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アガサクリスティーについて

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#小説感想

アガサ・クリスティー『茶色の服の男』The Man in the Brown Suit(1924)+殺しのブラウン・スーツ(1989)紹介と感想

アガサ・クリスティー 深町眞理子訳『茶色の服の男』早川書房, 2020 今回は、購入以来読めていなかったハヤカワ・ジュニア・ミステリ版で再読しました。 あらすじ 冒険に憧れていたアン・ベディングフェルドは、父親が死んだことを機に、僅かな遺産を持ってロンドンへと出て来た。 ある日のこと、アンは地下鉄のホームから男が落ちて死んだ現場に遭遇し、その死体に近寄った茶色の服の男が落としたメモを拾う。 その後、二人の男はサー・ユースタス・ペドラーの持ち家であるミル・ハウスで起こった

アガサ・クリスティー『パーカー・パインの事件簿』紹介と再読感想

アガサ・クリスティ 山田順子訳『パーカー・パインの事件簿【新訳版】』東京創元社, 2021 アガサ・クリスティー・アワーを再見したため、シリーズ内でドラマ化されたパーカー・パインも再読しました。 また、パーカー・パインは個別短編集の他に2編の短編があり、早川書房では『パーカー・パイン登場』と『黄色いアイリス』に分かれて収録されています。 東京創元社の『パーカー・パインの事件簿【新訳版】』では、この別に収録されていた2編も合わせて1冊に納めておりクリスティーによる前書きもあ

アガサ・クリスティー/中村妙子・訳『暗い抱擁 The Rose and the Yew Tree』(1947)再読感想

アガサ・クリスティー/中村妙子・訳『暗い抱擁』早川書房, 1974 あらすじ 現代の聖人・クレメントおやじ、本名をジョン・ゲイブリエルと言う。 ひょんなことからヒューは、ゲイブリエルと再会する。 これは、ヒュー・ノリーズが回想する、聖人と呼ばれる前のジョン・ゲイブリエルと過ごした日々の記録である。物語は、再会したゲイブリエルが、最後に発したひとことへ向けて進んでいく。 交通事故で半身不随になったヒューは、兄夫婦とコーンワルにあるセント・ルーへ越してきた。 姉・テレサの影

アガサ・クリスティー『娘は娘』A Daughter's a Daughter(1952)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 中村妙子訳『娘は娘』早川書房, 1973 メアリ・ウェストマコット名義の第5作目にあたる作品になります。好きな長篇ですがしばらく再読していなかったので、久しぶりに読みました。 あらすじ アンとセアラの母娘は、お互いを大切に思いながら暮らしていた。 ある時、セアラが3週間のスキー旅行へ出掛けた際に、アンはリチャードと出会い恋をした。 2人は幸せな時を過ごし結婚を考えるようになったが、セアラが帰ってきたことで全ては変わってしまった。 セアラとリチャード