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M.R.LABO業務紹介:クリエイティブ・ディレクション‐2

クリエイティブ・ディレクターの仕事とは

 先日の記事では、どちらかと言えばディレクターの心構え的なことを書きましたが、肝心の”どういった仕事をするのか?”については触れていませんでしたので、あらためてこちらでご紹介したいと思います。
 中堅以上の広告代理店には、必ずクリエイティブ・ディレクター(CD)という肩書の人と、その下にアート・ディレクター(AD)という肩書の人がいます。CDとは、担当商品の広告からSP(セールスプロモーション=販促活動のこと)にいたる、あらゆるコミュニケーション・ツールにおける”表現”を統括する役割があり、当然TV-CMやWebサイトなどもその範疇に含みます。
 一方、ADとは、一般的に新聞・雑誌広告やポスター、パンフレットから看板などの、いわゆる”平面”と呼ばれるツールの表現を統括する役割があります。…が、実はこの両者の境目は曖昧で、とくにそう名乗るための決まりごとがあるわけではありません。
 実は私も、自ら「クリエイティブ・ディレクターです」と名乗ったことは一度もなく、たまたまやっている仕事の幅が広がってきたために、「業界的に、どちらかと言えばそうかな…」という程度の認識しかありません。(そして多分、今後もそう名乗ることはないと思います)

最近の気になる傾向について

 CDにしろADにしろディレクターという立場は、クライアントの意向を汲み取りながら、同時にターゲットの意識や動向などを踏まえて、最も効果があると想定した”表現”を打ち出すという、とても重要なポジションにおかれます。
 とはいえ、どのような”表現”にするか、ディレクター一人が考えだすのではなく、平面広告で言えばデザイナーやコピーライターといった人たちと一緒に創り上げることになります。
 ここで少し驚いた事例を紹介します。ある広告代理店の仕事で、企業の求人広告のビジュアルをプレゼンするために、デザイナーの事務所でブレストを行うことになりました。通常、こういったブレストは、それぞれの立場を超えてアイデアを持ち寄り、「あーでもない、こーでもない」とやりながらプレゼン案を決めていくのです(その時、私はコピーライター的な立場で参加し、いくつかのコピーアイデアとともにキービジュアルを持参しました)が、驚いたのはブレストに参加した代理店の営業担当が「こういうの、初めてです」とつぶやいたことです。
 彼は(同社に3年以上勤務する、どちらかと言えば中堅どころの営業マンなのですが)どうやらそれまでこういったブレストに参加したことがなかったようなのです。あとで事情を聴けば、普段、こういった案件は担当のディレクターに任せ、制作部から上がってきたプレゼン案をクライアントに持っていくだけ、という仕事の仕方をしていたようです。
 確かに営業マンというのはクリエイターではありませんので、これらのブレストに参加する必要はないのかもしれませんが、クライアントの意向や担当者の好みなどを一番近くで知ることができるわけですから、アイデアを持たないにしても、こういったブレストには積極的に参加し、ある意味「クライアントの立場を代弁」して発言をしてもらいたいと思うのです。
 また、そうすることでクリエイター側と一緒に考えた成果(デザイン・コンセプトなど)をしっかり理解できるようになり、プレゼンにも自信がつくような気がします。
 色々なところで話を聞くと、どうも最近はこういったブレストを行わないで、クリエイティブ作業が進められる傾向にあるようです(特にWeb系)。 
 コスパやタイパ意識からそういうことになってきているのかもしれませんが、それではキチンとした良いものができるようには思えません。次回の話ともつながってくるのですが、どうも皆さん、決まった”枠(ワク)”の中でしか仕事をしていないように感じるのです。

クライアント情報をしっかり把握するのも仕事

 上記のようなブレストを招集し、成果物としてまとめ上げていくのはディレクターの重要な仕事です。が、もし上記の事例のように、営業マンが参加できない・しない時、または営業マンからの情報が不足していると思った時、クライアントの意向を掴むために動くこともディレクターの仕事です。
 私はよく「クライアントからヒアリングしたいよね」と口にしますが、受注元(代理店や制作会社など)からクリエイティブ・ディレクションの仕事を依頼された時、「情報が不足しているな」と感じた時にいつも発する言葉です。
 クライアント情報を正確に把握するためには、オリエンテーション(クライアントからの説明会)もとても重要です。通常、クリエイティブ・コンペがなされる場合に、日にちや時間を決めて行われることが多いのですが、比較的軽めの制作物のなどの場合は、内容がまとめられたドキュメント(書類)が配布されるだけの場合もあります。
 時には、A4 1枚に半分程度しか書いていないような、非常に簡単なドキュメントを配るだけといった場合がありますが、コンペに参加する側としては、これにはとても不安を感じます。というのも、大抵こういった場合は、クライアントサイドの考えがまとまっていないのが常で、クリエイティブの振れ幅が大きくなり、的確なプランを提示することができなくなるためです。
 そこで、「ヒアリングしたいよね」ということになるのですが、それに応えてくれない、もしくはヒアリングしても何も出てこない場合、コンペから降りるという選択をすることもあります。つまり、こちら側からキチンとした良いものを出すためには、先方もキチンとした情報を用意する必要があるということなのです。
 クリエイティブ・ディレクションの仕事は、このように確かな情報を掴んだ上で、それに応えるためのアイデアを皆で出し合い、まとめるということになります。そして、良い成果物となるように仕上げるためには、一人ではできない仕事でもあります。次回は、そういったスタッフの起用などについても話をしていきたいと思います。

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