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つんく♂『「だから、生きる。」』(2015)紹介と感想

つんく♂『「だから、生きる。」』新潮社, 2015

2015年4月に母校・近畿大学の入学式の日から振り返る、上京してからの仕事一色の忙しい毎日、後に妻となる女性と出会ってから結婚、子供が生まれて価値観や過ごし方が変化していく幸せな日々、喉頭癌発覚後の闘病から口頭全摘出となるまでを赤裸々に綴ったエッセイになります。

自分にとっては『リズム天国』のプロデューサーとしてのイメージが強いのですが、本作を読むことで悩みや嫉妬もする立体的な一人の人間として浮かび上がってきました。
不安と裏返しな自信で突き進んでいた若い頃、妻と出会ってからの初々しい態度もかわいらしく、その後どんどんと価値観がアップデートされて「ジョンとヨーコの法則」になっていく姿など、どれもが近くにいる凄い兄ちゃんという感じで読みました。
なにより、何事にも本気で取り組む姿勢が素晴らしかったです。

実体験をもとに伝えたいメッセージもしっかり伝わってきて、考えさせられる内容になっていましたが、個人的には後に妻となる女性と出会ってからの初々しいエピソードの可愛さが、個人的にかなりツボでした。
一緒に歩くだけで楽しくなったり、どのタイミングで手を繋いでいいか分からなかったり、家で二人でどう暮らしていけばいいのか分からなかったり、二十年ぶりのスーパーに戸惑いながら他の人の行動を参考に動いてみたり、ここら辺の内容は自分の頭の中で漫画として再生されていました。

終章で、ちょうど本書が出版される時期に亡くなった岩田聡さんに触れられていたのも印象に残りました。
また、つんく♂さんが本気を出して制作した『リズム天国』の新作が遊べるといいなと思います。

そして、自分も出会った出来事、プラスにしてもマイナスにしても、に感謝をしながら生きていきたいと感じました。

六月に発売になった任天堂「リズム天国」シリーズの新作の製作は、病気が発覚してからの心の支えだった。
~(中略)~
この終章を執筆中に、任天堂の岩田聡社長の訃報を聞いた。岩田社長には、「リズム天国」の第一作開発から大変お世話になっている。ついこの間も文章対談をし、その時も僕の身体のことを心配して下さっていたのに……。
 本当に残念です。

つんく♂『「だから、生きる。」』新潮社, 2015, p.215-216
「終章 未来へ続く扉 2015.4~」より

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