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世界は鏡

『ねえ、カナ。世界は自分を映す鏡って言葉聞いたことない?』

『あるある。でもイマイチどういうことかピンと来ないんだよね』

『だよね。でも私ね、少しだけ意味がわかった気がするんだ』

ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれるの。世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。

『へー。どういうこと?』

『まず、見た目を映す鏡じゃないってのは当然だとして、自分の心を映す鏡だとしても、こんなこと望んでないってことが、目の前にいろいろ現れるでしょ』

『そうそう。私の心は争いなんて望んでないのに世界で争いは起こっちゃうし、心は晴れてても雨は降るし、おまけにめっちゃハンバーグが食べたくても夜ご飯はカレーライスだったりするよね』

『ははは、そうそう、私も最初そんな風に思ってたんだけど、目の前に何が現れるかはぜんぜん関係なかったんだ』

『え?そうなの?』

『うん。ひと言で言うと、世界がどんな姿を見せるかじゃなくて、私が世界をどんな目で見ているかってことだったの』

『うーん。ちょっとまって。もう少しわかりやすく教えてくれる?』

『うん。例えば、私とカナがおんなじ星を見るとするでしょ。星を見てどう感じるか、どう見えるか、それがそれぞれの心を映してるってことなの。雨を見て、喜びと見るか、憂鬱と見るか。つまりその人にとって、世界がどう見えているかってことなの』

『へー。そっかー。じゃあ、星が美しく見えるのは、私の心が星をそんな風に見ているってことなんだね。そして、キライな人が、目の前に表れるのは、その人をキライだと思う私の心がそこにあるってことなのね』

『そうそう。世界がどう見えているか、それが私たちの心を映しだしているんだと思うの。まあ、だからって、そう簡単に心を変えれるものじゃないけどさ、ちがう心で見てみようって思うことはできると思うの』

『そーだねー。星も、雨も、キライな人も、私の心が変われば、世界も変わるかもしれない、そういうことだね』

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