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ポジション争い展望

決起集会も終わり、いよいよ来週からJ2リーグが開幕する。新たに10人の選手が加わりチームの3分の1が入れ替わった長崎、当然ポジション毎の序列もリセットされることになる。

ということで小ネタとして開幕戦の楽しみの一つ、ポジション争いの展望を簡単にまとめておきたい。

■ゴールキーパー

正ゴールキーパーのポジションは在籍7年目の富澤と新加入の笠原が争う形になる。それぞれ分かりやすく強みが違う2選手で、富澤はビルドアップやプレス回避に貢献できる足元の技術、笠原は長身を活かしたハイボール処理やセービング技術にそれぞれ定評がある。

単純にゴールを守るという点にフォーカスすれば笠原に分がありそうだが、ハイプレスを仕掛けてくるチームが多い中でゴールキーパーがパスを繋げるかどうか、というのは戦術を左右する要素になる。昨シーズンの序列が最終的に原田>徳重となった点から、松田監督がゴールキーパーに繋ぎを要求しているのは明らかだろう。

相手によってゴールキーパーを使い分ける監督もいるが、松田監督はスタメンをころころ変えるのを好まない。開幕戦で富澤と笠原、どちらが出場するかというのは大きな注目点になる。

原田、浅沼は機会を伺いながらエリートリーグ・天皇杯への出場を狙っていくことになる。

■センターバック

4バックのセンターバックは一緒くたにされることが多いが、厳密には右と左で適性が異なる。基本的に右センターバックは右利きの櫛引と村松、左センターバックは左利きの江川と二見がそれぞれポジションを争うことになりそうだ。

左センターバックは昨シーズンの序列を引き継ぐなら江川がレギュラー、二見がバックアップになる。ただ二見もシーズン終盤にかけてクローザーとして左サイドバックに入ったり一発退場で信頼を失った新里の代役を(フレイレを押しのけて)務めたり、尻上がりにコンディションを上げていた。江川のスタメンは安泰というわけではなさそうだ。

予想が難しいのは右センターバック。トレーニングマッチの出場選手は(ほぼ)非公開だったため現時点での序列は分からないが、櫛引と村松の間に大きな差はないように思う。両者ともビルドアップに参加できるという点で共通しているが、櫛引は上背、村松は読みの鋭さと身体の強さという特徴をそれぞれ備えている。今シーズンの編成で一つ懸念があるとすれば高さ不足で、特に毎熊が抜けた穴は攻撃面以上に守備面で痛手になる。身長の高さ=空中戦の強さという訳ではないが、4バック全員が170cm台となるとセットプレーやクロスのたびに祈る必要がありそうだ。

■サイドバック

右サイドバックを新加入の高橋と奥井、左サイドバックを米田と加藤聖が争う形になるが、トレーニングマッチの映像を見る限りは奥井の左サイドバックも試しているようだ。

ともに1990年生まれで同い年(学年は1つ違い)の高橋と奥井は身長・体重もほぼ同じだが持ち味は異なる。堅実で守備職人のイメージが強い高橋、労を惜しまず上下動できる奥井、キャラクターがかなり違うためコンビを組むサイドハーフとの相性も重要になる。クリスティアーノが右サイドハーフを務めるのであれば、柏でコンビを組んでいた高橋に一日の長があるかもしれない。

一方で左サイドバック候補となる米田と加藤聖もそれぞれ違った強みを持つ。ポリバレントな米田はサイドであれば前でも後ろでも、右でも左でも遜色なくプレー可能。昨シーズン終盤はサイドハーフ起用が多かった事から、松田監督は一列前で米田を考えたいのかもしれない。加藤聖はセットプレーを含めればチャンスクリエイト数が相当多く、絶滅危惧種となりつつあるクロッサーは長崎の大きな武器になる。ただ絶対的なレギュラーになるには相手のプレスを交わす技術を身に着ける必要がありそうだ。U-22日本代表に選出されるとチームを離脱する機会が増えるが、米田・奥井が控えていれば一先ずは安心だろう。

■ディフェンシブハーフ

松田監督は4-4-2の熱心な信奉者であり、ディフェンシブハーフの定数は基本的に2人となる。このポジションだけは新加入選手が入らなかったためカイオ・セザール、鍬先、加藤大の3人で回していくことになるだろう。

カイオ・セザールは長崎で唯一絶対的な存在で怪我や累積警告がない限りはスタメンに名を連ねることになる。キャンプの様子を見る限りオフシーズンでやや体重が増えているようだが2020シーズンオフよりは絞れており、彼なりのキャプテンとしての意識の表れなのかもしれない。

噛みつくようなボール奪取で中盤の底を掃除する鍬先、無尽蔵のスタミナで広大なエリアをカバーする加藤大、この2人は甲乙つけがたい。昨シーズン終盤はフォワードに怪我人が出た影響もあり加藤大が2トップの一角に入るシステムに移行、鍬先がディフェンシブハーフの定位置を掴んだ形になった。今年も加藤大はセンターフォワード(=可変してインサイドハーフ)を兼任するかもしれないが、最前線に欠員が出ない限りはディフェンシブハーフで数えられそうだ。

手術で長期離脱している秋野は4月頃から練習に参加する見込みで、中盤戦以降は戦力としてカウントされる。長期離脱していたためまずは松田式に適応する必要があるが、高精度のロングパスが活きる場面は必ずある。ユース出身の2人もディフェンシブハーフが本職ではあるが五月田はサイドバック、安部はサイドハーフでそれぞれ出場機会を伺うことになりそう。

■サイドハーフ

左サイドハーフの序列は分かりやすく澤田がレギュラー格、山崎と笠柳がバックアップになる。体格が良いわけではないがハードワークで守備に穴を空けない澤田への信頼は篤く、今年はより得点に絡む活躍が期待される。

澤田が俊足を活かした香車だとすれば山崎と笠柳はカットインもできる角で、よりドリブラーという色が強くなる。ルーキー笠柳はまだまだ線が細く松田監督が求める守備強度を90分実践するのは難しそうだが、キャンプではキレのある動きを見せており、ジョーカー役での起用は十分に考えられそうだ。

トレーニングマッチの映像を確認するとクリスティアーノは右サイドハーフで試されていた。昨シーズンのハイライトを見る限り、パワーはまだまだ健在で右サイドの主軸となりそうだ。

バックアップにはチーム随一のテクニシャン大竹、未だポテンシャルを秘めているイバルボが控えている。ただ大竹、イバルボは笠柳と同じく守備強度の面でスタメン起用が難しく、クリスティアーノの代役には米田、奥田、奥井、安部などが入る可能性もある。

■センターフォワード

センターフォワードも序列が読みづらいポジションになる。上背と身体の強さでボールを収める都倉、ポジショニングの良さと裏抜けの上手さが特徴の植中、J2では屈指のシュート技術を誇るエジガル・ジュニオ、そして水戸から加入した天才肌の奥田…どの組み合わせでもそれぞれの良さが出そうで楽しみな面子が揃った。

松田監督は4-4-2をベースにしながら2トップの一角が落ちる4-1-2-3可変システムもオプションに組み込みたい意向がある。その場合、可変のキーマンとなるのは奥田もしくは加藤大になる。昨シーズン終盤から試しているが完成度はまだ低く、このキャンプでの成果を期待したい部分になる。

どうやらエジガルは昨年終盤の怪我(?)が響いているようでトレーニングマッチでも姿を確認できず、開幕からしばらくは都倉、植中、奥田を中心に回していくことになりそうだ。

■おわりに

2022シーズンスカッド

誰が出場するにしても開幕戦のヴェルディからは勝点3を奪いたいところだ。昨年のアウェイヴェルディ戦では試合を支配される苦しい展開で、山本理仁の退場をきっかけに押し込んだ。結果だけ見れば3-0ではあったが内容は薄氷を踏んでいた。攻撃の局面がしっかりオーガナイズされたチームだけに、今年の長崎の完成度を図るのにこの上ない相手だ。

長く苦しい42試合の旅も一歩一歩進むしかない。今年こそ歓喜の輪でシーズンが終了することを願いたい。

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