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『アガサ・クリスティー・アワー』(1982) 「青い壺の秘密」「赤信号」 紹介と感想


第7話「青い壺の秘密」The Mystery of the Blue Jar

原作:アガサ・クリスティー「青い壺の謎」(1924)
   早川書房『死の猟犬』所収
脚本:T.R.ボウエン
演出:シリル・コーク

あらすじ
ジャックは弁護士の試験勉強をしながらゴルフの練習もするためにホテルに投宿していた。
ある日の早朝、一人でホールを回っていたジャックは、女性の声で「人殺し!助けて!」という叫び声を聞いた。
近くの家に駆けつけると、若い女性が立っていたが、叫び声など聞いていないと言う。
次の日も同じ地点、同じ時間に叫び声が聞こえるが、やはり若い女性には聞こえていない様子。
不安になったジャックは、霊魂の医者であるラビントン博士に相談することにした。
二人でゴルフ場へ出かけるが、助けを求める声が聞こえるのは自分だけ。
勉強疲れか怪奇現象か。ラビントン博士と協力してジャックは原因を調べ始める。

紹介と感想
ジョーン・ヒクソン版ミス・マープルや、ジェレミー・ブレッド版ホームズの脚本に参加していることでお馴染みT.R.ボウエンの脚本回です。

ジョージ叔父さんの出番が原作よりも増えていることで、ジャックの日常周りの描写に厚みが増し、ラビントン博士の登場にも自然さが出ていました。

基本は原作通りに進行しますが、後半ジョージ叔父さんが帰ってきてから、原作にはないジョージ叔父さんパートが始まります。
そして、最後は少しだけ幸せが舞い込んでくる形で気持ちよく観終わることができるようになっていました。

今の時代の作品では中々味わえない、古き良きのどかなサスペンスドラマとして面白い作品でした。

出演
     ラビントン博士/マイケル・オルドリッジ
ジャック・ハーティントン/ロビン・カーモード
    ジョージ叔父さん/デレク・フランシス
       フェリース/イザベル・スパッド
        ダッズ氏/ヒュー・ウォルターズ


第8話「赤信号」The Red Signal

原作:アガサ・クリスティー「赤信号」(1924)
   早川書房『死の猟犬』所収
脚本:ウィリアム・コーレット
演出:ジョン・フランカウ

あらすじ
ダーモットは、「赤信号」と呼んでいる嫌な予感を感じながら、トレント夫妻との食事会に出かけた。
食事会には、伯父で著名な精神科医のアリントンも招かれていた。
余興として行われた降霊術で、「危険なので家に帰るな」との予言が告げられるが、誰に向かって言われたのかは分からなかった。
食事会の出席者はダンスへ出かける中、アリントンはダーモットへ話があると家へと誘う。
「赤信号」の予感はどんどん強まっていく。果たして、予言は誰に向かって告げられたのだろうか。

紹介と感想
予感や第六感と呼ばれるものは果たしてあるのか。それはどういものなのか。
ダーモットが感じた「赤信号」は、ただの超現象なのか、無意識化で何かを感じ取っていたのか。

降霊術で告げられた不吉な予言は、どのような説明がつけられるのだろうか。

超常的な空気感を漂わせながら描かれるサスペンスドラマです。
霊媒師のミセス・トムソンの存在感が強まっており、多くの予感を見通している雰囲気を出していました。

そして、原作を読んでいる時から、伯父さんは主語をつけて話してくれと思っていました。
ドラマの時間一杯持たせるにはサスペンスとして大分シンプルですが、時間一杯集中して観れる内容となっていました。

出演
サー・アリントン・ウエスト/アラン・バデル
    ジャック・トレント/クリストファー・カザノフ
     ミセス・トムソン/ロザリー・クラッチェリー
     クレア・トレント/ジョアンナ・デヴィッド
   ダーモット・ウエスト/リチャード・モラント

他の映像化
『サスペンス』(米/CBS/1949~1954)
 「赤信号」(1952/30分)


ドラマ概要

題名:THE AGATHA CHRISTIE HOUR
製作:テムズ・テレビ/イギリス/1982年
話数:全10話
時間:51分

01.中年夫人の事件 The Case of the Middle-Aged Wife
02.仄暗い鏡の中で In a Glass Darkly
03.車中の娘 The Girl in the Train
04.第四の男 The Fourth Man
05.不満軍人の事件 The Case of the Discontented Soldier
06.マグノリアの香り Magnolia Blossom
07.青い壺の秘密 The Mystery of the Blue Jar
08.赤信号 The Red Signal
09.ジェインの求職 Jane in Search of a Job
10.エドワード・ロビンソンは男なのだ The Manhood of Edward Robinson


参考文献

01.Mark Aldridge『AGATHA CHRISTIE on Screen』Palgrave Macmillan , 2016, p.56


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