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『表と裏は、遠くて近い』 についての備忘録

話の枕に

こんにちは、諸星です。普段は絵を描いたり写真を撮ったりしているのですが、今回は文章を書いてみました。アイドルマスターシャイニーカラーズより、田中摩美々さんと三峰結華さんによる心理戦のお話です。カバー画像は昔描いた田中摩美々さんと三峰結華さんのファンアートで、今回の文章とは関わりがありません、が、お気に入りなので設定しました。

今回の記事の位置付け

時間が経ってからも今回の小話を書いたときの思考の足跡をトラックできるように、自分用のメモとして書き残しておきたいと思います。とはいえこんな工夫をしました、と語れるほどのことはなく、試行錯誤を重ねるために駆けずり回った畦道にフィーリングという曖昧なアプローチで残されたバラバラな轍を頭に浮かぶままにメモしているものなので、誰かのご参考になるものではないという点のみご容赦ください。

振り返り、自分用メモ

文章を書こうと思ったきっかけの話

先の木曜日に「まみきり合同打ち上げスペース」という催しがありました。眠くなって途中でドロップアウトしちゃったり、本自体をまだ半分くらいしか読めていなかったりと色々と不義理を働いてはいるのですが、こちらで普段目にしている作品の作者様方であり戦闘力の高い物書き諸氏が、作品を読んでどう感じたかとか、創るときにこういう工夫をしたという話をされていたのを聞いて目から何枚も鱗が落ちました。翌朝シャワーを浴びながら昨夜の刺激的インプットを反芻する中で、文章、チャレンジしてみたい……!という熱がちょっとだけ高まったのがきっかけでした。

ネタを求めて三千ミリ

文章を書くなら、自分の中では比較的動いてくれる三峰結華さんを中心に、せっかくだから絵でできないことで、見せたいこと、伝えたいこと、込めたいことがあるものを書きたいなぁと思ったので、有り体にいうとネタ探しを始めました。シャワーから出た直後、朝の自宅で。そこで目についたのがトイレットペーパーでした。最初は、トイレットペーパーを三角に折る/折らないという事象に目をつけまして、そこから透けて見える育ってきた文化の違いみたいなものを題材にできるんじゃないか、と思いました。

バスタオルは何回まで使い回すことを許容できるか、歯磨きの後に飲んでも許されるラインは何か、食器を洗うときはお水かお湯か、寝るときの楽な姿勢は何か、そんな生活の中に埋め込まれたその人の奥行きと、違いを感じ合うこと、みたいなものをテーマにお話を書いてみたいな!というのをスタート地点に据えてみるのでした。梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』という作品が好きなので、テーマ的にもそういう味わいを出せたら嬉しいのかも?とこの時点ではぼんやり考えていました。この時点では。

My point is "who?"

お話を書くとき、多分なんですが登場人物が誰かは非常に重要なんだと思います。普段お遊びで文章を書くときは独白にも近い語り口になりがちなので、今回はテーマの性質的にもきちんと人を登場させて、人と人の交わりで見えるものを書きたいな、と思った僕に突きつけられた最初の問題が誰を登場させるかでした。

僕の場合は頭の中で少しでも動いてくれるキャラクターが限られているのと、三峰結華さんを登場させるということが無意識の前提にあったので、三峰がトイレットペーパーを折る/折らないを話す相手、誰……?ってなりました。安直に考えたら生活習慣のすり合わせって共同生活を行う場合に特に重要だと感じるので、んー、プロデューサーと同棲とかが舞台設定としては最初に思いつきました。

ただ、自分がそういう世界線をアイドルマスターシャイニーカラーズの世界観においてはあまり生き生きと考えられない人間なのでその舞台設定では書きたくなくて(僕が書く必要もなくて)、んー、このアイデア、身近なPドルの物書きさんに使っても使わなくてもいいですって渡しちゃおうかなって思った瞬間がありました。

あーでもないこーでもない、という煩悶の中で、どっち派?というワードから連想されたのが、田中摩美々さんと三峰結華さんのホーム画面での掛け合いで行われる「高度な心理戦」でした。僕はこのやりとりがとっても大好きなので、今回のテーマを少し変えて、「所作に埋め込まれたその人の奥行きとその違い+高度な心理戦掛け合い」で書けるのではないか!というところにたどり着きました。

My point is "who?", ふたたび

高度な心理戦の掛け合いをキーフレーズにすること、所作に透けて見える人柄と差異をテーマにすることが決まったところで、ふたたび大きな問題にぶち当たりました。物語を展開させるにあたって、誰の目線を採用するか、という問題です。

今回は三峰結華さん、田中摩美々さん、神の視点/客観的視点の三者がカメラを持てる人として採用できる選択肢だと思うのですが、頭の中で構想をぼんやり練っている間は誰が語るものになるのか決め手がありませんでした。最初は安直に三峰結華さんを語り手にしようとしていたんですが、なんかしっくりこなさそうだなー、でも田中摩美々さんを語り手に据える必然性もないんだよなーと悩んで悶々としていました。

幸いなことにキーフレーズを心理戦掛け合いに決めたことでプロットは頭の中でぼんやり決まっていました。カメレオンとヒョウモントカゲモドキのDVDの問いから始まって、DVDを見るために三峰結華さんの部屋に行く。そこでいくつかの差異を目にして、最後に再びホカホカの肉まんと冷めたあんまんの心理戦を仕掛ける。

じゃあ冒頭はセリフを当て込めばいいんだから一旦書き出せるじゃない!と気づいて「あなたが落としたのは、カメレオンのDVD?それともヒョウモントカゲモドキの──?」「っ……。──高度な心理戦じゃーん……」という1フレーズを入力した瞬間に、誰の目線で物語を展開させるかが決まりました。決め手は悪い子、じゃなくてカチッとはまった気がする!しっくり感!でしかなかったんですが……。

あとは走るだけ。……本当に?

テーマが決まり、プロットも立って、視点も決まったことで、あとは勢いのままに書くだけ!途中にシーンとして使うネタもいっぱい洗い出したし、あとは書くだけ!そう思っていた時期が僕にもありました。小説を書き慣れない人間である自分の見積り力、一切信頼してはいけないものだったことを完全に忘れていました。お気づきでしょうか?トイレットペーパーもバスタオルも歯ブラシも何も登場していないことに。

勢いに任せてばーっと書いたのですが、徹頭徹尾理詰めで文章を書けるほど習熟していないので、今書いているこの記事もそうなんですが文章を書くときは基本的に、頭が書いているのか手がかいているのかわからないくらい濁流に押し流されるように書いてしまう、というのが僕の現在の限界なのです。喋るときと同じで、考えてから喋るのではなくて喋りながら考える方が得意、という色々とアレな人間性がそのまま文章を書くプロセスにも投影されてしまうわけです。なので、この記事が特にその傾向が顕著なんですが、かなり冗長ですし、流されるままに書いているので気づけば当初の想定とは違うコースを流れていることもあって、かろうじてプロットをチェックポイントにしているくらいの感じです。

後半戦、ようやく頭を使うらしい

書いていく中で初めて気づくこともたくさんあって、それに刺激されてあっちだ!ってなるフリーダムお散歩のような感じで2200字くらいを書いてみて、ひと段落。ここからが本番です。

冷めたあんまんをどう違和感なく登場させるかみたいな話を始めとして、ちゃんと構成を整え直したり、フィーリングでいいなと思って入れたものの理由づけをしたり、論理的なつながりや受け取ったときの伝わりやすさ、印象をデザインし直したり、頭を使う作業はひとしきり勢いで書き切ってから全体を引いて眺めて取り組むことが多いです。この辺り、絵とはプロセスが全然違うのが面白いです。文章を書く経験が多くないのと勢い学派なのが相まって完成形をスタート時点で全然イメージできていないから起きる現象のような気がします。

2200字くらいで書きたいこと大体書いたなーと思ったとき、この時点で文中に含まれていないトイレットペーパーやらバスタオルやら歯ブラシやらは、これを書き足して膨らませることもできるけれど必然性のない場面だな、これを書きたいのは僕のエゴであってこの作品の中には必要ないな、と思ったのでバッサリカットすることを決めました。これらがなくてもテーマはブレていないだろうと信じていますし、何より僕の趣味は諸星ちゃんいじめです。

これは余談なのですが、2000~3000字以上は勢いが続かない=体力がもたないらしいです。圧倒的修行不足です。今もこの記事を書いていて、ここらへんでそろそろ疲れたから全体のバランス眺めて落とし所考えるかーって思っています。

なんとか完成、震える手で投稿する

読み返したり一晩寝かせたりして文章のバランスを見直す中で、2022年だからpixivカウント基準で2022文字にしたい、という要らない遊び心を発揮して文字数の微調整を重ね、ついに完成。生まれて初めて使う文庫ページメーカーにもチャレンジして、チャレンジ尽くしの濃い体験となりました。

いまだに絵を投稿するときはとーーーっても緊張するんですが、今回は初めてまともに書いた小話を投稿するとあって投稿ボタンを押すときの手はちょっと震えていました。尋常でない緊張を感じていたので、いいねがついて、あっ、読んでくださる方が一人でもいるんだ……!って思ったときに心の底から安堵しました。

文章を書く経験値が圧倒的に足りないのと、文章で表現する行為についての考察が圧倒的に足りないのとで、今回の作品の良し悪しや巧拙は僕の考えられる領分ではないのですが、ひとまず、書きたいことを幾分かはかたちにできた状態で投稿まで漕ぎ着けて文章書いてみようチャレンジを完走した自分を褒めたいです、いぇーい。

作品を読んでくださった皆様、そして自分のために書いた雑文にここまで付き合ってくださった皆様、心より御礼申し上げます。この記事が4,000字ちょっとということで、作品よりも長いのはどうなのよというツッコミどころ満載ではあるのですがご愛嬌ということで。ありがとうございました。

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