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V・ファーレン長崎 2020シーズンプレビュー

今週末からJ2再開するし、シーズンプレビューを殴り書きしときます。ま、4ヶ月前に開幕してるんで今更なんですけどね。

めっちゃ簡単に言うと

①手倉森流自主性サッカーは継続
②(J2では)お金持ちの部類だから、買ってきた武器をちゃんと使いたい
③ボール保持、プレス、カウンターのクオリティは要改善
④去年は失敗しちゃったけど一体感の醸造が大切
⑤超々過密日程は長崎にとって有利に働く可能性あり

こんな感じの内容です。

手倉森流Japan’s Way?自主性サッカー

降格の憂き目にあったチームが翌年に掲げる目標はだいたい「1年での復帰」になる。クラブとして初めてカテゴリ降格を経験した長崎もご多分にもれず「1年でのJ1復帰」を至上命題にスタートした。その使命を引き受けたのは手倉森誠新監督、リオオリンピック代表監督やロシアW杯代表コーチなど実績十分の指揮官に委ねられた。

手倉森監督は「柔軟性」と「割り切り」というキーワードでチームビルディングを始めた。高木監督が徹底したスカウティングと対策の落とし込み、ハードワークで勝点を重ねたのとは対照的に、手倉森監督は大枠の戦略以外は選手の判断に委ねるというスタイルを取った。相手を見ながら自分たちのサッカーを変えていく、ポゼッションもカウンターもプレスもリトリートも局面で使い分ける、得点できないなら失点しないようゴール前を固める。

高木監督のように「俺の言う通りにやれば勝てる」という専制的指導と、手倉森監督のように「お前らが自主的に判断しろ」という委任的指導。実は日本サッカー協会が日本らしいサッカーとして定義しているのは後者の委任的指導で、A代表で苦しむ森保監督もこのJapan’s Wayに則って指揮しているとか…最近までA代表に近い部分で仕事をしていた手倉森監督が、この哲学をそのまま長崎に持ってきてても不思議ではない。

ただ残念な事にJ2で比較的結果が出やすいのは前者の専制的指導で、高木監督以外にも去年水戸で大躍進した長谷川監督もこの部類に入る(たぶん)そもそも貧乏クラブが圧倒的に多いJ2では冷静な判断力、正確に実行できるテクニックを持った選手の方が貴重で、選択肢の幅を広げる委任的指導よりも選択肢(判断)の幅を狭める専制的指導の方がハマりやすいと思われる。

19シーズンの長崎はチームとしての一体感に欠き、判断が遅く、攻撃にも守備にもアグレッシブさを感じられない試合が続いた。極度の玉田依存も委任サッカーが故に外せなかった事情があったように思う。

-昨季を踏まえて、どういう戦い方をするか。
 一つのスタイルを確立する前に、柔軟性とかいろいろなものを打ち出しすぎた。求めてはいけないものを求めていた。今年は高い要求に応えられるメンバーがそろった。やりたいのは迷わないサッカー。日本人に合った形の全員攻撃、全員守備、連動性を出す。攻守に仕掛けの姿勢を出さないといけない。

19シーズンを振り返って、手倉森監督は「何でもできるチームを標榜するには時期尚早だった」と認めている。あくまで理想は変えずに「自主判断」「柔軟性」「割り切り」をキーワードに、コーチや選手を補強した事でチームとしての戦力を上げた形になった。

金棒は正しく使わないと意味がない

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ジャパネットの支援や営業努力の甲斐あって、チームの人件費は初めて10億円の大台を突破した。これは2019年のJ2クラブで比較すると上から4番めの規模になる。一昔前の長崎といばフレッシュな大卒選手や伸び悩む中堅選手を大きく伸ばし、そして金持ちクラブに買われていくというのがお決まりパターンだったが、もはや長崎が貧乏クラブだったのは過去の話になった。今オフは呉屋・香川がクラブを離れたが、それ以外の主力は慰留に成功している。

さらに超J2級といわれるルアン、イバルボという強力な“金棒”も手にした。鬼が金棒を持っていても関節技やローキックで攻めていては意味がなく、ちゃんと金棒でぶん殴るからこそ意味がある。去年の柏がオルンガ、クリスティアーノという暴力を正しく使ったように、長崎も武器を正しく使うことを覚える必要がある。限られた食材で出来るだけ旨い料理を作る達人だった高木監督ではなく、質の高い選手でより高級料理を作るのに慣れた手倉森監督にバトンが渡されたのはこの辺が理由だった気がする。(高級食材を料理する高木監督も見てみたかったといえばその通りだけど…それは大宮方面を見て悶々としましょう)

今年長崎が改善するべき2つの事

去年の手倉森長崎はなぜ昇格に失敗したのか?言ってしまえば得点が少なく失点が多かったからだけど、それは何が悪かったからなのか?昇格した17シーズンのスタッツと比べるとヒントが見えて来る。

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まず攻撃面においてはボール保持率や30mライン進入回数が激増しているにも関わらずペナルティエリア進入回数は微減している。これはある程度ボールを持ったけど、ただボールを持っているだけで相手の脅威になっていない、もっと言えば相手の守備を破るためのボールの持ち方を出来ていないという事になる。また、相手からボールを奪っても判断が遅くカウンターにできない場面も多かった。17年の高木長崎はボール保持を諦めていたからこそ判断の必要がなく、常にカウンターを狙っていたので鋭さが全然違った。

守備面においてはKAGI(守備の際相手を自陣に近づけなかったか指数)が大幅に悪化している。思い返せば去年の長崎はボールを失った瞬間の反応が一歩遅く、プレスに連動もなく、ズルズル自陣に引きこもってしまうという場面を何十回も見てきた。どうしても高木長崎と比べてしまうが、プレスの出足は比べるまでもなく鈍かった。これは手倉森監督の「得点できないなら失点するな」という哲学を反映している部分もあるが、あまりに簡単に自陣に撤退してしまうため相手は簡単にボールを運び、シュートも簡単に打てる。これは集計してないけど、シュート数で圧倒された試合はかなり多かった。

今年の長崎に改善を期待したいのはざっくり言えば
 ①相手を崩すためのボール保持
 ②プレス→カウンターの鋭さ

の2点になる。

ルヴァン杯、天皇杯を勝ち上がったBチーム(という言い方をあえてする)の何が良かったかと言えば、プレスとカウンターの鋭さだったよなと思う…

ある意味一番の問題点“一体感の醸造”

もう一つ、キーワードになるのは一体感。

19シーズンはJ2、ルヴァン杯、天皇杯で計55試合に出場するという未曾有のスケジュールだった。必然的にリーグ戦中心のAチームとカップ戦中心のBチームに分かれた。過密日程、新監督就任という要因も重なり一体感の醸造は難しくなった、というか失敗していった。長崎を初の天皇杯準決勝まで進めてくれた功労者・長谷川悠の退団後の恨み節?を見るに、思ったよりチーム内はギクシャクしていたのかもしれない。

今年はコロナの影響で超過密日程、トップチームに登録されている選手(もしかすると二種登録の選手含めて)全員の貢献が必要になる。自然と去年より一体感を高めやすい環境にはなるはずだが、チームキャプテンの秋野に係る期待は大きくなる。まずはチームが一枚岩になることが、自主性サッカー成功の鍵になるかもしれない。

超過密日程は長崎にとって有利か?

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新型コロナウィルスの影響で超々過密日程となった20シーズンのJ2。8月以降は5連戦を6回やるという無茶ぶり。さらに台風などで延期になれば…恐ろしい事になる。日程的に厳しい所もありA徳島→H群馬→A山形→H千葉→A水戸の移動距離はヤバいし、A磐田→A北九州→A愛媛→A大宮に至ってはイジメかな?というレベルの連戦になる。

この超々過密日程を乗り切るためのキーワードは選手層と省エネの2つになる。
選手層という意味で、長崎はまだ恵まれていると言える。去年の主力がほぼ残り、その上即戦力を補強できた事で丸2チーム分の戦力を保有している。ただCBやWBの駒が不足しているのと、10月に開催されるU19アジア杯のため加藤・植中が抜ける可能性がある(よりによって地獄のアウェイ4連戦と被る)という懸念点もある。

省エネという意味でも自主性サッカーが定着すれば有利になる可能性がある。高木長崎のようなハードワークを全面に押し出すサッカーだとどうしても夏場に失速する傾向があり、この超々過密日程では選手の消耗も大きい。その点速攻と遅行、プレスとリトリートを上手く使い分けることが出来れば消耗は抑えられる事ができる。
18年の夏場に過密日程だった川崎をトラスタに迎えた試合、川崎の選手の方が明かにヘロヘロだったが上手く試合をコントロールされ、比較的フレッシュだった長崎はなす術なく敗れた…ということがあった。あの時の川崎のように、大人の振る舞いができるチームはかなり有利になる。

また、日程的な特徴として最後の13試合中10試合がホーム開催になるという巡り合わせがある。その代わり中盤戦はアウェイが続く厳しい日程だが、最後まで巻き返せる可能性があるといえる。地獄のアウェイ4連戦を乗り越えた段階で6位以内に入っていれば、自動昇格の可能性は残せるかもしれない。

もう一つ、過密日程には「チームが上手くいかなくても修正する時間がない」という罠がある。去年の長崎もまさにこの罠にハマってしまった。連戦が続く上に昇格プレーオフが開催されないため2位以内に入る必要がある、ということはスタートダッシュが例年以上に重要になるといえる。その点、新監督のチームは博打的要素があり、監督が続投したチームは比較的有利…といえるかもしれない。

さいごに

今年は降格がないから、よもやシーズン途中に監督解任なんて事にはならないと思うけど、昇格争いに全く絡めないとなるとシーズン後の去就は…安泰とは言えないかも。手倉森監督にとってはマネジメントが難しいけど、結果を示す必要のあるシーズンにもなってくる。

最終的に昇格争いに絡んで、来年開催予定の東京オリンピック代表に氣田が選出されてるくらいの夢を見ながら再開を待ちましょう。サッカーには夢がある!


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