見出し画像

【頑張った毎熊】第5節 FC琉球戦【レビュー】

tn = 37 - ( 37 -t) / ( 0.68 - 0.0014 × h + 1 / a ) - 0.29 × t × ( 1 - h / 100 )
これは体感温度を計算するミスナール式という代物で、tが気温、hが湿度、aは(たぶん)風速を表すらしい。

体感温度を決めるのは気温だけじゃなくて湿度や風速も大きく関係する、というのは経験として感じていてもあまり知られていない気がする。ファッションの商売をしている私の経験則からいうと、ショートパンツが売れ始めるのは気温より湿度の方が重要で、人間は思ったより湿度に対して敏感なのだ。

今シーズン初のミッドウィーク(水曜)開催となった琉球戦、キックオフ時点での気温は30℃、湿度は90%に迫る数字だった。試合を通して選手の動きが重かった理由は連戦だったということもあるが、気象要件も大きな負荷となった。「水曜」に「夏の沖縄」で試合というのはそれだけで厳しいが、滝のようなスコール、玉田・高木和の負傷交代、スタメン5人をターンオーバー、難しい条件だらけの試合で何とか勝点1を死守したのは及第点だったように思う。

まず、試合が始まって選手の重さを感じたときに厳しいゲームになるなと。(中略)負傷交代が2枚あるとプランが崩れるなと。それでも、しんどくなった状況で一進一退になったと思いますけど、敵地に乗り込んでひっくり返されずに勝点1をもぎ取ったことに関してはよくやってくれたなと思っています
(手倉森 誠)

スタメン

画像1

長崎は前節からスタメンを5人変更、玉田は今季初出場となった。また大竹もベンチ入りするなど、岡山戦を睨んでターンオーバーを実施した。現状変えが効かない秋野、二見は土曜愛媛戦に続いてスタメン、フル出場となったが角田、亀川、澤田、ルアンを温存できたのは次節に向けて大きなプラスとなった。

一方琉球は前節からスタメンを4人交代、前線の中心選手である阿部拓馬は後半からの切り札として温存された。注目は右サイドバックに入った田中恵太、本来は右サイドハーフを主戦場とする攻撃的な選手で、過去の試合を遡っても右サイドバックでの出場経験はなかった。これはたぶん樋口監督の長崎対策で、前半は田中恵太を活かす戦略を採用することになる。

なぜ長崎のシュートは7本に抑えられたか

画像2

琉球の守備は少し独特だった。フォーメーションが433であれば3ボランチの真ん中(琉球の場合は上里)がDFラインとMFラインの間に降りてアンカー化するのがセオリーだが、琉球の場合はMF5人が横一列に並んでブロックを形成するという、いわば451ブロックで構えていた。(3ボランチの1枚がボールホルダーにプレスして442の形になる瞬間もあった)

この451ブロックがなかなか曲者で、左右のボランチ(風間希と小泉)がハーフスペースの入り口に立っているため、一筋縄ではライン間にボールを送れない。福岡戦、愛媛戦はライン間で澤田・名倉がボールを受けてターンすることで相手を押し込めていたが、単純な縦パスは琉球ブロックの網に引っかけてしまう(特に立ち上がりは無理な縦パスを引っかける場面が目立った)さらに難しいのは琉球ブロックの2列目が5枚並んでいることで左右の揺さぶりに強く、少しスライドして簡単に対応されてしまう。

また、この試合では愛媛戦のように「裏のスペースを突く」という攻撃が非常に少なかった。これは澤田不在という事情や体力温存という意味合いもあったかもしれないが、とにかく「幅」と「深さ」を作れない長崎はこの451ブロックに大いに苦しめられた

実際にピッチに立ってみて、連戦というのもあって90分間、インテンシティーの高いプレーは不可能だと思ったので、前半はまずはしっかりボールを失わないことを意識してプレーしていました。
(徳永 悠平)

それでも試合中に解決策を探り、特に愛媛戦では最終ラインに落ちていた秋野が1列上がってボールを捌きながらダイレクトパス、角度をつけたパスで何度かブロックを突破することができたが、どうしても即興性が強く再現性が低いため、ボールロストも多かった。これがシュート数7本におさえられた大きな要因だったように思う。

もう一つ、フリーマン化した玉田をチームとしてどう活かすのか、という課題も残った。どちらかといえばボールを触りたい派の玉田は、最終ラインまで降りてきてボールを触ったり、琉球ブロックを突破するアイデアを出したりしていたが前半を通して琉球の脅威にはなれず、前半終了時点で負傷交代となった。瞬間的には吉岡や富樫とポジションが被るため、やや渋滞気味になってしまった感がある。

右サイドバック田中恵太という戦術

画像3

スタートダッシュに失敗した琉球だが、小泉佳穂が先発するようになってからは攻撃がスムーズになった。状況認知、ボールを受ける、運ぶ、パスを出す、全てを高水準でこなす小泉は琉球のリンクマンとして攻撃を活性化している。

今節はもう一つ策を講じてきた樋口監督、それが田中恵太の右サイドバック起用だった。琉球はボール保持した時、かなり意識的に左サイドにボールを運び密集を作った。442ブロックでは横幅をカバーしきれないという弱点を突き、琉球は右サイドで孤立させた田中恵太にボールを渡して長崎DFと勝負させることで得点を狙い、ゴールに迫る惜しいクロスもあった。長崎は左右に揺さぶられても頑張ってスライドすることで対応、特に米田が頑張って前半は無失点で切り抜ける事に成功した。

結局前半はセットプレーから毎熊がヘディングでゴール、長崎は1‐0で折り返すことに成功した。

攻撃の起点となった琉球の左サイドと頑張る毎熊

画像4

長崎はハーフタイムに2人交代、負傷した玉田に替えてカイオセザール、名倉に替えて大竹を投入した。ツートップの一角にカイオセザールが入ったことで長崎の守備陣形は442ブロックから4411に変更、カイオが上里をケアする形になった。442ブロックを継続しなかった理由は分からないが、富樫1人で琉球2CBを見る形になり、琉球は余裕をもって攻撃の形を作れるようになった

前半とは一転して左サイドを中心に長崎を攻める琉球、特にボール保持時に高い位置取りを始めた左サイドバックの沼田が攻撃の起点となる。茂木、風間希と数的優位を保ちながら長崎の右サイドバック毎熊を集中砲火、途中交代した阿部拓馬も左右に流れながら常に長崎の脅威になった。

後半69分に高木和が負傷交代、飲水タイムも重なり試合が途切れるエアポケットのような状況から失点。その後も体力的な問題からか押し返せない時間が続いたが、なんとか最後はやらせない守備で逆転は防いだ。

飲水タイムだけなら良かったんですけど、そこにGKの交代も絡んで、それでちょっとエアポケットのようなことが起きてしまった。しっかりやり直そうとしたときに意欲がちょっと仇になってしまった。
(手倉森 誠)

滝のような大雨、連戦、高温多湿のコンディションも影響し、終盤は互いにオープンな展開になる。長崎は最終兵器イバルボを投入するなど追加点を狙ったが、李栄直のほぼマンマークのような形で沈黙、そのまま試合はタイムアップとなった。ヨンジすげーよヨンジ…

次節に向けて

なんとか勝点1を拾えた、その功労者は毎熊だったと思う。前半に得点したことより、後半にあれだけ晒されながら右サイドが決壊しなかったのは毎熊の1対1の強さと走力に支えられていた。本当に今年からコンバートされたとは思えないような堂々としたプレーぶりで、得点したこと以上に守備での貢献が大きかった。

8月以降はさらに厳しい連戦が始まり、負傷者、カードトラブルなど人のやりくりも難しくなっていく。選手が入れ替わってもチームとしてのクオリティを担保する術を確立する必要があるのは言うまでもない。今節主力を4人温存させたのは鬼門のAWAY岡山に勝ちに行くためのはずで、次節の内容に期待したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?