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アガサクリスティーについて

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アガサ・クリスティー関係の記事をまとめています
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#小説感想

ミス・マープル長編05『魔術の殺人』They Do It with Mirrors(1954)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 田村隆一訳『魔術の殺人』早川書房, 1982 『カリブ海の秘密』を読んだので、続けてヘレン・ヘイズ主演2作目の原作『魔術の殺人』も十数年ぶりに再読しました。 あらすじ マープルは旧友のヴァン・ライドック夫人に頼まれ、夫人の妹でマープルも友人であるキャリイの邸宅ストニイゲイトを訪れた。 キャリイは3番目の夫・ルイスと共に非行少年の更生を図る事業に取り組んでいた。 どこか現実離れしたキャリイに、理想家のルイス、キャリイの娘ミルドレッド、キャリイの幼女だ

ミス・マープル長編09『カリブ海の秘密』The Caribbean Mystery(1964)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 永井 淳訳『カリブ海の秘密』早川書房, 1977 あらすじ 少し前まで肺炎を患っていたマープルは、甥のレイモンドの後押しもあり、西インド諸島のサン・トレノにあるホテルに滞在していた。 ある日、宿泊客の一人であるパルグレイヴ少佐がマープル相手に殺人の話をしていると、マープルの後方を気にしてから殺人犯が写っているという写真を慌ててしまった。翌日、少佐が急死していまい、病死として処理される。 不審に思ったマープルが独自に捜査を開始すると、少佐が持っていた写

アガサ・クリスティー『茶色の服の男』The Man in the Brown Suit(1924)+殺しのブラウン・スーツ(1989)紹介と感想

アガサ・クリスティー 深町眞理子訳『茶色の服の男』早川書房, 2020 今回は、購入以来読めていなかったハヤカワ・ジュニア・ミステリ版で再読しました。 あらすじ 冒険に憧れていたアン・ベディングフェルドは、父親が死んだことを機に、僅かな遺産を持ってロンドンへと出て来た。 ある日のこと、アンは地下鉄のホームから男が落ちて死んだ現場に遭遇し、その死体に近寄った茶色の服の男が落としたメモを拾う。 その後、二人の男はサー・ユースタス・ペドラーの持ち家であるミル・ハウスで起こった

アガサ・クリスティー『パーカー・パインの事件簿』紹介と再読感想

アガサ・クリスティ 山田順子訳『パーカー・パインの事件簿【新訳版】』東京創元社, 2021 アガサ・クリスティー・アワーを再見したため、シリーズ内でドラマ化されたパーカー・パインも再読しました。 また、パーカー・パインは個別短編集の他に2編の短編があり、早川書房では『パーカー・パイン登場』と『黄色いアイリス』に分かれて収録されています。 東京創元社の『パーカー・パインの事件簿【新訳版】』では、この別に収録されていた2編も合わせて1冊に納めておりクリスティーによる前書きもあ

アガサ・クリスティー/中村妙子・訳『暗い抱擁 The Rose and the Yew Tree』(1947)再読感想

アガサ・クリスティー/中村妙子・訳『暗い抱擁』早川書房, 1974 あらすじ 現代の聖人・クレメントおやじ、本名をジョン・ゲイブリエルと言う。 ひょんなことからヒューは、ゲイブリエルと再会する。 これは、ヒュー・ノリーズが回想する、聖人と呼ばれる前のジョン・ゲイブリエルと過ごした日々の記録である。物語は、再会したゲイブリエルが、最後に発したひとことへ向けて進んでいく。 交通事故で半身不随になったヒューは、兄夫婦とコーンワルにあるセント・ルーへ越してきた。 姉・テレサの影

アガサ・クリスティー『娘は娘』A Daughter's a Daughter(1952)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 中村妙子訳『娘は娘』早川書房, 1973 メアリ・ウェストマコット名義の第5作目にあたる作品になります。好きな長篇ですがしばらく再読していなかったので、久しぶりに読みました。 あらすじ アンとセアラの母娘は、お互いを大切に思いながら暮らしていた。 ある時、セアラが3週間のスキー旅行へ出掛けた際に、アンはリチャードと出会い恋をした。 2人は幸せな時を過ごし結婚を考えるようになったが、セアラが帰ってきたことで全ては変わってしまった。 セアラとリチャード