【桜井】作詞において大切にしていること

Mr.Childrenの桜井和寿さんが歌詞を書くときに大切にしていること、意識していることなどについて発言したことをいくつか取り上げてみたいと思います。

●「五感」を使うこと(2010)

桜井 「五感を使うことを大事に生活しているつもり。できるだけ作品の中にも五感を使って感じてもらえるものを書きたいと思ってますその方が、よりリアルに、臨場感を持って伝わるんじゃないかと思うからで。例えば、パンのことを書こうと思ったら、パン屋さんからいいにおいが匂ってくるような、そんな詞を書きたいと思います」

嗅覚について、パン屋さんから漂う匂いが例にあげられていますが、ミスチルの作品の中で、私が匂いが印象的なものとして、『水上バス』に登場する“石油の匂い”があります。
これは、桜井さんが実際に水上バスを見に行って、そこで石油の匂いがしていたのを作品に取り入れたんですよね。
綺麗なメロディに似つかわしくない匂いですが、ここに登場させることで、リアルさや日常感が出て来るんですよね。作品の中に登場する2人もわたしたちと同じ世界に生きている人物なんだっていう。

●「日常」があること(2015)

桜井 「理想としては日常があること リスナーたちと身近なテーマであることなんだけど、既成概念みたいなものをどこかで変えられる力を持った視点をいつも探している」

桜井さんは作品に「日常」を取り入れることを大事にしているようです。
ミスチルのメンバーはすごいので、彼らと私たちの共通点といいますか、接点と言いますか、そういうものはなかなか想像できないんですよね。
想像できないですけど、メンバーにもきっとわたしたちと同じ日常があって笑ったり、泣いたり、怒ったりしているのだと思います。
そういう部分をミスチルを通して、ミスチルの音楽が描く日常を通して、メンバーと共有し、共感し合えているというのは感じます。
メンバーだけではなく、リスナー同士も、音楽の中の日常を通して、共感し合えていますね。きっと。
「既成概念を壊す」というのは、リスナーが音楽を聴くことで、それまでの考えを変えてしまうようなインパクトを与えたいようです。

●「無意識な動作」について(2010年)

桜井 「歌詞を書く時にも、誰かが無意識にやる動作にすごく意味を持たせて表現することは多いです」

桜井さんは、たとえば誰かと食事をしている時に相手が急に視線を逸らしたり、手持ち無沙汰な動作をしたり、無意識にする行動に「つまらないのかな?」と怖さを感じるそうです。
無意識にする行動にこそ、その人の中にある本心が現れるのではないかということで、そういう無意識な行動に注目して歌詞に取り入れているようです。

●「ゆらぎ」について(2010年)

桜井 「揺らぎというのも大切にしてると思います。僕の中では。単純にハッピーな歌っていうのもなかなか作品の中にもないし、悲しいだけというのもないとおもいますね」

ミスチルの作品には感情がプラスに動いたり、マイナスに動いたりする感情の揺らぎが本当に良く描かれていると感じます。
その感情の揺らぎは自分も気づいていないものだったりして、「あの感情は、この歌に描かれているものだったかもしれない」と思うことがあります。
本当に微妙な感情のゆらぎを言葉で描くのが巧いですよね。

●他にも桜井さんの音楽制作論を書いています

▶︎【桜井】作詞について
▶︎【桜井】歌詞は心の奥深くにある思い ~主張やメッセージではない
▶︎桜井】アイディアノート
▶︎【桜井】詩や曲が生まれるシチュエーション
▶︎楽曲のアレンジ
▶︎【桜井】韻について語る ~GAKU-MC&佐野元春も評価
▶︎【桜井】ミスチルのリスナーを意識してる?

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