フランスのビザ・滞在許可証 : APSに代わり新設された「就職活動/起業滞在許可証(Carte de séjour-Recherche d'emploi/création d'entreprise)」

フランスで生活をするようになってから驚いたことの1つに、フランスのビザや滞在許可証に関する制度が頻繁に変わることがあります。これは、ビザや滞在許可証がフランスの入国管理政策と密接に関係しているため、政権交代や目まぐるしく変わる情勢の影響を受けるからだと思われます。そして、最近新たに変更されたビザが、学生ビザに関係のあるAPS というビザです。APSとは、マスター2修了者に付与される仮滞在許可(l'autorisation provisoire de séjour)で、ディプロム取得後、就職活動のために滞在が1年間延長できました。このAPSに代わり、2019年に新たに「就職活動/起業(RECHERCHE D'EMPLOI/ CRÉATION D'ENTREPRISE)」滞在許可証が設けられました。この新しい滞在許可証も、マスター2ディプロム取得者に対し、1年間の滞在の猶予が与えられる点は変わりませんが、それ以外に、新たに職業リサンス(licence professionnelle)やフランスのマスターと同等の学位保持者、博士号取得者、研究者の滞在許可証保持者も対象に含まれるようになりました。研究者身分の滞在許可証の場合は、研究プロジェクトが完了している人が対象のようです。ちなみに、この滞在許可証も期間は1年間で更新不可ですので、他のステイタスへの変更(サラリエ、フリーランス等)を念頭に活動しなければなりません。

Vous êtes concerné si vous séjournez (ou avez séjourné) en France avec une carte de séjour étudiante avez obtenu une licence professionnelle, un Mastère Spécialisé, un Master of Science (labellisé par la conférence des grandes écoles) ou un autre diplôme au moins équivalent au master.

この就職活動/起業の滞在許可証の目新しい点は、フランスで該当するディプロムを取得してから4年間以内の外国人が新たに対象者になった点です。つまり、かつて学生身分の滞在許可証を所持していて、ディプロムを取得してフランスを出国していても、4年以内であれば、「就職活動/起業」身分の滞在許可証を申請できるようです。

フランスでディプロムを取得したばかりの場合の必要書類は、①パスポート、②期限が切れていない学生の滞在許可証、③出生証明書、④写真3枚、⑤マスターと同等のディプロム(申請時に用意できなくても、後日提出可)、⑥健康保険証、⑦取得学位と関連性のある分野での起業計画(起業が目的の場合)、⑧居住証明書(遡って3か月分)

Votre passeport (pages relatives à l'état civil, aux dates de validité et aux cachets d'entrée)
Carte de séjour étudiant (ou étudiant-programme mobilité) en cours de validité
Acte de naissance (copie intégrale ou extrait avec filiation)
3 photos
Diplôme obtenu dans l'année au moins équivalent au grade de master (vous pouvez le présenter plus tard, mais dans ce cas vous devez présenter une attestation de réussite du jury)
Justificatif d'assurance maladie
Justificatif d'un projet de création d'entreprise dans un domaine correspondant à votre formation (si c'est votre objectif)
Justificatif de domicile datant de moins de 3 mois

フランスでディプロムを取得した後、海外に出国している場合の必要書類は、①パスポート、②出生証明書、③写真3枚、④申請時から遡って4年以内に取得したマスター以上のディプロム、⑤ディプロム取得時の学生身分の滞在許可証所持の証明書、⑥滞在期間をカバーする健康保険、⑦必要を満たすに十分な収入、⑧取得学位と関連性のある起業計画(起業が目的の場合)、⑨居住証明書(遡って3か月分)

Votre passeport (pages relatives à l'état civil, aux dates de validité et aux cachets d'entrée)
Acte de naissance (copie intégrale ou extrait avec filiation)
3 photos
Diplôme au moins équivalent au grade de master obtenu dans les 4 ans précédant la demande
Justificatif que vous aviez la carte de séjour étudiant (ou étudiant-programme mobilité) lors de l'obtention du diplôme
Justificatif d'assurance maladie couvrant la durée du séjour
Justificatif de de ressources suffisantes pour subvenir à vos besoins
Justificatif d'un projet de création d'entreprise dans un domaine correspondant à votre formation (si c'est votre objectif)
Justificatif de domicile datant de moins de 3 mois

マスター等のディプロム取得者ではない研究者身分の場合の提出書類は、学生身分の滞在許可証の代わりに研究者身分の滞在許可証と、ディプロム取得の証明書の代わりに受け入れ機関による研究完了を確認する証明書になります。

この滞在許可証、まだ新設されたばかりなので、実際の取得状況の情報はあまりなく、法的には出国していても取得可能となっていますが、実際のところどうなのかはよく分かっていません。また、注意しなければならない点としては、取得したディプロムと全く関連性のない会社や仕事の場合、滞在許可が下りない可能性があるということです。どこまでを取得した学位と関連性があるとみるか否かの判断に関しては、具体的な指標も説明もありませんので、恐らくケースバイケースになるのでしょうか。。。この新しい滞在許可証の設置には、海外の高度人材や外国人起業家を呼び込みたい、というマクロン政権の意向が反映されているようにも思えます。いずれにしても、フランスの高等教育の学位保持者に対しては、より広く門戸を開いた滞在許可証のような気がします。



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