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お月さまと話してみよう♪

『ねえ、カナ。お月さまに話かけたことってある?』

学校帰りにふたりで寄る、馴染みの喫茶店。
ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれる。

世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。

『お月さまに?  話しかけたことはないけど、夜空を眺めるのは大好きだよ』

私は、どうしてそんなこと聞くの?とは聞かない。だって、前置きなんていらないこの会話が大好きだから。わかっているから。

ミホは何かを見つけた子どものようにとても生き生きとした笑顔で話してくれるから、こっちまで楽しい気持ちになれるのよね。

『そうそう、カナはお月さま好きでしょ。最近の私のブームはね、お月さまと話をすることなの』

『え。それって。会話してるってこと?』

『あー。カナ、信じてないでしょ?』

『そんなこと、ない、ない。けど正直、会話なんてできるのかなって思ったかな』

私は笑いながらも正直にそう答えた。

『だよねー。でもさ、カナも大切にしているモノに話しかけることってない? ほら、ずーと使ってるペンとか、本とか、あー、あと植物とかさー』

『あーそれだったら、お花に水をあげるときに、大きくなあれって話かけることはあるよ』

『でしょ、でしょ』

『でも。会話じゃなくて一方的に話かけてるだけ。もしかしてミホは、お花が何を言ってるか、わかるってこと?』

『話しかけた後にね。なんて言ってくれてるのか、空想するのがコツなの』

『 自分で空想しちゃうの? それって勝手に想像してるってこと?』

『うん。でもね。ただの空想じゃなくて、わかるのよ。これね、カナもできるよ』

『えー。そうかな。でも、何かを言ってくれてるかもしれないなんて考えたことなかったから、感じようとするって大切かもしれないね』

『うん。大きな木に直接手をあてて会話するのもオススメだよ。心の耳を澄ませば伝わってくる感覚がすごく心地いいんだから。ねえ、今度ふたりで一緒にやってみようよ』

『いいねー。じゃあ今から公園に行こう。善は急げだよ』

『わぁー。カナ、ありがとう。大好き』

女子高生二人が公園の木に話しかけてる姿を想像した私は、きっと不気味だろうなーって思いながらも、楽しみで仕方なかった。

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