第5節 ロアッソ熊本戦

もうこの試合のことを考えたくないから爆速雑レビュー。強いチームが勝ち、弱いチームが負けた、それだけの試合。

①スタメン

コロナ7人陽性、さらには監督も不在という緊急事態に陥った熊本。不幸中の幸いかスタメン級は罹患を免れたようで、前節からほぼ変わらない11人が名前を連ねた。ベンチ入りした15歳の道脇は186cm70kgという逸材、見たかった。

長崎は奥井が怪我なのか高橋が先発。植中もベンチから外れて笠柳が初のメンバー入りとなった。

②試合の流れ

戦前からの予想通り熊本が激しいプレスを敢行、長崎は正面からまともに受けてボール保持もままならない展開。最後尾に控える笠原はセービングやハイボール処理に定評があるが足元はおぼつかず、それを理解している熊本のプレス隊はきっちり笠原まで追い回した。江川、村松にとっては笠原をビルドアップ要因に数える事が出来ず、かといって前線の都倉やエジガルが収めるのも難しく、簡単にボールを手放す展開が続いた。

良くないながらに最期をやらせない守備で前半を0-0で折り返すかと思いきやアディショナルタイムにクリアボールを竹本に拾われてミドルシュートを叩き込まれる。ペナルティエリアの中央は横浜FCや甲府にも失点を許したスペース、わずか5試合で似たような失点を3度許すことになった。

後半、熊本の出足は落ちず大勢としては変わらない。やはり主導権を握られる中で追加点を与える。左サイドで受けた坂本がカットインしてバタバタと長崎ディフェンスを倒してミドルシュート、先制点の教訓を学ぶ暇もなく同じエリアから4度目の失点を献上することになった。

ここでようやくギアを上げた長崎だったがJリーグ初出場となった田代を乗せてしまい万事休す。シュート20本は虚しく空砲となり、しっかり走り負けて0-2で敗戦。運がなかったとか、相手が良かったとか、ゴール期待値は1.55だったとか、それ以前の問題でなすすべなく完敗。同じシチュエーションで10回対戦しても5回は負けそうな内容だった。

③作りたい料理と冷蔵庫に入ってる食材は噛み合っているのか

あまりにチグハグのままに終わった熊本戦、残念ながら特に得るものはなかった。長崎としてはボールを握って、上手にプレスを剥がして、カウンターを打ち込みたいという算段だったようだが、笠原にそのミッションを託すのは少し難しかった。二見は相手のプレスを逆手に取る動きを見せたが、行き止まりのクリスティアーノに預けるだけの高橋は熊本にとって狩場となった。事実、高橋のボールタッチはチーム最多となったが、狙い通りというよりは熊本の誘導が奏功したように見えた。

前節は奥井の活躍で一歩前進したように見えた右サイドだったが、また振り出しに戻った。スプリント力はあるが連続性に欠けるクリスティアーノは常に熊本に狙われ続け、ゴールから遠い場所でボールを持っても相手の脅威になることはなかった。

松田長崎の理想とする姿は2021シーズンに見せてもらった。11人がイワシの群れのように連動して相手に自由を与えず、常にカウンターという剣先を喉元に突きつける。ボールを保持できればポケットを取りに行って守備組織を崩す。いずれにせよ鍵となるのは正しいポジションをとるためのハードワークであり、戦術理解であり、献身性であり、総称してディシプリンと呼んでいる。開幕して5戦、現在地は理想からかけ離れている。

元も子もない話をすれば、今日の長崎は圧倒的に走り負けていた。局面でも勝てず、人件費もシュート数も虚しく霧散していった。敗因を一つにまとめられるほどサッカーという競技は単純ではないが、熊本のプレスを外すには笠原は難しいし、サイドハーフの運動量を求めるにはクリスティアーノは難しい、都倉とエジガルのファーストディフェンスも十分ではない。加藤大は尻ぬぐいに奔走し、組織的な守備は一歩目から順々に綻んでいく。言ってしまえば運動量や走力が全く足りておらず、奥田・植中・笠柳以外の前線は全員30代という編成で理想を体現するのは難しかったと、今のところは言うほかにない。

その綻びに目をつぶって余りある個人能力が発揮されるなら収支があってくるがJ2はもうそんなに簡単なリーグではない。過去に実績のある有名選手を11人集めても、連動して死ぬ気で走る11人には勝てないのが事実だ。少なくとも今日はそんな試合だった。それはかつて長崎が金満クラブを破ってきた2013年、2015年、2017年の姿であり、正直試合終了後に熊本のことを羨望のまなざしで見てしまったのは自分だけではないだろう。

④おわりに

珍しく試合後のフラッシュインタビューで怒気を見せた松田監督。要約するなら「2失点してから必死になるくらいなら最初からやれ」という事だが、本当にそれに尽きる。チームの戦術としても編成としても難しい部分があるのは事実だが、今日はそれ以前の試合だった。

今年は幸いにして昇格プレーオフが開催されるため、シーズン終盤まで楽しめる可能性はあるが、自動昇格を目指すチームとはとても言えないだろう。まずは自分たちの一丁目一番が何なのか立ち返って、残念ながら0から作り直すしかないだろう。

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