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年の瀬に

京都へ移住して、二ヶ月。来た頃にうっすら色づき始めた紅葉ももう終盤。東京で暮らしていた時よりも、冬の寒さは厳しい気がする。

友人と移住を考えはじめたのはコロナ禍に入ってすぐのことだったので、2年が経過していた。着実に準備を進めてきたはずだったが、実際住んでみるといろんな問題が起こる。想像できなかった事態に困惑したり、歓喜したり。感情も大忙しの年末。

先月はイベントで東京に一週間ほど出張していた。友人も入れ違いで出張が続いたので12月に入ってやっと、共同で借りたアトリエが機能し始めた。引っ越してからすぐ、謎のアレルギー反応が出て体調を崩し(友人も)、せっかく借りたアトリエで作業できない日々が続いた。長年人が住んでいなかったため、いろんな菌がいたっぽい。空気清浄機を設置したり、こまめに掃除と除菌をしたりして、なんとか反応が出なくなった。

アトリエの家具は私が仕事用に使用していたものだけで、まだほとんど何にもない状態。椅子だけは長く使うものだし、いいものを買おうってことで、引っ越し前からショールームをまわって色々試した。選んだのはITOKI のオフィスチェア vertebra。

機能性はもちろん大事だけど、私と友人の共通のもの選びの基準は、気分を上げてくれるもの。座り心地も良くて作業も捗る。いい買い物をしたと思う。

友人とは今ままでいろんな国や、国内を旅してきた。これから行く旅では、旅先で出会った素敵なものをアトリエに少しずつ集めていきたい。どんなものが集まって味になっていくのかとても楽しみ。

毎朝7時に起きて、ご飯を食べる。30分のんびり歩いてアトリエへ向かう。朝の散歩は気持ちよくて、京都の街並みは目を楽しませてくれる。アトリエに着いたら、掃除をしてコーヒーを淹れて、仕事を開始。
一時間後には友人が来て、隣に座って仕事を始める。好きなラジオや音楽を聴きながら、たまにツッコんだり、談笑したり、歌ったりしながら。

お昼は、アトリエで作って食べる。忙しい日は外食。昼寝して、17時までには仕事を終わらせる。その後は陶芸したり、絵を描いたり、それぞれの創作の時間。21時でアトリエは閉めるので、友人と散歩しながらそれぞれの家へ帰宅。帰宅後は本を読んだりお笑い見たりして、軽く晩酌して就寝。家では仕事のこと、創作のことはなるべく考えない。

普通の生活に聞こえるかもしれないけれど、自分にとっては180度生活が変わった。フリーランスになってからは、オンオフがなくてずっと何か抱えていた気がする。仕事のこと、創作のこと、お金のこと。

仕事を辞めて、好きなことだけして暮らしたいと思っていた。挑戦してきたことがたくさんある。報われない時代が長すぎて、努力が自分の正義となり、いつの間にか休むことがストレスになっていた。手を動かしたという事実が安心に変わる。健康なことだと思ってたけどそうでもなくて、サボってる人を見てると苛立つし、何もできなかった日は時間を無駄にしてしまった後悔に苛まれた。文章にすると嫌な奴だな。不健康なことだった。

ここ数年はそのコントロールができてきた方だと思ってたけど、仕事をする部屋と寝る部屋は同じだったので、朝起きると目の前が仕事と創作の場で、何時まででも納得いくまで手を止められなくなる。気づけばつくったり描いたりする事以外に、自分を満たしてくれるものってあまり思いつかなくて、推しのためにお金を使ったり、遠征したり、趣味を満喫している人達が羨ましく思えた。

推しとの運命の出会いも期待しつつ、新しい趣味を小さく探している。
先日は近くの比叡山に登ってみた。

山頂の澄んだ空気の中で食べたお弁当と、ホットワインが美味しくて(どっちかというと登山よりこれ目的)、気持ちよかった。季節ごとの山の植物の観察とか楽しいかも。

ゆっくりでいいから、創作以外の時間に目を向けたい。その時間がきっと、自分の癒しになっていく気がする。

暮らしの拠点を二つ構えたことで、仕事と創作以外の「生活」が生まれた。何より大きいと感じるのは、同じ目線で話す相手がいること。会社員時代は、人間関係でストレスを抱えることの方が多かったが、友人は波長が同じ家族みたいな存在で、いい意味で空気のよう。気を遣うことが何もない。この部分が満たされることで、こんなに穏やかになれるのかと思った。SNSを全くやらない友人との毎日は、生きること本来の目の前のしあわせに気づかせてくれた。SNSにつぶやかなくても、わざわざ写真を撮らなくても、同じ時間を共有できるのが一番満たされる。そう感じてから、一気に生活がリアルになった。

今年は陶芸に集中してきたけど、気持ちが落ち着いてきてやっと絵が描けるようになってきた。平面を立体化するために置物を作り始めて、立体を作り続けたことで、絵の描き方も変化したように思う。どんな点もどこかの点に繋がっている。

今年の誕生日に、友人が日記帳をプレゼントしてくれた。日記帳を開いたら、誕生日の日にメッセージが記されていた。友人も同じ日記帳を買ったらしい。

この日から毎日日記をつけていて、今年最後の日にお互いの日記を交換しようってことになっている。最近読み返しているのだが、まあ怒ったり喜んだり悲しんだり。忙しくてタフな奴だった。目標なんてほとんど達成してないが。京都移住と、毎日の日記を書くことができたので十分かな。人生は旅のようで、たくさん歩く日も、ゆっくり歩く日も、休まなきゃいけない日もある。それに気づいた36歳の一年。

長年住んだ東京を離れて、馴染みがない京都ではじまった新しい日々。歳を重ねるたびに、出会いだけじゃなく、別れも多くなってきた。体力も衰え、白髪も増えてきたけれど、感情だけは豊かに育ち続ける。喜びから生まれるワクワクも、疑問から生まれる毒も溢れてくる。これが溢れてくる限り、自分の創作は続いていくだろう。

ここまできたかという思いと、まだここかという思いと。自分の人生は、隠せない泥臭さ全開で、きれいなものではない。でも、強い意志を持って続けてきた。どこまでも私は、愚直でいたい。

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