゃんの家に行く事にした。おばあちゃんの家は迎え橋の向こう側にある。蛍は橋を渡り始めた。

岡井梨沙「けさらんぱさらんのふる日」

学校を休んでいるヨウイチの頭の上に、ビワの木から真っ白な毛玉のようなものが落ちてきた。プリントを届けに来てくれたケンタと一緒に調べると「けさらんぱさらん」と分った。信じてはいなかったが、世話をしてみることにした。そんなある日、ケンタと言い合いになって……。

横田明子「化かされて、仲直り」

「そなたは、キツネに化かされたことがあるか」
「い、いえ、いっこうに」
お祖父さんがしんのすけに語る、お祖母さんと喧嘩した日に起こったキツネに化かされた話の顛末。

長井理佳「るすねこ屋のなおさん」

なおさんは猫が大好き。十八年一緒にいたハナが亡くなってから元気がなくなっていたが、ある時、ハナも毎日ねこらしく生きたんだから、私も何かしなくちゃと「るすねこ屋」を始める事にした。これは、「るすねこ屋」としての最初の仕事の話。

磯野理香「涼暮月」

ある田舎に土地の昔話を集めに来た大学生。あるお婆さんが話してくれたのは、自分が十二歳の時のこと。父の再婚が嫌で、家出をしようとした日に起きた不思議な出来事だった。

いどた より「ひがんばなになあれ」

田んぼのあぜ道に一斉に咲き誇ったひがんばな。毎日毎日楽しくおしゃべりをしています。楽しそうなおしゃべりに、獣医の馬杉先生も球根を掘り起こせなかった。ある時、悲しそうな様子をした一匹のたぬきが歩いてきて……。

小原麻由美「見えないバイオリン」

ある北国の寒い町に、音の森と呼ばれている森がある。今は、再開発の真っ最中だ。そんな町に住む女の子・リラは、駅前で「お友だちをさがしに来たんだ」という男の子と友だちになる。透明なバイオリンを奏でる男の子から、森のコンサートへ招待されたリラは……。

感想

日本が舞台の話から外国が舞台の話、寓話的な内容から、心温まる話、ユーモア系にホラー系と様々な物語が揃っていました。

各作家毎に全然違う持ち味があり、短い中でホッと穏やかになったり、コワッと恐怖感を感じたり、色んな気持ちを感じることができます。

特に面白く感じた話は、「オルゴールの森へ」「@Piano」「るすねこ屋のなおさん」「ひがんばなになあれ」辺りになります。

たまには童話の世界をのんびりと味わうのも良いものだなぁ、とくつろいだ気分で読む事ができました。

 ひとつのお話が、ひとつの小さな世界。いそがずに、静かに、できたら声にだして読んでほしい。読みおわったら、もうひとつ、あなたのお話をこのオムニバスに乗せて誰かのもとに届けてほしい。

(社)日本児童文芸家協会【編】『メルヘン・オムニバス』パロル舎, 2002, p1

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