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共生社会はわくわく交差点

「多様な人たちが共生できる社会ってどんな社会だろう?」

最近、そんな問いについて考える機会がありました。巨視的な視点で言えば、今日は世界的に人の移動が昔よりも簡単になり(今はコロナウィルスで人の移動は1部制限されていますが)、科学の分野で様々な専門分野を超えた研究が進んでおり、さらにはインターネットを始めとするコンピューター技術の向上により、ますます多様な人々が出会う場が増加していることが背景にあります。

身近な視点で言えば、私は日頃、様々な文化的背景を持った子供たちと小学校で接していますし、オンラインでは、Zoomなどのツールを使って様々な方々と交流する機会が増えているので、冒頭の問いに向き合う機会が増えたと言ったら良いでしょうか。「多文化チームで共創について考える」イベントに参加したのも、大変大きなきっかけになりました。

「共生」をとらえる上で、私は人類の歴史の中でルネッサンスがその最高の形の1つを示しているように思うのです。ご存知のように、ルネッサンスは文化や科学や芸術が創造的に開花した時代であり、私は、ルネッサンスが私たちに1つの視座を与えてくれているように思うのです。

その中で、1つのキーワードは「交差点」だと思うのです。それは、そのものズバリ「アイディアは交差点から生まれる」と言う本に書かれているように、私たちが創造性を発揮させて人生をより豊かにしていくためには、多様性が出会う「交差点」が必要だと言うことです。

「ルネッサンス時代には芸術家や科学者、商人がこぞって交差点に踏み込み、芸術、文化、科学が一気に花開く、ヨーロッパ史上稀にみるクリエイティブな時代をつくりあげた」(フランス•ヨハンソン著「アイディアは交差点から生まれる」CCCメディアハウス)

オーストラリアはよく多文化社会と言われますが、その実態は「棲み分け社会」であり、それぞれの文化が別個に独立して距離を置いて存在しており、共に影響しあって新しいアイディアや文化や科学を生み出す点においては弱いのではないかと言う指摘があります。もちろん、様々な文化を交流させるための「多文化フェスティバル」みたいな催し物はよく見られますが、しかしよく見ると、それぞれの文化が個別のブースに収まっており、観客がそれぞれの別個のブースに訪れて、一つ一つの文化を楽しむような構造になっており、文化同士が融合したり統合したり、するような視点は弱いように感じます。

オーストラリアの学校においても、すべての学校において小学校から外国語教育が行われていますが、やはり、自分たちの文化や言語とは違うものを学ぶというスタンスで、両者が融合するような視点は弱いように思うのです。

もちろん、それぞれの文化を継承し守り伝えることにも重要な意味がありますし、それ自体を否定するつもりはありません。しかし、ルネッサンスが示しているように、せっかく多様な文化や価値観が同じ空間に存在しているのに、言い換えれば、新しい価値観や考え方や文化や科学が創造される条件が整っているのに、相変わらず棲み分けの発想のみでいたらもったいないと思うわけです。

私の勤務する学校では、日本からの生徒たちを年間何度も受け入れたりしていますが、その際に、日本文化を楽しむ時間と、オーストラリア文化を楽しむ時間がありますが、可能な限り文化の枠組みにとらわれない時間も設けようとしています。

例えば、ワールドカフェを開いて、理想の学校とか、理想のお弁当箱とかについてアイデアを出し合って、独特な学校やお弁当箱が誕生したこともありました。また、以前大流行したPPAPを応用して、日本とオーストラリアの文化を融合したら何が生まれるかと言うコンテストをやったことがありました。

しかし、こうした取り組みの限界性は、日本から多くの時間とエネルギーとお金を使って行われる交流であり、一生に1度の出会いと言う性格が非常に強いと言うことです。一回だけの機会で私たちが新しく何かを創造することには限界性があるのです。

ルネッサンスの「交差点」は、何度も何度も多様な人々が交わったからこそ、そこに新たな文化や科学や芸術が花開いたんだと思います。だから、共生社会には、継続性が欠かせないと思います。ちなみに、あるリサーチでは、初対面の人と友達の関係になるためには、最低「2週間に1度会う必要がある」というデータがあるそうです。

しかし、今日私たちはラッキーなことに、時間と空間を超えて、まるでドラえもんの「どこでもドア」のように日常的に手のひらから交流できるZoom等のコミニケーションツールがあります。つまり環境的には、継続的に多様な人々が出会う「交差点」が私たちの目の前に毎日あるわけです。

私は、この「交差点」から新しいルネッサンスが生まれるのではないかとワクワクしているのです。だから、共生社会とは、ワクワク交差点だと思うのです。

オーストラリアより愛と感謝を込めて。
野中恒宏

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