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コント台本『実況婚』

田所悟(男)
33歳サッカー実況者。サッカー経験は無いがウイイレで手に入れたサッカー知識を武器に実況者として活躍中。付き合った彼女に対して年々横柄になっていくタイプ。

小林(女)
31歳アナウンサー。アナウンサーという職業に憧れはなかったがたまたまなれたのでやっている。ゆくゆくは化粧品をプロデュースしたり写真集を出したりしたい。家で一人で泣くタイプ。

添野(男)
30歳サッカー解説者。昔Jリーグでサッカーをしていたが泣かず飛ばずの成績で引退。その後指導者をしたり解説をしたりして生計をたてている。友達に「お金返して」と言えないタイプ。

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右から田所、添野、小林の順で座っている

田所「さぁ!今キックオフです!とうとう始まりました。全国高校サッカー選手権大会決勝、赤川高校対緑山高校の試合です!実況を勤めますのは私田所。そして解説には添野さんをお招きしております。よろしくお願いいたします。」

添野「よろしくお願いしまーす。」

小林「アナウンサーの小林です。」

田所「いやぁ、楽しみな試合ですね!」

添野「そうですね。赤川高校は超攻撃的なチーム、一方緑山高校はまだ今大会で一点の失点も許していませんからねぇ。見物です。」

田所「さぁ赤川高校、得意の細かいパスを繋いでいくぅ!」

小林「そんな赤川高校の情報が入ってきています!

田所「ほぉ。」

小林「実は赤川高校、毎朝学校の裏にある山で山道ランニングしているそうです。」

田所「それは凄いですねぇ。」

小林「はい、そのトレーニングが走り負けない体力を…」

田所「(小林にかぶせて)おおおーっと!シュート!ゴォーーーーール!!決まったぁぁぁぁ!赤川高校先制点!」

小林、ムッとしている

添野「いやぁ、素晴らしいシュートでしたねぇ。」

小林「(ボソッと)今私喋ってたじゃん…。」

添野「え?」

田所「えーと、(小林に向かって)赤川高校は毎朝山道ランニングをしているとの事でしたが?」

小林「(少し面白くなさそうに)はい…、毎朝学校の裏にある山で山道ランニングをしてそれが…」

田所「(小林にかぶせて)おおっと?!これは…レッドカード、緑山高校キャプテン一発退場だ!!」

添野「少し危険なプレイでしたかねぇ。ここでキャプテンを失うのは緑山高校にとって痛いですねぇ。」

田所「そうですねぇ。それで小林さん、赤川高校は毎朝山道ランニングをしているそうで?」

小林「もういい。」

添野「え?」

小林「さっきから私の話最後まで全然聞いてくれないじゃん!」

田所、また始まったよの顔

添野「いやいや実況だから、試合が動いたら話切ってでも実況しなきゃいけないのよ。(笑)」

小林「最近ずっとそうだよね。」

添野「え?ずっと?」

田所「おい今仕事中だろ。その話は家帰ったら聞くから。」

添野「あ、二人付き合って…んの…?」

小林「家でも全然聞いてくれないじゃん!私が仕事で悩んでる時だって私の話なんて全然聞かずにゲーム実況ばっかりして。」

田所、うんざりした顔で試合の方を見ている

添野「仕事でサッカー実況して家ではゲーム実況してんの?すごいね。(笑)」

小林「それに昨日だって!」

田所「おおっと!赤川高校ゴォーーーール!!だめ押しの二点目!!」

小林「(田所に掴みかかって)ねぇ!いい加減にしてよ!!」

添野「おいおいおいおい、ちょっ、いや、試合中…。あと、(小林のマイクを指差しながら)一応その声もテレビに流れちゃってるのよ…?」

田所「離せよ!実況者が実況して何が悪いんだよ!」

添野「うん、ごもっともよ。(笑)」

小林「ねぇ、今日なんの日か覚えてる…?」

添野「え?」

田所「…。」

小林「今日!二人が付き合って5年記念日だよ?毎年記念日は二人で旅行行ってたのに…。今年は『仕事入ったから。』って…旅行も行ってくれないじゃん。だからせめて一緒に居られる様にってこの試合のアナウンサー引き受けたのに…。」

添野「公私混同が凄まじいですね。」

小林「そんなに仕事が大切?そんなに実況が大事?私と実況、どっちが大事なのよ!」

添野「それこそ家でやろう。」

田所「…お前が大事に決まってんだろ!!」

添野「家でやろって。(笑)」

小林「さとる…。」

添野「さとる…じゃなくてね。(笑)」

田所「お前が大事で俺、お前と結婚したいと思ってる。」

小林「へっ…?!(涙ぐみだす)」

添野「なになになに、何が始まってんの?いやいや、ほら試合動いてるから!ほら!シュート!わぁ!ゴール!!ねぇ!ほら!ゴール決まったって!ねぇ!」

田所と小林、添野を無視して見つめあってる

田所「お前と結婚したくて、それでちゃんとした指輪買ってやりたくて、仕事して仕事して必死にお金貯めてたんだ。寂しい思いさせてごめん。」

小林「そうだったんだ…。私こそそうとは知らずにごめんね。」

添野、諦めた感じで暇そうにしている

田所「もう実況なんて良い!今からでも遅くない!記念日の旅行行こう!!今年から…結婚記念日だけどっ。」

小林「さとるぅ…。」

田所と小林、手を繋いで出ていく

添野「(一人ポツンと取り残されて)えー、実況田所さん。素晴らしいゴールを決められたようです。」


おしまい

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