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幸せとは

『ねえ、カナ。幸せってなんだと思う?』

学校帰りにふたりで寄る、馴染みの喫茶店。
ミホはいつも、私にいろんな疑問を投げかけてくれる。

世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。

今日もちょっぴり難問みたい。けどそれが最高に嬉しい瞬間でもあるの。

『幸せかー。私はね、幸せって・・・幸せであることだと思うな』

『えー?なにそれ?意味深だね』

ミホの嬉しそうな笑顔を見てると、いつも私まで嬉しくなる。だから、私は右手を上げながら張りきってこう答えた。

『説明します。幸せって結果じゃないと思うの。まわりの出来事から幸せを感じたり、何かを達成して幸せを感じるのだってぜんぜんアリなんだけど、結果が起こる前に幸せであることが幸せだと思うの』

『あー。それって、幸せは、なるものではなく、気づくものってことだよね?』

『そうそう。それに近いと思うんだけど、私は、幸せであるってのがしっくりくるんだ。気づくってさ、今ある幸せとか、実はこれは幸せだったんだーって気がつくって感じでしょ。それも大切だと思うけど、人は何もないところから幸せであると感じる力があると思うんだよね』

『えー!何もなくても幸せを感じるの? カナ、何気にヘンテコ発言してない?』

ヘンテコ発言。それはミホが私の言葉に驚いてるときに出る単語だけど、私はそれをミホが喜んでくれてると思ってる。だって、そう話すときのミホはいつも嬉しそうに笑うんだもの。

『ははは。たしかにヘンテコだよね。これね、別の言い方をすれば先に幸せになってみるってことなの。幸せであれば、どんな心でいて、どんな顔をして、どんな言葉を話し、どう振る舞うか。自分が先に幸せであれば、まわりも幸せになっていくと思うのよね』

『あー。それって幸せが先か、卵が先かってやつだよね。でも、先に幸せであるって超高度じゃない?まわりの出来事次第で幸せが変わると思ってたらきっとダメだね。自分の中の愛と向き合うって感じかな』

『わぁ。自分の中の愛と向き合うってすごくいいね。私の場合は自分の心の中のちっちゃくてあたたかい所から幸せを取り出すイメージなの』

手を胸のあたりに当てながら、そう話す私にミホはこう言った。

『えー。カナの心のあったかいところは、そんな小さくなんかないよ。だって、私はいつも幸せをもらってるもの』

意外な言葉に私はあわてて両手を振った。

『ミホー。何言ってんの? 私の方がいつもミホから幸せをもらっているよ』

『だったらお互いさまだね。嬉しいな。それにミホのおかげで、たとえ悲しいときだって幸せになれる秘訣がわかった気がするよ』

ミホはほんとに嬉しそうに笑ってる。もちろん私も嬉しい。

『うん。人は自分の中の愛と向き合うことでいつでも幸せになれる。これは、ミホと私でつくった新しい名言だね』

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