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推しに惚れ直す -「ハネムーン・イン・ベガス」を観劇して-

ずっとミュージカルを観劇してみたいと思っていた。
元々ミュージカル映画が割と好きなので、ここ数年毎年作っている「今年やりたいことリスト100」には毎回「ミュージカル観劇」と書いていたのだけど、知識がなくて何を見ていいのかわからず、実際に観劇をすることは叶わなかった。

2024年のやりたいことリストを作り始めようとしていた昨年末、推しであるHey!Say!JUMPの伊野尾くんが9年ぶりに舞台に出演するというニュースが舞い込んできた。しかも、初めてのミュージカルだというではないか!
ブロードウェイミュージカル「ハネムーン・イン・ベガス」。願ったり叶ったりである。初めて見るミュージカルの主演が推しなんて、最高ではないか。このために今まで観劇する機会がなかったのかもしれない。

チケット代は14000円と思ったより高額だったので一瞬ひるんだものの、申し込みをした。常日頃、身の丈に合った推し活を心がけているので、1公演のみ申し込んで、無事当選した。Xでは倍率が結構高かったのではないかと言われていたので、やっぱり私はチケット運がある(いつも平日の公演に申し込んでいるからかもしれないけど)。


4月11日、昼の部を観劇した。
会場は池袋にある東京建物ブリリアホール。新しそうなきれいなホールだ。
会場の周りには伊野尾くんのメンバーカラーである青い服を着た女性がちらほらいて、浮かれ気分で青いニットを着て行った私は勝手に仲間意識を感じていた。

座席は、事前にウェブサイトの座席表を見て端のほうだとわかっている。HSP(繊細な人)の気質がある私はさまざまな刺激に弱いので、端ぐらいがちょうどいいと思っていたのだけど、K列、思っていたよりステージが近い。舞台上の表情も肉眼(とは言ってもメガネはかけているけど)で確認できそうな近さで少し緊張してしまう。


舞台が開演した。
生バンドの演奏がある舞台は初めてで、オープニングの演奏のアップテンポなリズムに合わせてワクワクする気持ちがどんどん高まってゆくのが分かる。

伊野尾くん演じるジャックの歌からストーリーは始まる。
歌も踊りもこれぞミュージカル! って感じで感激していたが、さっそくミュージカル映画とミュージカルの舞台の違いを思い知る。歌詞の字幕がないのだ。
当たり前なのだけど、字幕がないので、歌詞を一語一句聞き逃すまいと集中して聞く。歌っている演者のほうも、はっきりと発語する必要があるのかなと思う。ただ上手く歌えばいいってもんじゃなさそうだ。

結婚をめぐる話なので、結婚したいと思っているけど具体的に予定は決まっていない私にはなかなかしんどい場面もあり、物語序盤、ベッツィ(主人公の恋人)の「幸せになることを先送りにはできない」というセリフをもろに食らってしまって、思わずヒェ~~~と白目をむきそうになったが、冷静に考えれば私とベッツィは全く状況が違う。ベッツィは子どもを欲しがっているけど私はそうじゃないし、ベッツィは学校の先生だけど私は無職、ベッツィは歌がめちゃくちゃうまいけど私はカラオケで90点台が出るだけで大喜びするレベル……。自分を落ち着かせるために内容そっちのけでそんなことを考えていた。

かつて「笑っていいとも!」で度々タモリさんがミュージカルが苦手だと話していたことを思い出したりもした。
突然歌い始める非日常さに加えて、ブロードウェイミュージカルなのでアメリカンなノリも苦手な人はいるだろうなと思う。私は、十代のころにアメリカの映画をたくさん見ていたおかげで多少免疫ができているのか、一応ついていけた。それでも、ときどき我に返るような、ハマりきれないような瞬間もある。楽しんでいるのだけどね。

舞台は演者さんが自らセットを移動させたり、脇役の方々がひとりで何役もこなしていたり、テレビドラマや映画とは違う限られて状況でのやりくりを見るのが楽しい。
とてもよく考えられていて、面白いし、効率が良くて気持ちよさを感じる。生演奏も、バンドの姿が見えないシーンでは生だと忘れてしまうほどの安定感。さすがプロフェッショナルである。

その演奏に合わせて歌う伊野尾くんの歌はJUMPのときとは少し違う感じがした。のびやかで、特に低音域の部分は「こんな声の出し方もできるんだね~」と感心。お歌のレッスンを頑張っているとのことだったので、その成果なのだろう。確実にこのミュージカルの経験が今後のJUMPとしての活動にも活きる予感がする。

歌だけでなく、演技もとても素敵だった。役に合っていると言われていたという話もうなずける。
頼りなくて、へなちょこだけど、かわいらしくて憎めない。そんなジャックは伊野尾くんにぴったりだ。私は声フェチで伊野尾くんの声が大好きなのだけど、あの何とも言えない、響きに甘さを感じる特徴的な声が憎めないへなちょこ感に拍車をかけている。
かわいらしさも存分に発揮されていて、何度もキュンキュンしてしまった。知ってたけど、やっぱり伊野尾くんはかわいい。

話は予想外の展開もあり、後半は特に笑えるポイントもあって楽しかった。
あっという間に楽しい時間は終わってしまう。
最後はジャックの成長と伊野尾くんのがんばりを感じて胸がいっぱいになり、泣き虫な私は涙がポロポロとあふれてきてしまった。ハッピーなラブコメディなのに涙が止まらなくて、こんな幸せな涙を流す経験はなかなかない。ありったけの気持ちを込めて拍手をした。

ただ、テンションが上がってしまっていたせいか、最後のキスシーンのときに無意識で「いよっ!」という嫌なおじさんみたいな声が出ちゃったのは恥ずかしかった。これは老化現象なのだろうか……。

そんなこんなでスタンディングオベーションである。カンパニーの中心にいる伊野尾くんはさっきまでとは違って頼もしく見えて、そんな推しの姿がとても誇らしかった。
間違いなく、私は伊野尾くんに惚れ直した。


興奮冷めやらぬ中、会場をあとにする。
脳には海馬とか、前頭前野とか、様々な機能を持った部位があるけれど、推し活でしか活性化されない部位があるような気がする。難しいことはわからないからあくまで感覚の話なのだけど、推し活でしか得られない快感があって、心身がそれを経験してしまうとまた次を求めてしまい、推し活の沼にはまってゆく。それが最高に楽しいのだ。

帰宅後、今年のやりたいことリストの「伊野尾くんのミュージカルを観劇する」に打ち消し線を引いた。あかるい春の一日だった。


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