見出し画像

海外の僻地にある日本企業

あれはまだ高校一年生のこと。
僕はアメリカの田舎にいた。

飛行機を何度か乗り換えて、やっと空港につき、そこから目的地に向かうバスの中で、

「これはやばいな」

と感じていた。

なんで、こんなところに来てしまったのか?
バカだったな。

完全なるアウェー感と、「ここでなにかあったら、終わりだな」という孤独感。
そして、遠くに来すぎてしまい、いまさら帰ることはできない・・・という後戻りできない感。

そんな思いとともに、バスの外の景色をぼんやり見ていたら、突然、目に飛び込んできたのが、日産のロゴだった。

「えっ、こんなところに、日本の企業があるの?」

と思った僕は、

「ああ、何かあったら、ここに飛び込めばいい」

とひどく安心した。

もちろん、そこにいるのは日本人ではないだろう。

でも、高校生の僕にはそんなことは分からなかった。
もちろん、全員日本人ではないだろうけど、おそらく、1人か2人はいるだろうと思っていたから、とりあえず、最悪のケースの対応策は見つけたと思った。

しかし、バスはその場を通り過ぎ、なおも行く。

「ああ、これで日産は頼れない」

と思った瞬間、トヨタの看板が目に飛び込んできた。

「よし、これでこのエリアも大丈夫だ」

・・・

そうして、目的地についたのだけど、途中の日本企業のロゴは、とても勇気づけられるもので、何十年も経った今でも、最初の日産のロゴがあったときの情景は目に焼き付いている。

それからも、カンボジアに行ったり、ギリシャの奥地や離島に行ったり、ドイツの田舎に行ったり・・・と、ツアーではなく、自由旅行で遠く離れた地に、つまり、

「ポイント・オブ・ノーリターン」

を超えた時には、「ああ、やばいな」と感じ、そこに日本企業や日本のモノがあると、「おおー!」と勇気づけられてきた。

そして、日本人は世界中のどこにでもいる。
「さすがにここには・・・」と思ったら、いたりする。
とても心強い。

もしかしたら、今、日本の経済力が落ちてきて、そういったことも減ってきてしまっているのかもしれない。

でも、僕の企業が海外進出した時なんかは、

「ああ、ここにも昔の僕のような青年がいるかもしれないな」

なんて思ったりする。

まあ、残念ながら、僕の会社が出たって、「日本企業だ」と気づかれないかもしれないけれど・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?