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第4節 大分トリニータ戦【レビュー】

久々にレビューというか簡単な感想だけ残しときます。時間がないので前置きはなしで。

①スタメン

長崎は澤田が左サイドハーフで今季初スタメン。また開幕から欠場が続いていた植中もベンチ入り。

対する大分は罰ゲーm…もといルヴァンカップの影響で超過密日程。その上第一節の水戸戦がコロナ順延となったことで水曜にも試合をこなして中3日。その水戸戦からスタメンを6人入れ替えるターンオーバー、長崎戦の方が1.5軍的な立ち位置になりそうだがそれでも十分な戦力を有している。

②試合の推移

互いにリスクを掛けない静かな立ち上がりだったが試合は急に動く。前半8分、何でもないビルドアップからGK笠原がイージーなパスミスでボールがタッチラインを割り、素早くスローインを入れた大分が左サイドを崩してペナルティエリアに侵入、クロスボールに長沢が合わせて幸先良く先制した。クリスティアーノが淡白に抜かれた穴埋めに加藤大、村松と芋づる式に釣り出されて江川の背中を上手く使われた。二見も頑張って絞ったが低い弾道のピンポイントクロスの前ではノーチャンスだった。

前節までの嫌な流れが脳裏をよぎる展開だったが直後に同点弾が生まれる。前半10分、大分2トップと2ボランチの間にぽっかり空いたスペースをカイオセザールがドリブル、相手が中央に寄ったところで右の大外を駆け上がった奥井にパス、ダイレクトで上げたクロスをエジガルジュニオが胸で落としてクリスティアーノが技ありのボレーシュートを叩き込んだ。長崎にとっては値千金となったが、大分は得点直後の失点となり調子の悪さがもろに出てしまう形になった。

その後は大分がボールを握り、長崎が4-4-2で迎え撃つ時間が続く。大分は左サイドから何度かペナルティエリアに侵入するも長崎が最後をやらせない守備で耐え、このまま前半終了かと思った矢先に得たPKをエジガルが決めて逆転。判定自体は誤審と言わざるを得ないが、都倉が頭で逸らしてクリスティアーノに繋いだ場面から作ったチャンスは松田長崎らしい速い攻撃だった。

後半頭から大分はドリブラー増山を投入、沈黙した右サイドのテコ入れを図ったが二見と澤田の守備は勤勉で固く、逆にカウンターの機会を得た長崎はクリスティアーノが得点。さらにセットプレーからポケットを取って奥井のミドルシュートが決まり試合の大勢は決した。過密日程の影響か大分の運動量はガクッと落ち、終盤には何度か決定機を迎えたがGK笠原に阻まれ反撃の狼煙をあげる事は出来なかった。

③澤田崇の真価

結果だけ見れば4-1の快勝となったが、内容は肉薄していた。誤審で得たPKがなければもっと難しい試合になっていたように思う。開幕3戦で長崎が露呈していた問題が全て解決したうえでの勝利ではなく、それ以上に大分が苦しかったという前提を踏まえるべきだろう。去年の大分を見ていないので狙いは分からないが、もしCBのペレイラと羽田に5m持ち上がるドリブルを選択されていたら、後半から奥井・クリスティアーノサイドを崩す修正をされていたら、1失点では済まなかったかもしれない。

ペレイラが5m持ち上がると守りづらい澤田と二見

それでも長崎のサッカーに目を向ければ改善できている部分があり、特に澤田が復帰した左サイドは安定感があった。前述の通り大分の攻め方が良くなかったという部分はあるが、献身的に追う事で野獄・井上に自由を許さずボールの取りどころに出来た、というのは主導権を握るうえで重要な局面だった。

澤田一人で解決できる事がある

澤田といえば足の速さや無尽蔵の体力に注目が集まりがちだが、プレーの連続性という部分に最大の特徴がある。この「プレーの連続性」という点がサッカー選手の評価として語られる事は少ないが「献身的に2度追いする」「何度もポジションを取り直す」「ワンプレーの中で3度裏に抜け出す」というのは誰にでも出来る事ではない。単純な体力勝負であれば実はクリスティアーノも相当なタフガイで試合終盤でも力強くスプリントできる走力を有しているが、プレーの連続性という意味で澤田の右に出る選手はそう多くない。特に松田式のサイドハーフはタスク過多になりがちで、それだけ重要なポジションになる。

ここまで奥田、加藤聖、クリスティアーノがサイドハーフとして試されてきたがやはりプレーの連続性に欠け、サイドに誘導しても奪い切れずにサイドチェンジされる場面が目立った。少なくとも左サイドだけでも固く締める事でチームとしてボールの取り所を作る事ができた。ここが最も大きな進歩だった。

④クリスティアーノの活かし方

一方で右サイド、クリスティアーノと奥井の関係性は一歩前進という内容だった。前述の通りプレーの連続性という意味では難のあるクリスティアーノをサイドハーフに置くのはリスクの伴う選択と言える。開幕から3試合はどちらかと言うとデメリットの方が目立っており、右サイドを崩される場面が目立つ割にクリスティアーノが相手のゴールを脅かすような場面は少なかった。

それが大分戦では突如2得点。相変わらず守備の局面になればデメリットが丸出しになってしまうが、相手を押し込みさえすればクリスティアーノが脅威になるところまではたどり着いた。内容が改善した要因はプレーエリアが中央寄りになった事だと思う。開幕からここまで、クリスティアーノはタッチライン際に張り出してクロスを上げる選択が圧倒的に多く、3試合で実に22本のクロスを放り込んでいた。これは(ちゃんと集計してないけど)おそらくチームで断トツの数字だろう。そのクリスティアーノが大分戦ではなぜ中央寄りでプレーできるようになったのかといえば、1つはSB奥井が大外レーンを担当するという明確な棲み分けが出来たことだろう。これまではSBがボールを持ったら自動的にフォローに寄っていたクリスティアーノがピッチ中央寄りに留まる場面が増えた(それでも大半はタッチラインに寄っていくが)特に同点弾はそのメリットが顕著に出たシーンになった。

クリスティアーノが中央寄りのポジションを取れるようになったもう一つの要因として左サイドの復活も上げる必要があるだろう。開幕から奥田、加藤聖と試された左サイドハーフだがどうにも噛み合わず、攻撃が右サイド一辺倒になってしまった。奥田は一度ボールを触りさえすれば非凡な才能を垣間見せるがいかんせんボールタッチまでが遠く、加藤聖の鋭いクロスは相手チームにバレているのでそう簡単には上げさせてもらえなかった。その中で不動のレギュラー澤田が復帰したことで状況は一変、その脚力は守備だけではなく攻撃でも惜しみなく発揮されて左サイドからもボールを前進できるようになった。

奥井との棲み分け、澤田の復帰によってより相手の脅威になったクリスティアーノ。だが試合終盤にセンターフォワードとして起用された時間が最も効いており「結局一番前で使った方が良いじゃん」という感じだったが、この足りは松田監督も試行錯誤しているのかもしれない。

守備の約束事をある程度の質の選手にそこまで求めることが必要なのか、というところもバランスを見ながらとことん突き詰めて。自分たちの強みというのをしっかりと整備したうえで、勝負かなというところで見直したところが、結果的には勝因になったかもしれない。
松田監督(試合後インタビューより)

今後米田が復帰した時、その序列がどうなるのか気になる部分ではある。

⑤おわりに

開幕からチグハグだった左右の問題がある程度解決したことで大分戦は勝利を手繰り寄せる事が出来た。ターンオーバーした大分はベストメンバーではなかったし、ペレイラのハンドも誤審だったけど、長崎自身に目を向ければ十分に改善と収穫のある試合だった。

開幕からヴェルディ、横浜FC、甲府、大分とかなり厳しいカードになり、1勝1分2敗とスタートダッシュには失敗した。ここからの3試合は熊本、金沢、群馬、ここまでと比べると戦力的には1枚落ちる相手になり、相性も決して悪くない。大槻組長の元、ソリッドなチームを構築している群馬は気になる存在だが、ここで3連勝できれば7試合で勝点13と自動昇格を争うペースまで戻すことができる。2位以内を目指すために大事なのは上位チームに負けないことと、何より下位チームから取りこぼさないことになる。

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