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アガサクリスティーについて

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アガサ・クリスティー関係の記事をまとめています
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2024年3月の記事一覧

アガサ・クリスティー『殺人は容易だ Murder is easy』(1939)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー/高橋 豊 訳『殺人は容易だ』早川書房, 1978 『ゼロ時間へ』を再読した流れから、去年のBBC製作クリスティー原作ミニドラマシリーズに選ばれた『殺人は容易だ』も、10数年ぶりに再読してみました。 あらすじ 植民地で警官をしていたルークは、引退してイギリスへ戻って来た。 友人の家へ行く途中の列車で同席したピンカートンという老婦人から、ウイッチウッド・アンダー・アッシュと言う小さな町で3人の人間が殺され、近く4人目が殺されそうなのでロンドン警視庁へ行

アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ Towards Zero』(1944)紹介&再読感想

アガサ・クリスティー/田村隆一訳『ゼロ時間へ』早川書房, 1976 BBC製作のクリスティー原作ミニドラマシリーズの次作が『ゼロ時間へ』だと発表され、最近読んだ『殺人は容易ではない アガサ・クリスティーの法科学』の著者が好きだと言っていたのもあり、10数年ぶりに再読しました。 あらすじ 著名な弁護士であるトリーヴス氏は常々、「殺人というものは終局であり、ゼロ時間の一点に集中されている」と考えていた。 1月、マクハーターという男が自殺に失敗し病院に入院していた。 2月、一

『ゼロ時間へ』戯曲・漫画 紹介と感想

クリスティー原作の中でもメディアミックス展開されている媒体が多い作品の一つが『ゼロ時間へ』になります。BBC製作のミニシリーズで制作も予定されているため、一度整理したいと思いました。 今回は、戯曲版と漫画版を紹介します。 戯曲『ゼロ時間へ Towards Zero』(1956)  脚色:ジェラルド・ヴァーナー  初稿:アガサ・クリスティー(1944) ガルズ・ポイントの客間のみで展開される物語は、何人かの役割や性格が原作から変更されています。また、マクハーターは省略され

『ゼロ時間へ』映画・ドラマ 紹介と感想

クリスティー原作の中でもメディアミックス展開されている媒体が多い作品の一つが『ゼロ時間へ』になります。BBC製作のミニシリーズで制作も予定されているため、一度整理したいと思いました。 今回は、映画とドラマを紹介します。 映画『ゼロ時間の謎 L'Heure zéro』(2007/仏/108分)  監督:パスカル・トマ  脚本:フランソワ・カヴィグリオリ 物語は原作と同じくトリーヴス弁護士がゼロ時間の考えを語る所から始まりますが、この場にバタイユ警視(原作のバトル警視)が居

アガサ・クリスティー『忘られぬ死』(1945)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー  中村能三訳『忘られぬ死 Sparkling Cyanide』早川書房, 2012(電子書籍) 個人的に、BBCミニシリーズでドラマ化して欲しい作品で上位に来る原作を、久しぶりに再読しました。 あらすじ 自身の誕生日パーティーの最中に青酸カリを飲んで死んだローズマリー・バートン。その死は、自殺として処理された。 それから1年が経ったが、妹のアイリス、夫のジョージ、ジョージの秘書であるルース、ローズマリーの不倫相手だったスティーヴン、スティーヴンの妻